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第11話 影の影、つなぎ手の影

総集編もあるので、テンポよく読みたいかたはそちらがおすすめです。

湖面に映った“自分の影”が、別の動きをした。

 恒一は息を呑んだ。

 影はゆっくりと立ち上がり、湖面から抜け出すように形を持ち始める。


――次は、おまえの番だ。


その声は、影の本体が消えたはずなのに、確かに響いていた。


「……まだ残ってたのかよ……」

 恒一が呟くと、影は微笑んだ。

 その笑みは、恒一自身のものとそっくりだった。


リオが聖剣を構える。

「恒一さんの……影……?」

「違う。これは……“俺の物語の影”だ」


残響――もうひとりの恒一が前に出る。

 彼は影を睨みつけ、低く言った。


「ようやく出てきたな。“つなぎ手の影”」


◆つなぎ手の影

影は残響を見て、楽しげに肩を揺らした。


――おまえは“終わった物語”。

 ――だが、こいつは違う。

 ――“終わりを抱えたまま進んでいる物語”だ。


恒一は影を睨む。


「……俺の“終わり”ってなんなんだよ」

 影は指を鳴らすように手を動かし、湖面に映像を浮かべた。


雨の夜。

 少女を突き飛ばし、トラックに弾かれる自分。

 倒れた自分の身体。

 泣き叫ぶ少女。


そして――

 “そこで終わるはずだった物語”。


影は囁く。


――おまえは死んだ。

 ――だが、物語は“終わりを拒んだ”。

 ――だから、おまえはつなぎ手として再構築された。


恒一の胸が締めつけられる。


「……じゃあ、俺は……本当はもう……」

「死んでる」

 残響が静かに言った。


「でも、それは“終わり”じゃない。

 お前は“続く物語”を選んだんだ」


◆影の目的

影はゆっくりと歩き、恒一の目の前に立つ。


――つなぎ手よ。

 ――おまえの物語は“未定義”。

 ――だからこそ、我らはおまえを取り込める。


「取り込む……?」

 影は頷く。


――未完の物語を喰らうのが我ら。

 ――だが“終わりを拒んだ物語”は、もっと美味だ。


リオが叫ぶ。


「恒一さんを食べる気かよ!!」

 影は笑う。


――食べるとは違う。

 ――“終わりを返してもらう”だけだ。


恒一は拳を握りしめた。


「俺の終わりを返したら……どうなる?」

 影は囁く。


――おまえは消える。

 ――だが、世界の物語は安定する。


エイルが叫ぶ。


「恒一さん! 影の言葉を信じてはいけません!」

「でも……俺が消えれば、影は……?」

「影は消えません! “終わりを抱えた者”は他にもいるのです!」


影は楽しげに笑った。


――案内人よ。

 ――真実を隠すのは、もう限界だろう?


エイルの表情が凍りつく。


◆案内人の秘密

残響がエイルを見つめる。


「エイル。

 そろそろ話すべきだ。

 “つなぎ手がどうなるのか”を」


エイルは震える手で胸元を押さえた。


「……つなぎ手は……

 他者の物語をつなぐたびに……

 “自分の物語が薄れていく”のです」


恒一は息を呑んだ。


「薄れる……?」

「はい。

 つなぎ手は“終わりを抱えた者”。

 他者の物語を進めるたびに、

 自分の物語の“終わり”が近づいていく」


影が囁く。


――つまり、つなぎ手は“消える運命”だ。


リオが叫ぶ。


「そんなの……そんなの絶対におかしい!!」

 エイルは涙をこぼした。


「私も……そう思っています。

 だから……恒一さんを選んだことを、ずっと後悔している……!」


恒一はエイルの肩に手を置いた。


「エイル。

 俺は……後悔してないよ」


エイルの瞳が揺れる。


「……どうして……?」

「誰かの物語をつなぐって……

 すごく大事なことだろ。

 俺は……それを選んだんだ」


◆影の侵食

影が手を伸ばす。


――ならば、選べ。

 ――おまえの物語を続けるか。

 ――終わりを返すか。


恒一は影を見つめた。


そのとき――

 リオが恒一の前に立った。


「恒一さんの終わりなんて……渡させない!!

 俺が守る!!」


聖剣が光を放つ。

 刃の黒い染みはまだ残っているが、

 リオの覚悟が光を強めていた。


影は低く笑う。


――勇者よ。

 ――おまえの剣もまた“未完”。

 ――つなぎ手を守れると思うな。


リオは叫んだ。


「未完でもいい!

 俺は……俺の物語を続ける!!

 そして恒一さんの物語も……守る!!」


その瞬間、聖剣の黒い染みがわずかに後退した。


影が揺らぐ。


――面白い。

 ――ならば、試してみよ。


影が形を変え、巨大な“物語の獣”となって襲いかかる。


恒一は拳を握りしめた。


「リオ……行くぞ!」

「うん!!」


つなぎ手と勇者は、影の獣へと走り出した。

面白かったらブックマークと高評価お願いします。また、noteにて紹介動画等を投稿中ですので、ぜひご覧ください。

次回予告

影の獣が咆哮した瞬間、

恒一の影が――

恒一とは逆方向へ走り出した。


影は笑いながら囁く。


――おまえの物語は、もう“おまえだけのもの”ではない。

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