芸人(♂)★★「サンチョパンサー」三平豹子の場合
老舗のメイド喫茶マイドにて
メイド達「お帰りなさいませ、ご主人様!」
神人「よ、予約しておいた神人です」
神人はかなり緊張して言った。
メイドA「三平さん、御予約のお客様ですよ」
メイドAは小声で三平に伝えた。
三平「はーい、お帰りなさいませ、ご主人様!」
店の奥から三平がお冷とメニューを持って出てきた。
三平「ご注文をどうぞ、ご主人様!」
三平は満面の笑みでテーブルにお冷とメニューを置いた。
神人「三平さん、実は僕あんまり持ち合わせがなくて」
俯いてばつが悪そうに小声で答えた。
神人君のお財布事情からすると、秋葉原の電車賃だけで精一杯かもね。
頼めてコーヒーを一杯ってとこか。
三平は自分が日曜のバイト先に呼びつけたこともあり少し気がとがめた。
自身もお腹が減ると悲しくなってしまうタイプな事もあって、この若者を
満腹で帰したくなった。
「神人君は学生さんだもんね、お姉さんに任せなさい!」
三平が胸を叩いた弾みに爆乳が上下に揺れた。
三平「あんまり緊張しないでね」
「お腹減ってるんでしょ、腹持ちがいい物用意するわ」
三平からみると神人は中性的な美形タイプなんだが、ちょっと線が細いのが
いただけない。
檜田のようにがっしりした体系が好みだ。
神人「ええっ、でも悪いですよ」
神人は戸惑いの色が隠せなかった。
三平「お姉さんにまかせなさーい!」
そう言い残すと三平はウインクして、スカートをひらめかすと厨房に消えていった。
メイドA「あのお客さん、三平さんの彼氏さんですか?ちょっと若目ですけど」
三平は厨房でメイドAに小声で聞かれた。
三平「そう見える?」
三平は悪戯な目をしてその問いに答えた。
メイドA「中性的な所がいいですね、隣にガチムチな中年のおじ様を添えたい所ですよ」
メイドAは悪乗りしてそう答えた。
三平はスマホを取り出すと、先日のオフ会での檜田と神人のツーショット画像をメイドAに見せた。
記念写真と言ってわざわざ二人に肩を組んでもらった画像である。
メイドA「うほっ、これはこれでありなカップリングですよ。三平さん!」
「でも線が細すぎて、おじ様の攻めを受けきれない・・」
メイドAはよからぬ妄想に胸を膨らませて答えた。
三平「実はあの子を満腹にして帰したいのよ」
メイドA「そういう事なら協力します。有望な人材ですもん」
メイドAはノリノリで答えた。
厨房のコックから二人分のまかないの料理とオーダミスの料理を神人のテーブルに料理を並べ始めた。
神人「えっ、こんなに」
沢山の料理を前にして神人のお腹は大きく鳴った。
神人君やっぱりお腹減ってたんだ。
お店のお客様全てに聞こえたかな。
他の客「おいおい、どんだけ腹ペコなんだよ。そいつになんか奢らせてくれ」
他の客も囃し立てた。
神人は真っ赤になってさらに俯いた。
三平「さあ召し上がれ、それとも私にあーんってして欲しいのかな?」
神人「一人で食べられますから」
神人は空腹の為もあって、あっという間に沢山の料理を平らげた。
三平「神人君、満腹になったかな?」
神人「く、苦しいです」
三平の問いかけにこう答えるしかなかった。
神人のお腹がぽっこり膨れていた。
神人君は満腹になったみたいだね。
神人「そうだこれ」
カバンから使い魔のモノを取り出してテーブルに置いた。
三平「確かにお預かりしました。ご主人様」
三平はテーブルの上の使い魔を摘み上げると、ブラウスの胸元の牛形の小窓から顔を出している
谷間に押し込んだ。
それを見た神人はますます顔を真っ赤にして俯いた。
