「呪いの眼~Curse Eye その2」
風邪ひいた。バカじゃないことが証明された。
風邪ひいた。この季節に半袖半ズボンはバカだということが証明された。
インフルだった。
インフルで寝込んでて、久しぶりに学校行ったら、テスト一週間前の恐怖わかるか?
「話はこれでおしまい。もう十分休んだだろ…立て」
腹に強烈な一撃を喰らい、僕は地面にうずくまっていた。
が、「立て」の一言がで身体を反射的に動かされる。
全身に殺気という名の電流が流され、鳥肌が立っている。
(立たなきゃ… 、絶対殺されてた…)
「チッ、やられてばっかで…たまるか!!“赫”!」
恐怖を跳ね返し、全身に赤いオーラを纏わせる。
今自分の出せる、渾身の一撃を喰らわせるべく、コンクリートの床を強く蹴る。
(アイツの能力は“眼”。つまりその戦闘スタイルはきっと能力に依存しているはず
つまり、視界を潰してしまえさえすれば!)
まずは2羽の烏を、挟み撃ちするように、それぞれ左右別方向から飛ばす。
しかしそれを、慧は一切の無駄なく、腕の一振りで二羽とも軽く薙ぎ払った。
(マジかよ…)
正直片方は生き残ると思っていたんだが、流石に考えが甘かったようだ。
(ごめんね。ひどいけど、君たちの死、無駄にはしないよ)
死んでしまった烏の羽根は、黒い壁となり、ヤツの視界を奪ってくれる。
慧は視界の邪魔になる羽根を、払い除けようとする動作をする。その隙を利用してさらに加速して、一気に距離を詰める。
確実に拳が届く間合い。
相手は僕が目の前にいることはわかっても、どの方向から攻撃が来るのかは見えない。
絶好のチャンス。魔力を右手に集中させて、パンチを繰り出す。
しかし、僕の渾身の一撃は、意図も容易く防がれた。
僕の右拳は、ストレートがキャッチャーのグローブに入り、ストライクが言い渡されるほど綺麗に、そして安々と慧の左手で受け止められていた。
「キミの能力、赤い光が漏れてくるせいで壁の向こう側からでも簡単に見えてるぞ」
「能力なんて使わなくてもってか!?」
自分より背の低い奴から、見下ろされる冷たい視線。
それにプッツンきた僕は、左手を飛ばす。
しかし、怒りは冷静さを欠かせ、周りが見えなくさせる。
僕の右手が慧に握られていることをすっかり忘れていた。
慧は僕の手を自分の後ろまで引っ張り、体勢を崩され、無防備な腹部をさらした。
「テメェ、その身長のわりにパワーあるな」
「…あぁ??」
声色がドスのきいた、怒りのものに変わった。
(やべぇ…)
何か地雷を踏んだらしい。
そのまま膝を蹴り上げ、強烈な一撃を入れられる。
腹を抑え、膝をつく僕。
しかし右手は握られたまま。
今ここで追撃が来たのならKO確実だ。
腹部の痛みをなんとかこらえ、魔力操作に集中し、1羽烏を背後に呼び出し突撃させる。
しかしそれを慧はそれをあいた片方の手で、ノールックで掴み、遠くに投げ飛ばした。
(勝てない…)
「敗北という2文字が頭に浮かんだ時点で、その人間は実力を充分に発揮させることはできない」
____分かってるよ、んなこと………
「もう無理そうだな」
____うるせぇ………
「苦しまずに終わらせてやる」
そう言って慧は右手で手刀を作り振り上げる。
対する僕は膝をついたまま何もできず、コンクリートの冷たさを感じることしかできない。
でもなぜだ。
こんな絶望的な状況でも勝利の女神の足音が、一歩。また一歩と近づいてくるのがわかる。
「…__るせぇ____」
「ん?」
「…うるせぇ」
「…なんだって?」
「うるせぇんだよッ!このドチビが!」
そうだ、僕は忘れていた。
いつだって人間を、…俺を突き動かすのは
生きたいという欲望
ただそれだけだ。




