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オフ会

オフ会にて


俺は待ち合わせの時間前に秋葉原に着いた。

檜田正和「待ち合わせの13時まで後1時間か」

三平の都合に合わせて13時からスタートとなった。

俺は秋葉原の本屋で時間つぶすことにした。

神人聖清「こんにちは、ジニーさん」

中世的な青年が声をかけてきた。

檜田「ああ、君か」

読みかけの本を戸棚に戻しながら俺は答えた。

神人「ちょっと早く着いてしまって」

そういうとファンタジーコーナーの本棚を見回した。

檜田「自分もだ、えっとハンドル名で呼ぶのは気が早くないか」

俺は苦笑しながら答えた。

神人「そうですね、街中ですしね、檜田さん」

神人は頭を掻きながら悪びれずに答えた。

こいつは見た目とは大違いで結構抜けている感がある。

神人「あれ、寝不足ですか?」

檜田の目の下のクマに気がつき尋ねた。

檜田「ああ」

俺は何かを期待して神人を見つめていた。

神人「なにか?」

檜田「いやいいんだ」

失望とも取れる溜め息交じりに俺はそう答えた。


神人「ファンタジー・サーガ、人気ありますね」

本屋のファンタジーコーナの一角を占めていた。

これ見よがしなPOPも沢山立っていて店側も押している感じだ。

檜田「ああ、書籍、ゲーム、アニメとメディアミックスで展開中だからな」

かく言う自分もファンタジー・サーガ・オンラインをβ判からプレイしている一人だからな。

神人「あれ、これは?」

一冊の本を手にとって神人が小さく呟いた。

檜田「どうした?神人君」

神人「サクセス・デビル??文体は龍神さんを意識してるのかな?」

檜田「それは原作者が同じなんだよ」

神人「えっ、でも作者名が違いますよ」

神人は不思議そうな目で俺を見つめた。

檜田「ペンネームを変えてるんだよ。大人の事情って奴だ」

神人「ペンネーム破魔王って、厨二病全開じゃないですか」

手に取った本の著者名を見返して神人はそう答えた。

檜田「デビュー作のサクセスデビル(小明書房刊)がコアなファンを掴んだんだが、今の出版社(飛山文庫)に引き抜かれて、

 世界観をそのまま引き継いで王道の英雄譚で書いたのが大ヒット、それでオンラインゲーム化されたという訳さ」

小明書房:小さな出版社とはいえ、新人の発掘と育成に定評があるが、原稿料が安いとの噂。

飛山文庫:中堅の出版社だが、豊富な資金で作家の引き抜き行為で他の出版社とのいざこざが絶えない。

神人「へー、引き抜きですか、初耳です」

檜田「作家の龍神さんは金遣いが荒くて、今も出版社に借金があるという噂だ」

神人「えー、ちょっと見る目変わる話ですね」

神人は困惑気味に答えた。

檜田「まあ作品は面白いから、これも荒削りだが話は面白い」

神人「でも、この本まだ売ってるんですか?普通回収じゃないんですか?」

檜田「出版社間でもめた挙句、サクセスデビルの版権は小明書房が所有してるという訳だ」

檜田「裁判までいかなかったのは、作者の龍神さんがこの作品を小明書房に対して借金の形にしていたからだな」

神人「なんかドロドロしてますね。龍神さんいい作品書くのに・・」

神人は言葉を失った。

檜田「まあ、いい落とし所じゃないかな」

神人「そんなもんですか」

檜田「悪魔の立身出世物語に金出す奇特なスポンサーもないだろうし、まあ王道の勇者のサクセスストーリーの方が

 一般受けもいいだろ」

神人「へー」

檜田「まあオンラインゲームの初期運営はサクセスデビルのコアなファンだったという訳で、魔王陣営のネタは

 そこから流用してる物が多い」

神人「なるほどね、僕これ買ってみます」

神人はサクセスデビルの1巻を手にとってレジに向かった。


会計を済ますと神人が戻ってきた。

神人「そういえば前から聞きたかったんですけどキャラの★の数ですけど」

檜田「ああ、ネタばれになるけどいいか?」

神人「ん~、ぼかしてください」

檜田「OK、ラスボスを倒すと★がつく、さらにLVカンストすると、ある激ムズなクエストを受けられる。

それをクリアすると転生できる。★は転生した回数だ。」

