第3話・メルリアが一番したかったこと
さて、戦利品のお披露目会である。
皆は各々見つけた物をがらんとした食堂に置いた。
それはまるで雪山に閉じ込められて、使えそうな物を一箇所に集めるようだった。
麻袋に入った穀物のような物をメルリアはグルドフに見せる。
「これ食べれる?」
手のひらに慎重に出して、じっと見ていたグルドフが嬉しそうな声を上げた。
「これは種です! お嬢様やりましたね!」
「メル、すご〜い!」
「へへっ、そうでしょう」
メルリアはカイルに抱きつくと、癒しパワーをカイルからもらう。
(この天使みたいなお兄ちゃん、素敵すぎるわ)
「そしたら今日はもう遅いので明日植えましょう」
「うん、分かった」
そう返事をしながらメルリアは部屋の中の物を見る。
山になった上からそれぞれ掴むと「これはお水、きれいにできる」と皆に伝える。
それはニックが持ってきた砂利と落ち葉だった。
(前世では落ち葉や小石、砂の層を作って水を通すと、それぞれが汚れを取ってくれてある程度綺麗なお水になるって生活の授業で言ってた)
「そうか、少しでも濾過すれば、生活用水としてもう一度使えるだろう」
ニックも地頭があるようだ。
メルリアの拙い説明で意味を汲み取ってくれる。
メルリアは嬉しそうな笑みを浮かべると、探しに戻る。
メルリアはシエルの隣にある木の破片を持ち上げた。
(中世ヨーロッパのお話では石鹸の代わりに灰を水に入れて洗濯をしていたみたいだったわ。それならこれも使えるかしら)
「燃えたあとの灰は汚れが落ちる」
「お嬢様、よくそんなことをご存知ですね。 燃やした後に残る灰は汚れた服や布を洗うのに使いましょう。灰はバケツに集めましょう」
(それが終わったら、屋敷中を綺麗にしましょう。気持ちも変わるはずだわ)
メルリアは屋敷の掃除を提案した。
シエルもグルドフもニックも変な顔をして、意図が分からなかったようだが、メルリアを尊重してくれた。
古布はたくさんある。
床を掃き、古布で壁も床も拭いていく。
煤けた屋敷の中はまた綺麗になってきた。
メルリアが掃除できるところは限られていたが、明らかにシエルたちの表情が変わった。
その後、掃除に使った水を試しに濾過してみると茶色く濁っていた水がだいたい透明になった。
それを見て皆は喜びの声を上げた。
メルリアは野草を食べる作戦をまだ諦めていなかった。
今のところ、二戦二敗──。
次こそ、食べれる草を探すぞ!
⋯⋯駄目だった。
しかも最後のは特に苦かった。
何度、水を飲んでも口の中から苦味が消えないのだ。
だが、皆には知られたくない。
せっかくのグルドフの料理がどんな味なのか分からないまま食べた。
その日、グルドフの出してくれる料理以外は食べないと固く心に誓ったのだった。
そしてメルリアが一番楽しみにしていたことがある。
* * *
バケツに温めたお湯を持ってくる。
お湯は透明だった。
布をバケツに浸すと、手がじんわりと温かくなる。
布を絞り腕を拭く。
温かさがじんわりと肌に伝わってくる。
そして首元、身体、──全身を拭く。
「そうだった」
最後に顔を拭く。
毎日の疲れが溶けていく。
あぁ、気持ちいい。
「あー、日本人で良かったー!」
思わず声を上げたが、今は日本人じゃなかったと気がつくのに三呼吸ほどかかった。
「おっとっと、今は日本人じゃなかった」
メルリアは誰もいない部屋で安堵の息をついた。
お風呂は入れなかったけど、身体を綺麗にできて心から嬉しかったメルリア。
思わず変なことを口走っちゃいました(^^)
さて、次回の二角的イチオシシーンは
(でももっとすごい作戦始めちゃうからね)
名づけて、“サンドイッチ作戦”。
内容はシンプル。
名前通りサンドイッチを食べれることを目指す作戦なのだ。
メルリアは作戦をいっぱい思いつくようです。




