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Galaxy Trail  作者: 紀之
新天地を求めて

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第二十九話 再び戦いの海へ(第2部完)




シュトロン星系・惑星トマ近海


惑星ゲダムへの強襲爆撃を終えたサークレイスのFOカンナエを乗せたペイリオコン級大型偵察艦は再びシュトロン星系外縁部に戻って来た。


『カンナエの収容とエネルギー補充急げ!!』

カンナエのコクピットから自身の躰へ電子頭脳を移し終えたサークレイス。


彼はペイリオコンの格納庫へ収容された愛機が全身に金属分子カプセルを突き刺され、FOにおける修理、すなわち『栄養補給』を受けて機体の金属の質感が目に見えて良くなっていくのを満足気に眺めると、そのまま艦の最奥部へと向かう。


飾り気のない真っ暗闇の中部屋の中央で彼は(ひざまづ)く。


遅れて彼の左右にホログラムで映し出された、黒いローブを着た同い年くらいの1組の男女が同じく跪く。オーシャとナールライトである。


3人の頭上高くから、赤い光が明滅しながら男とも女ともとれる深い声が部屋全体に響く。


『サークレイス、裏切り者の始末まずはご苦労』


「勿体なきお言葉恐悦至極にございます」


感情を全く感じさせない言葉で女帝AT01は続ける。


『今回の一件で人類連盟共は更なる攻勢に出るであろう。そこで第148期軍備計画を多少の修正の上承認する事にした』


女帝の言葉と共に3人の電子頭脳に今回の計画で承認された3種の新型FOの設計データがインストールされる。その中の1種ヘイスティングスは既に先行試作機が25機生産されオーシャ率いる第三艦隊での実戦テストが行われていた


『そしてオーシャ』


『ハ!』


『ヘイスティングスの最終テストを兼ねて貴公はテルモピュレーを持って直ちにシュトロン星系へ行け。サークレイスと共同し、カデシュを完全に破壊せよ』


オーシャは最敬礼を返すとホログラムを切って退出する。


「恐れながら・・・連中は分隊してカデシュが来るでしょうか?」


サークレイスはAT01の立てた戦略通りに人類連盟が動くか多少疑念があった。


『何か不安要素があるのか?』


ナールライトの言葉には同僚を咎めるトゲがあった。彼は崇拝する女帝に全ての知的生命体が崇敬以外の感情を抱く事自体反逆の罪ありと考えている男なのだ。


「ゲダムの連中が自棄になって全戦力でトマへかかってこないとも限りません。その場合、我々の探す連中の拠点を突き止める事が出来なくなりますが・・・」


『心配せずとも良い。連中は妾の言う通りに行動するであろう。サークレイスよ、貴公は人間共の思考パターンをもう少し理解することだな』


「恐れ入ります。では直ちにカンナエの準備にかかります」


サークレイスは最敬礼すると通信を切って部屋を出て行く。


(どの道スマッシャーでガランとカルブンクルスのどちらか片方は消えるのだ・・・そう考えれば安いものだ)