満腹にもなり、使い魔を三平に渡した神人はレジで会計をすまそうとした。
三平「コーヒー700円になります。ご主人様!」
神人「このレシート間違ってますよ、あんなに食べたのに・・・」
神人は戸惑って三平に尋ねた。
三平「御代は檜田さんか赤坂さんに回しとくから、大丈夫」
そう言うと三平は神人にはコーヒー代だけを請求した。
メイド喫茶のヘルプは眼鏡店長公認のバイトだ。
元々、自分はメイド喫茶でアルバイトしていた。
実は自分の本質はおっさん体質で自分がいいと思う仕草や喋り方が客に受けた。
20歳になったらメイド喫茶のバイトを辞めるつもりだったのだが、常連だったチェーン系眼鏡店の店長にスカウトされ。
本業は眼鏡屋で働き、繁忙期やシフトが埋まらない時にメイド喫茶のヘルプに出るといった按配だ。
まあ、眼鏡店長はセクハラ目的だなと、きっと盗聴とか盗撮とかしているに違いない。
月曜日:
本業の眼鏡店に使い魔のモノをつれて出勤。
店長は気づかない。
神人君に聞いていた通りだ。
火曜日:
接客の際にも使い魔のモノを同席させたが、お客様は気づかない。
選ばれた者にしか見えないのは本当らしい。
水曜日:
仕事から帰って部屋着に着替えベットの上でほっと一息した。
三平「そろそろお喋りしてくれるかな?」
使い魔のモノを突きながら言った。
モノ「はい!私、使い魔のモノです」
そう言うとおじぎをした。
モノ「ああああ様から聞いていると思いますが、私たちの世界では、現在魔王と人間軍との戦いが続いています」
三平「はい、STOP!」
モノの言葉を三平は遮った。
三平「神人君から事情は聞いて心得てるよ」
と言って。
神人から聞いた事情を反復した。
三平「間違いない?」
三平はモノに尋ねた。
モノ「間違いありません」
「ではご協力願えるということで」
三平「協力するかどうかは報酬次第ね」
モノ「は~、サンチョさんらしいですね」
モノは深いため息を漏らして言った。
三平「あはは、真世界での私はどんなキャラなの?」
モノ「今のお姿は正直違和感があります。真世界ではこう言ってはなんですが強欲でスケベなおっさんです」
三平「そっか、そっちの方が私の本質にあってる気がするわ」
三平はそういうと咳払いをした。
三平「ご褒美は何がもらえるんダスかね?」
三平はサンチョのキャラ喋りになり、揉み手をしながらモノに聞いた。
モノ「報酬ですか?」
モノは呆れ顔で答えた。
三平「一生遊んで暮らせるお金とか宝石とか土地とかダスか?」
三平はすっかり欲に眩んだ目をしていた。
モノ「それはもう思いのままに」
三平「うひょー」
三平はテンションが上がり歓喜の叫びをあげた。
モノ「ではご協力願えるということで」
三平「それは誰から貰えるんダスか?」
モノの言葉を遮り三平は尋ねた。
モノ「はい、王様です」
「この世界の王様からご褒美が貰えるはずです」
王様?王様なんて何処にいるんだろう?一抹の不安がよぎった。
三平「へ~、じゃあ王様に会ってみたいダスな~」
モノ「判りました。この世界での王様を探してみます」
モノは目を閉じると集中し気配を探った。
モノ「近くにいます」
一時間後にモノは三平に報告した。
三平「明日休みだから会いに行ってみるダスか」
木曜日:
次の日モノと一緒に近くの公園に行った。
モノ「この方です」
子供「世が、王様じゃ」
近所のガキじゃん。
近所でも評判の自分の事を王様だと思い込んでいる頭のいかれたガキのタカシだった。
三平「ん、でも僕このぬいぐるみ?が見えるの?」
タカシ「うん、見えるよ。他の子には見えないみたいだね」
周りを見回してタカシは言った。
