埼玉上空のUFO出現で御近所迷惑なので、マッハで日本の裏側へ移動
なんか、遥子さんに電話して、話してみて、かなり疲れてしまった、と言うよりもやる気が一気になくなってしまった。
で、考えたのは、と言うか気付いたのは、この恐るべきテクノロジー、恐ろしく無音で、空中に停まっている物を作れるのだから、一気に、複数の人に、例えば妹と弟と親父と、弟の嫁の義理のお父さんだったり、いわゆる、みんなにパソコンの一斉メールみたいなことも簡単にできるだろうと気付いて、このナイスアイディアをオーランド系に話した。
「はい、出来ますよ」
ソファーに座って深刻にキャメロン系と見詰め合っていた顔が急に明るくなってきた。
「じゃあ、ここの窓側の固定電話から〝みんなに〟みたいに言えば私の知っている人の携帯とか固定電話に繋がるの?」
私はそう言って、また固定電話のところに行こうとすると。
「いや、固定電話よりも、ソファーの前のテーブルにあるマイクからお話になれば、どこにでも繋がります。いっそのこと全世界のTVを通じて工藤さんのお役目を説明してもいいんじゃないですか?」
と、オーランド系はいきなり飛躍的なことを言ってのけた。
これにキャメロン系もそれが良いわ、とか言って見る見るUFO型マンションの内装が移り変わり、TV局のスタジオみたいに何十台と言う大きなモニターが現れたり、業務用のカメラが現れて私のほうを向いて幾つかのモニターに私の姿が映りだされた。
まあ、この状態を一言で言ってしまえば魔法だ。
魔法の国に堕ちてきた工藤潤ちゃんだ。
突然、なんか頭がくらくらして、何となく貧血のような失神5秒前のような気分で、殆どテレビ局、と言うかまるで徹子の部屋のように完成されたソファーに雪崩れ込むように座った。
「大丈夫ですか?工藤さん、かなり目まぐるしい状態に突入しましたので疲れが一気に出ていると思います」
と、冷静に静かな声のトーンでオーランド系が言い、キャメロン系はどこから持ってきたのか500mlのジャスミンティーを私のテーブルの前にそっと置いた。
私は有難うと二人に言いながらキャップを空けてゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。
やっぱり流石に喉がカラカラになっていたのだ。私もどこにでもいる一般市民なのだから、こんな状態になればションベンをちびっても普通ならおかしくないのだ。
ヘリコプターの音がもっと煩く感じ始め、さっきまで地上とこのUFOと平行に飛んでいるヘリコプターを眺めていた窓だと思うアルミサッシ型の窓にヘリコプターからのライトがぎらぎらと入ってきた。
まるで光と音の暴力だ。
「あの~、窓を閉めてくれないかな、音が煩いんで、出来ればカーテンとかブラインドとか付いてたっけ」
私がそう言って窓のほうを見ると、窓は一瞬で塞がってしまった。
と言うか今までそこにあったはずの窓が消えていた。
そして、当然のごとく、今までのヘリコプターの爆音やら地上でのパトカーや救急車、なのか消防車のサイレンの音も一切聞こえてこなかった。
「え~、音が全然しないんですけど、どうしたの?瞬間移動でもした?まさか、周りの報道やら自衛隊とか警察、つ、つまり一斉に攻撃したとか?」
私は最悪のことを考えてしまい、また喉がカラカラになったのでジャスミンティーの残りを一気に飲んだ。
「心配しないでください。我々は工藤さんの命令が無い限り、この人類とやらを一気に消滅などしませんよ」
オーランド系とキャメロン系はちょっと微笑んで私を見た。
「じゃあ、まだ、自宅の上に停止した状態なんだ!」
「移動したほうが宜しいでしょうか?」
キャメロン系が腕を組み直して私の指示を待っていた。
「そ、そうですね、ご近所迷惑ですから、ここから離れましょう。なんか透明とかなるとか出来る?」
と冗談で言ってみたが、工藤さんが乗っているので難しいと真剣に言われた。
「よろしければ一先ず雲の中に隠れるとか、どうですか?」
二人はハモってそう言った。
「いいけど、このUFOみたいなのってレーダーとかにキャッチされたりするの?」
と、私は日頃の石橋を叩いて渡る性格を発揮しだした。
「ご心配には及びませんよ、見た目は金属ですが色々な膜が層をなしていますから大丈夫です」
そう言ったかと思うとほんのちょっとだけ横に引っ張られた感じで、身体の体制を整えようとしたらそこは日本の裏側であった。
私は今、日本の裏側のマンション型UFOの中にいる。
先ほど、外が見たいから窓を作ってくれないか、とオーランド系に頼むと開いてますよ、と言われた。
なんでもこのUFOは私の意志でも色々なことが出来るみたいなのだ。
しかし、移動したり、変な殺人光線とか兵器を扱うことは出来ないらしかった。
日本の真裏だから、多分、アルゼンチンか南米?か、分からないが、しかし、日本のTVも全てのチャンネルが映ったし、それだけではなく、世界のTV番組も映り、なんと全て日本語(翻訳機能付き?)で放送された。
世界各地でもかなり日本の埼玉県に突如として現れたUFOの映像に驚愕していた。
しかし、いくつかの番組はやらせ疑惑だったり、映画の宣伝では?とのジョークじゃないか?みたいな扱いの番組まであった。
マンション型UFOの中はTVドラマとかに出そうなスタジオ状態になったままで、何十台というTVモニターと大型モニターにネット情報とか映されていたり、ここは作戦司令室か~と松本人志みたいに絶叫したくなった。
一瞬で地球半径分、約20000キロメートル移動してきた。ほんと、とんでもないテクノロジーだ。
「これから、ほんと、どうしようか?」
私はソファーに深く腰を落としながら、前のローテーブル上にあるジャスミンティーを眺めて力なくそう言った。