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【連載版】没落貴族に置き去りにされた庶子(幼女)ですが、使用人たちと楽しく屋敷を立て直します  作者: 二角ゆう
第一章・メルリア 決意編

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第9話・皆でここに寝ませんか?

 長い梯子が父の部屋に入っていた。


 アーノルドとニックは屋根の梁や小屋組みや垂れ木を金槌で叩いている。


 コンコンと乾いた音が聞こえてくる。


 位置を変えてまた叩く。


 鈍い音がした。


 下から見ても分かる。


 金槌の先が少し木に食い込んでいた。


「ちくしょう、垂木が腐ってるな」と悔しそうなアーノルド。


「梁は大丈夫そうですよ」と冷静なニック。


 メルリアは二人の会話を聞く度に、心臓から変な音をさせた。


 屋根が直らないなら、このお屋敷は住めない。


 アーノルドが寝床を保証してくれても、メルリアたちの関係までは変わらないという保証はない。


「あ!」


 ニックが声を上げた。


 無意識にメルリアは身体を跳ね上げた。


 ニックの低い声が良からぬものを見つけたことを表していた。


「やっぱり駄目か?」


 アーノルドの声も低くなる。


 手を口元に添えて梁を見つめるニック。


 ちらりと他の梁を見ている。


「少し梁が割れていますが、両側の梁は大丈夫そうなので、修繕できそうですよ。垂木の腐ったところは直さないといけませんが」


「ニック、大丈夫なの?」


 メルリアは思わず声をかける。


「お嬢様、この主梁が駄目なら無理でしたが、こちらは大丈夫そうです」


 メルリアは全身から力を抜いた。


(よかった〜!)


 アーノルドはカラッとした笑顔を向けた。


「屋敷を立て直すか!」


 それよりも細い木の部分は、かなりの部分で取り替えが必要になる。

 かなり時間が掛かりそうだ。


 アーノルドもさすがに苦しい面持ちになっている。


「次に雨が降ったら、おしまいだ。出来るだけ作業を進めるぞ」


「私も手伝います」


 グルドフもやってきた。

 心配したメルリアはグルドフに聞くと、「お昼はスペシャルメニューです」と意味ありげな含み顔で返してきた。


 駄目な部分は木材を変える必要がある。


 その前に屋根の瓦を下ろす必要がある。


 グルドフも協力して、瓦を下ろしてくる。


 床にならんだ瓦を見て、メルリアは使えそうなものとヒビの入っていたり割れているものとに分ける。


「あ、こっちはヒビが入っているわ」

「こちらは割れていますね」


 その作業もすぐには終わらないので、途中でお昼になった。


 グルドフが部屋から出ていくと、あるものを待って戻ってきた。


 メルリアはそれを見て声を上げた。


 パンの間に挟まれた野菜と卵。


「お嬢様のサンドイッチなるものです」


 皆、初めて聞く言葉をたどたどしく発音してみる。


 食べ方は簡単なので、両手で掴んでかじるだけ。


 アーノルドは片手で食べ始めた。


「これは忙しい時に良いな」


 メルリアは笑顔になった。


 取り外した屋根の隙間から青空が覗いている。


 その日はすべての屋根を取り終えた頃には夜になっていた。


 屋根のない屋敷の二階では夜空が見える。


「皆様、野菜スープを作ってまいりました」


 シエルとカイルが鍋と深皿、それにパンを持ってきた。


(あ〜私の聖母と天使〜!)


 グルドフが屋根を取り外している間、シエルがスープを作っていたのだ。


 屋敷の中なのに空が見える。


 汗まみれになった皆は嬉しそうにスープとパンを受け取る。


「屋根がないお屋敷のご飯も美味しいですね」


 メルリアの言葉に愉快そうに笑う皆。


「領主の屋敷に屋根がないなんて、なんて愉快なんだ。マーラが知ったらびっくりするぞ」


 たぶん、他の屋敷ではありえないことだ。


 メルリアが記憶の中で修繕をしているところは見たことはなかった。


 少なくとも大きな修繕は一度もない。


 だから屋敷は古くなり壊れた。

 偶然にもなんとか持ちこたえているようだった。


 なんだか自分たちに似ているなと思った。


 メルリアはある想いが大きくなった。


「あの、寝る支度が出来たら皆でここに寝ませんか?」


 皆は目を見開いてメルリアを見た。

 皆、なんと言ってよいか分からないようで、誰も声を上げない。


「たぶん、こんなこと二度とないと思うんです。なんにも持っていない私たちが屋敷の屋根までなくしているんですよ。夜空を見ながら寝るなんてこと、この先二度とないかもしれない。ここが始まりなら、皆で胸に刻みつけたいな⋯なんて思って」


 言い始めたのは良かったが、上手く締まらなかった。


「戦争中だってこんな穏やかに夜空を見ながら寝たことはない。皆で寝るか!」


「ひどいお屋敷ですよ。でも屋根は直せます」とニック。


「野営でもないのに、夜空の下で夕食を食べることになるとは思いませんでした。でも生きてるって感じがしますね」とグルドフ。


「何もないのは僕たちと変わらないですね。でも出来ることはあります」と大人びたことを言うカイル。


「私たちはどこまでもお嬢様についていきますよ」と聖母のようなことを言うシエル。


 その皆の気持ちがくすぐったくて、メルリアは寝たフリをした。

 そしたらそのまま寝てしまったのだった。

次回の二角的イチオシシーンは

「ニック、私たちが旅人だったら有り難くここに寝ているんじゃないかしら」

※旅人が有難がるような物置のシーンです(笑)

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 今回もほわほわと癒やされました。大変な状況なのに、何故かいつも楽しそうですね。  寝たフリをしたつもりで本当に眠ってしまう子、いますよね。二角様のお書きになる子どものキャラクターは、どうしてこれほど…
おぉ、夜空を見上げながら寝るのは屋根を外していたからだったんですね♪(*^^*) アウトドア気分でいい天気なら気持ちが良さそうです♪
物理的なお家建て直し、いいですね〜。
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