エピローグ: それは泥沼流で二面指しをしている様な状況で
小手指アリスとの対局から2週間後。
俺は再び彼女と将棋盤を挟んでいた。
「うふふ、逃がしませんよ先輩♡」
「ぐぬ……」
ちなみに、その隣には羽生飛鳥も座っている。
「私が先に捕まえて見せるから」
「うぬぬ……」
ナニをしているかと言うと、将棋部の部室で二面指し——彼女たちを2人同時相手に対局している。
そして二人からの猛アタックを受け、俺は現在、陥落寸前だ。
きっかけは、小手指アリスが俺の通う中高一貫校に転校してきたことだった。
『気が向いた時は学校に通うようにしてみてくれ』
って命令を律儀に守っている所を、直々に見せるつもりらしい。
そこまでしてくれなくても良かったんだけどな......
勝負の結果とは言え覚悟のガンギマリっぷりにちょっとビビる。
でも来ちゃったものは仕方がない。
学校に通う様勧めた責任もあるし俺の練習にもなるから、最近昼休みはこうして3人で部室に集まって弁当を食べ、その後3人で将棋を指している。そして、そんな生活を存外俺は気に入っている......まあ、二面指しでは負けてばかりでそこはめちゃくちゃ悔しい訳だが!
少し前までは学校を辞めることばかり考えていた俺なのに、なんでこんなことになったんだろなぁ……事実は小説よりも奇なりだ。
ちなみに、実はこの先、放課後に3人で過ごすことも増えていくのだが、この時の俺がそれに気づくことはなかった。
***
将棋界にはこんな格言がある。
『人生もまた、一局の将棋なり』
人生は一度きりの真剣勝負であり、将棋と同様、やらかしても途中でやり直したりはできないという意味だ。
深浦邦夫、羽生飛鳥、小手指アリス
三者三様の思惑が入り乱れた盤面はこの先、悪手と妙手と勝負手が入り混じる混沌とした局面への突入していくのだが……
それもまた、一局の将棋である。