 「ちなみに俺は盗賊⇒僧侶⇒盗賊で回復のできる盗賊という訳だ。」

神人「ああああさんは?」

檜田「奴はたぶん戦士⇒戦士⇒戦士だな」

神人「でしょうね、強さ半端ないですからね」

檜田「君もいきなり神聖騎士って職業選択もすごいよな。普通、下級職である程度育ててから転職だけどな」

神人「実はキャラメイク時に、すごいボーナスポイントがでて、最初から神聖騎士が選択できたんです」

檜田「ビギナーズラックか!」

神人「成長遅いんでご迷惑おかけしてます」

神人は頭を下げた。

檜田「まあ、神聖騎士スキルや呪文は優秀だし、パラメータもいいんで低LVでもそこそこ戦えるし、一人旅も可能だしな」

「高レベルでそれなりの装備をそろえれば、例え★でも、★★の連中と見劣りしないからな」

神人「愛着あるんで、このままいきます」

檜田「そろそろ、時間だな。いこう」

時計を確認して檜田は神人に声をかけた。


秋葉原の酒場

ファンタジー・サーガとのコラボ企画のコスプレ居酒屋だ。

店員もファンタジー・サーガの登場人物(端役)のコスプレをしている。

店には一足早く、「右甚五郎」の赤坂柿右衛門が入店していた。

檜田「赤坂さん早いね」

赤坂「秋葉原はあまり来たことがなくてね、早めに来たよ」

店員「こちらです」

愛村有子「ごめん、遅れた?」

檜田「いいや」

愛村「そう」

愛村は少し不機嫌になった。

神人「愛村さん今日もきまってますね」

愛村「ありがと神人君」

愛村は神人の言葉にそっけなく答えた。

愛村の今日の服装はレザージャケット、レザーチョッキ、ショートパンツにロングブーツ、シルバーのアクセサリー。

檜田のゲームキャラのジニーのイメージそのものだった。


店員「そろそろ予約のお時間になりますが」

檜田「えっと、何待ちだっけ?」

三平豹子がメイド服で店内に駆け込んできた。

三平「遅刻ーぅぅ、遅れてごめーん」

手を合わせて謝る仕草をする三平は眼鏡っ子で爆乳だ。

シックなタイプの黒基調のメイド服だが、白いブラウスの胸の部分ははち切れんばかりにぱんぱんだ。

神人「それコスプレですか?似合ってますよ」

三平「お世辞でもうれしいわ、神人君」

三平は人差し指で軽く神人の額を押す。

三平「バイト抜けてきたのよ、お昼まだなのよ、食べる物ぷりーず」

神人「三平さん、メイド喫茶ではたらいてるんですか?」

三平「二十歳越したらメイドなんてやってらんないって、本業は別だって。安心して店長公認のバイトだからね」

愛村「これで揃ったんじゃない?」

愛村は檜田に声をかけた。

三平「うひょー、愛村さん攻めのお衣装ですな。男性陣は前屈みものですぞ」

三平は下卑た賛辞を愛村に浴びせた。

愛村「ちょっとそれお世辞?」

困惑した表情をみせる愛村。

赤坂「本当にお美しい」

赤坂も尻馬に乗って軽くうなずいた。

愛村「もー、赤坂さんまで」

さらに困惑した表情をみせる愛村。

檜田「全員そろったのでお願いします」

俺は店員に告げた。


檜田「飲み物も行き渡ったようだな。では、オフ会を祝して乾杯」

ALL「乾杯!」

まあ話すことといえばゲームの話だ。

当たり前か、ゲームのオフ会なんだから。

神人「檜田さん、七支の短刀見せてくださいよ」

飲み物片手に神人がねだってきた。

檜田「右甚五郎さんの会心の作だ。☆7はこれ以外見た事がないな」

檜田は心よくスマホで連動サイトにアクセスすると表示して見せた。

神人「いいなー、僕も欲しいなー」

「でも、7つ効果がつけられるのに、なんで6つなんですか?赤坂さんじゃなかった、右甚五郎さん」

赤坂「全て埋めてしまうと、そこで終わりなんだよ。伸び代を残しておく事に意味があるだ」

「ここぞという大勝負の時に最後の効果を入れるつもりだよ」

「神人くん、ジャンダル用に今度何か作ろう。聖剣の設計図(贋作)があったなあれがいい」

神人「えー、なんで贋作なんですか」

神人はなにか不満そうだ。

檜田「聖剣は装備条件が厳しいからな、残念ながら今のジャンダルでは武器装備LVが足りない」

「贋作は装備条件が緩い。まあ性能もそれなりだけどな」

赤坂「剣の性能よりも、経験値、武器装備経験値、防具装備経験値、スキル経験値、魔法経験値の

