第2話
山道を歩いている時だった。
獣の息遣いは時折、感じていたが別の何かに付けられている事に気付いた。
今の気候はそこまで寒くはないが、山は流石に冷え込んでくる。なのでそれなりに厚着をして、早目の宿泊をしようと荷を降ろしていた。
ずっとこちらに視線を投げかけてくる何者かに、俺は警戒を強めながらも簡易テントを組み立てた。金がないので中古品を買ったのだが、なかなかに良い品である。使うのは初めてなので、ほんの少しワクワクしている。
――と、その前にだ。
ノーモーションで、背後の気配に魔術を放った。
「――っぐがぁ!」
殺すつもりは無いので、風の魔術で手加減をしている。不意打ちだったので、効果は絶大だな。草むらの奥で尻もちを付いてる少年に、俺はゆっくりと歩み寄った。
「おい、そこのガキ。敵意がないなら、こっちに来て手伝え。そうすれば、命は助けてやる」
完全にこっちが悪者みたいだが、ある意味では俺の方が被害者だ。なのでこれは、正当防衛だった。最初に力を示しておけば、イニシアティブを取れるからな。こればっかりは、どこの世界でも変わらない。
「ガキって……お前も、対して変わらねぇだろッ!」
反抗的な目付きで、痩せ細った少年がコチラを見ている。孤児か何かだろう。こんな山の中にいるってことは、何処かから逃げてきたか。
「反抗するなら、殺すけど――どうする?」
魔術で短剣を生み出して、少年の喉元に突き付けてやると短い悲鳴を上げる。怯えた目で、コチラを見ている。見慣れた目だ。
前世では、飽きるほど見てきた目だった。
「……まぁ、良いや。好きにしろ!」
剣を手放して、俺は料理に取り掛かろうとした。すると少年が、落ちた剣に視線を向ける。一瞬の逡巡の後、手ぶらでゆっくりと近付いてきた。
どうやら、屈伏したようだ。この手合いのガキは、扱い慣れている。力で抑えつけても、反発されるだけだからな。力を示した上で、解放してやればすぐに靡く。弱いやつは、強い者に抗えないからだ。
「お前、名前は?」
先に名乗らせるのも、上下関係を構築する上では重要だ。情報の開示は、必ず相手が先になるようにする。少しでも下手に出れば、必ず舐められるからな。
「アルト……ウェハースって村から、逃げてきた」
ほらな。
先に情報を曝け出してきた。
「そうか。俺は、リスタートだ。まず、そこの野菜を切ってくれ」
従順に、指示に従うアルト。後はもう、なすがままだ。




