第51話・ぐはぁ、可愛い!! ロアン、安定のオーバーリアクション
ロアンがやってきた。
「アーノルド様、メルリア様、皆様、おはようございます! あれっメルリア様、その腕にある人形は何ですか!? きらきらオーラしか感じられません。女神の神々しい光です。髪の色もメルリア様とお揃いですね。よく見たいです!」
ひと呼吸で、よくそんなに長い言葉を言えるものだ。
メルリアは呆れながらも感心していた。
シエルの人形が絶賛されている。
こんな気持ちのよいことはない。
「ロアン、見て! シエルの手作りなの。可愛いよね〜」
メルリアはぴょこぴょこと足を上下させながら、ロアンに向かって背伸びする。
メルリアは人形の足も前後に動かして可愛さをアピールする。
「ぐはぁ、可愛い!!」
美形の見た目も台無しなほど、後ろに仰け反り大袈裟なくらい可愛さに悶えるロアン。
メルリアからも得意気な笑みを隠しきれない。
「メルリア様、とても可愛らしいですよ! え、女神!? 翼も生えてる。やっぱり女神だ。これ売ったら、メルリア様ブームきますよ! 絶対に皆欲しがりますって!」
熱意溢れるロアンの言葉に、アーノルドも満足そうに聞いている。
カイルが小さな歩幅でシエルに近づいた。
ニックに振り返る。
メルリアは二人の様子を興味深く見ている。
「お母さん、これ」
「まあ、ありがとう。指ぬきね」
厚い布を縫う時に押し込んだり、針が刺さないようにする大きな指輪のような裁縫道具だ。
「ニックさんに頼んで、リコルディから持って帰ってきてもらったの」
「ただの鉄の指輪ですよ」
表面には凹凸がついている。
「カイ坊が表面は加工したんだよな」
ニックの言葉にカイルが頷いた。
「カイル、とても嬉しいわ」
シエルはカイルを優しく引き寄せると抱擁する。
そしてそれが終わると、シエルは闘志の灯る瞳に変わった。
「私、頑張りますね!」
このメルリア人形、この後、シエルの努力で量産されていくことになるが、貴族令嬢ではないところで、大ブームになるのは、もう少し先の話だ。
メルリアは椅子に座る。
コップから伝わるホットミルクの温かさにホッと息をついた。
メルリアはコップに口をつける。
温められた牛乳特有の甘い匂いに癒される。
「そういえばロアン、ギルドを作ってくれ。どれくらいでできる?」
パンの出来上がりを聞くくらい簡単に、アーノルドがロアンに訊ねる。
「はいぃ!? アーノルド様、ギルドですか?」
驚きのあまりロアンはメルリア人形を落としそうになる。
「⋯⋯父に相談しないと」
ロアンは慌ててメルリア人形を抱き直す。
「そうですよってギルド!?」
メルリアもアーノルドの爆弾発言に固まった。
先程、ニックが男爵に会った話を聞いたばかりだ。
意地悪な男爵の元側近に男爵位授与を白紙にされた。メルリアはそれでも怒りが収まらなかったが、バルドから人ならざる禍々しいオーラを感じたので、落ち着いた。
あれ、絶対になんかする気だ。
バルドのことだから、物理的に何かするのかもしれない。
それから、ニックが男爵の誘いを断った。
そして聖礼祭のリース用の飾りを売って、追加の注文を取ってきた。
それしか聞いていない。
「ニックが男爵に売りつけた聖礼祭のリース飾りで、金貨十枚の値がついた。このままではクアココット領の商売は確実に大きくなる」
「「金貨十枚!?」」と驚愕のメルリアとロアン。
「旦那、これから作る木彫りも含めての金額ですよ」
「いや、木彫りの出来を見たら、もっと支払いたいと言うはずだ」
リコルディ男爵に会ってから、アーノルドのニックへの信頼が急上昇したようだった。
それにしてもロアンは可哀想だ。
一度も相談もされずに、ギルド設立が決まった。
しかもそんなに簡単なわけではないはずだ。
ロアンは父宛の手紙を早速書くと言った。
「ロアン、後で今までの売り買いの一覧、まとめておくね」とメルリアは申し訳なさそうに告げる。
「そちらは父と照らし合わせながら書類を作りますから、メルリア様は確認してください」
なんとも頼もしい限りだ。
すぐに伝書鳩でロアンの手紙を持っていってもらう。
* * *
夕方にガルドが来た。
これは重大かつ緊急事態だと判断したのだろう。
二角的イチオシシーンは
「ねぇ、反対にギルドがないと困ることはないかしら?」
メルリアの言葉が部屋に響く。
誰も何も言わない。
「困ることあるぞ」