ボーナス獲得の補助効果をつけてあげよう」

神人「本当ですか、ありがとうございます」

神人は先ほどの態度とは手のひら返して礼を言った。

赤坂「私は皆と冒険に出て役立つタイプではないので、今まで通り装備や道具を作ってサポートしていくつもりだ」

赤坂さんが我々のPTにいるお蔭で金回りはいいのは確かだ。

赤坂「そうだ、三、いやサンチョさんに頼まれていた白鳥のチュチュなんだが、本当に股間に白鳥の頭が必要なのかね」

三平「股間に白鳥がないと盛り上がらないダスょー」

神人「また、くだらない玩具を右甚五郎さんに発注したんですか?」

三平はこの問いに無言で神人の尻を撫ぜた。

神人「わわ、お尻触らないで下さい」


神人「愛村さんに初めてお会いした時ビックリしましたよ。モニタから出てきたのかと」

愛村「ま、私もビックリだったけどね。檜田の理想の女性像って訳?」

檜田に悪戯っぽく問いかけた。

檜田「いやー、あれは偶然でだな」

俺はかなりばつが悪かった。

自分がかなり悩んで細部に渡って作りこんだキャラが愛村そっくりだったとは。

神人「最初お二人にオフで会った時、キャラが逆だと勘違いしましたよ」

檜田「そういう事もあったな」

前回のオフ会で愛村をジニーだと勘違いして神人が愛村を質問攻めにしていたのを思い出した。

神人「初めてお会いしてビックリしたえば、サンチョさんにも驚きました」

「絶対、スケベそうなおっさんだとばっかり」

神人は歯に絹着せぬいいようだ。

三平「実際会ってどうだった?ジャンダルちゃん」

神人「正直、サンチョさんがこんな美人のお姉さんだとは夢にも思いませんでした」

調子のいい台詞を並べているが、神人の言葉に嘘はないだろう。

三平「もう、お世辞うまいだから」

といいつつ、三平は神人の尻を撫ぜた。

神人「わわ、お尻触らないで下さい」


店員「ラストオーダーになります」

オフ会も終わりが近くなり、俺はため息をつき、言葉を失っていた。

愛村「どうしたの落ち込んでる?目の下にクマもあるしさ、なんか悩みでもあるの?」

愛村が俺を心配して顔を近づけ覗き込んできた。

檜田「心配してくれてありがとう。なんでもないだ、なんでも」

俺は素直に礼を言った。気にしてもらえて少しうれしかった。

愛村「だけどぶっさいくなぬいぐるみね、もしかしてこれ私へのプレゼントなの?もらってあげてもいいけど」

愛村は檜田の肩の辺りを指差して悪戯っぽく言った。

檜田「お前、これが見えるのか?」

俺は思わず愛村の細い肩を掴んだ。

愛村「ちょっと痛いよ」

愛村は頬を赤らめてまんざらでもなさそうだ。

檜田「すまない」

俺は肩から手を離すとひたすら謝った。

愛村「みんな見てるじゃない、そういうのは二人っきりの時にしてよね」

愛村は小声で俺にだけ聞こえるように耳元で囁いた。

三平「ひゅーひゅー、熱いダスよお二人」

三平は食べかけのピザ(ドラゴンのホッペ肉)を片手に冷やかした。

檜田「よかった、事情はこいつに聞いてくれ」

俺と愛村が何もない空間にさもぬいぐるみ?があるように会話しているのを見て、他の連中はひたすらぽかんとしていた。


しばらくしてオフ会はお開きになった。

オフ会が終わる頃にはぬいぐるみ?の姿が全員に見えるようになった。

最初にぬいぐるみ?を愛村に預けることにした。

1週間交代でこの奇妙なぬいぐるみ?を預かってもらう約束をとりつけた。

憑き物が落ちたように肩から重荷がどいた感がした。

実際、愛村に渡してぬいぐるみ?を渡して軽くなっていた。

俺は柄にもなく少し涙ぐんでいた。

思えば、最初は幻覚だと思った。

次は幻聴がはじまり、ノイローゼだと思った。

会社の産業医にも相談した。

今日、皆と会ってよかった。

ぬいぐるみ?が見えるといってくれて気が楽になった。

やはり持つべきモノはネットの友人だなと。

これで今日はぐっすり眠れそうだ。

いや、これから一月はあの五月蝿いぬいぐるみ?から開放されるということだ。

そう考えると家路への歩みも軽くなっていた。


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