この子も選ばれし者ということか。
真世界では王様というのもなんとなく信じられたが、珍世界ではただの子供に違いない。
三平「所で、坊やじゃなかった、王様はお金持ちだっけ?」
三平は一分の希望をかけて子供に質問した。
タカシ「真世界では魔王と事を構えるまでは膨大な所領とそこに住む大勢の領民と暮らしておった」
子供とは思えないしっかりとしたコンセプトの回答だ。
三平「真世界の話はいいから。珍世界では?何処に住んでるのかな?」
タカシ「そこの団地に住んでるよ」
この答えに三平は大いに落胆した。
もらえたとして、子供の宝物だろう。
ビー玉、カード、蝉の抜け殻、トカゲの尻尾の類でたかが知れてる。
三平「はー、お話にならないわ」
そういい残すと三平はモノを残してワンルームマンションに一人で帰った。
部屋に帰ってベットに倒れこんでいるとチャイムがなった。
インタフォンモニタにはタカシがモノを抱きかかえている映像が映っていた。
タカシ「忘れ物じゃ」
子供らしからぬ口調で言った。
三平「えっと、ありがとう」
戸惑いながらも三平はモノを受け取った。
タカシは三平を見つめていた。
三平「何か、まだ用があるの?」
タカシ「おねーちゃん、肩こってるの?うちのおばーちゃんと同じ事してるから」
三平が無意識に肩と腰を押さえていた三平を見てタカシは心配そうに言った。
三平「ひどいなー、おねえちゃん肩こるほど年取ってないよー」
実は三平は大きな胸のせいで、万年肩こりのひどい腰痛持ちだった。
タカシ「肩トントンってしてあげるとおばーちゃん喜ぶよ」
タカシは無邪気に言った。
三平「ああ、大丈夫だから、間に合ってるからね」
三平はタカシに言い聞かせた。
タカシ「じゃーね、おねーちゃんバイバイ」
手を振りながらタカシは元気に走り去った。
三平「やさしい子だね」
「あたしあんたと話せるようになるまで三日かかったよね」
「あの子とはすぐ話せるようになったの?」
モノ「はい、子供なだけに感受性が豊かなのが関係するのでしょうか?」
三平「あの子あんな調子じゃ、学校で弄られまくりだろうね」
「だって王様だよ」
三平は鼻で笑いながら呆れ顔で言った。
モノ「はい、王様の影響が大きく現れています・・・」
三平「あんたのせいじゃないのは判ってる。判ってるんだけど」
三平は爪を噛みながら言った。
「あたしさー、小学生高学年から胸が大きくなってさー、ついたあだ名がおっぱいお化けよ」
「さんざん、いじられたわー、性格が捻じ曲がって、おっさんになるぐらいね」
三平は虚ろな目で遠くを眺めた。
自分も愛村さんみたいにスタイルよく生まれてくればよかったのに。
愛村さん股下何センチだろ?、世の中不公平すぎるだろ。
そして三平は部屋の中を見回し始めた。
モノ「眼鏡ですか?」
モノは三平に眼鏡を渡した。
三平「ありがと、モノ」
「子供の頃ね、眼鏡かけてる人って頭よさそに見えたの」
「で、眼鏡をかけてみた、でも何も変わらない」
「実はこれ伊達眼鏡よ、ま、仕事柄眼鏡屋なんで眼鏡かけてないとカッコつかないじゃん」
「あれ、あたし何言ってんだろう」
三平は感情が高ぶり涙が流している自分に困惑していた。
三平「魔王を倒せばさー、あんたもいなくなり、あの子も普通の子供に戻れるんだよね」
三平の声は少し震え怒気をはらんでいた。
モノ「た、たぶん」
モノは三平の怒気に少しおびえて答えた。
三平「きめた、私あんたに協力するわ」
モノ「ほんとうですか?」
三平「もちろんただ働きする気はないわ」
「あの子の宝物が報酬よ!契約成立、いいわね」