そう考えると楽な仕事に感じてきた。


相手方はしばらく行動できないだろう。その間にカンナエの『修理』は完了する。


『陛下、サークレイスのあの考え方は』


『良い、ナールライト。サークレイスの頭脳は正常だ。それよりも貴公も人類連盟共のあぶり出しに励め』


『御意』


短く返答し、最敬礼したナールライトは通信を切り、部屋は静寂と闇に包まれた。


『覚醒体・・・その記憶と記録は我が子から全て消した・・・その力と意味を知られるのは不味い』


全銀河の中心部にあるヘーレムの本拠地でAT01は誰にも言えぬ言葉を呟いた。



同シュトロン星系・惑星ゲダム


カンナエの奇襲爆撃によって惑星ゲダムの熱帯雨林の4分の1が消失した。


その炎は半日後に降り出した豪雨によって消し止められた。


だが人類連盟のレガス隊は旗艦ラッダイト級攻撃空母3番艦『ガラン』と超大型球型ポッド『カルブンクルス』は爆撃による破損の修理に頭を悩ませていた。


特にガランは修理用資材が枯渇していた。特に武装が壊滅的に破損しており仮に航行できたとしても敵の攻撃に何もできないことは確実だった。


といって今、カンナエのフォトンスマッシャーを撃たれれば全滅は必至なのだが。


あれだけの攻撃を再度行うには数日の余裕があるはず、その前にゲダムを発つというのがレガスら艦隊の上層部の決定だった。それが希望的観測であるのは誰もが理解していた。


だから全員が文字通りこの3日間、不眠不休で修理と補給、そして移民の為の手続きに駆り出されていてカデシュもガランの修理要員として動員されていた。


「本当にそれ、使えるのか?」


天井のモニターを神経質に気にしながら北条翔はカデシュのコクピットのモニターに映る、メカニオーム・アタノールの残骸を見やる。


「やるんだよ!溶接すりゃあ砲塔代わりにはなる」


ハリオの言い分はこうだ。


アタノールの機体を4分の1にカットし内3つをガランの砲塔として使うという。残り4分の1は小型艇として改造してカルブンクルスで使うという。


メカニック陣はそれ以外のメカニオームの部品を何とか転用しようと四苦八苦していたのだ。その手伝いとしてカデシュも部品取りの為にプラズマソードを握ってハリオや他のメカニックの指示に従ってメカニオームの残骸を切り取っていく。


翔以外のカデシュのパイロットも他の仕事に忙殺されている。


レンはルツとレガスの護衛としてリマジハの村へ行っていた。


相羽優歌と牧野琴音は補給物資、特に食糧や水、医薬品の搬入と分配作業の手伝い。


(イフルさんと牧野さん良いコンビだな)


優歌は合羽を着てキャンプ中を走り回っている。そして熱によって骨組みの傾いた大きなタープの下で物資を運ぶ補給官のイフルとその内容を確認して書類を付けている琴音の姿を翔はサイドモニター越しに眺める。


「おうい、主砲の溶接手伝ってくれ!」


「了解」


翔は地上を歩く人々を浮き上がらせない様にグラビティ・リフターを調整してガランの甲板にカデシュを飛び上らせた。



リマジハの村・政務局


「食料と医薬品の提供に感謝する。それと10億の人間を受け容れてくれることも重ねてお礼申し上げる」


レガスの慇懃(いんぎん)な言葉に村の代表であるスオウも事務的な返事を返す。


この場の全員の気が逆立っているのはいつ上空からフォトンスマッシャーで狙撃されるかもしれないと気が気でないからだ。


「いえ。我々脱走兵の罪を問わないのという保障を頂けましたので。それに10億の人々はそれぞれの村なり町なりを作ってもらうので・・・我々はその手伝いをさせてもらうだけです」


(要するに早く出て行きたい、出て行ってもらう為の利害が一致したってわけか)


憮然(ぶぜん)とした顔で部屋の隅に立っているレンに苦笑しつつルツは口を開く。


「町を築く土地の場所に指定はありますか?」


「勿論。あまりに捕食生物の巣に近すぎるのは危険ですから。後で地図をお渡ししましょう」


スオウとしてもこれ以上人類連盟の正規軍たるレガス隊がこの星に居るのは面白くないのだ。見ず知らずの相手にペコペコしているのは彼の沽券に関わるからである。


原始的な権力構造の中では舐められる事は権力の座から蹴り落されるきっかけになるのだ。


「では交渉成立ですな」


レガス一行はサッと立ち上がると握手もそこそこに政務局を出た。


「カルブンクルスから連絡は?」


「特に異常なしと。(もっと)も観測できた時点で手遅れだけどね」


ルツは怪訝そうな顔をするレガスに通信機を寄こす。


「出来ればそこを狙ってくれるといいのだがな・・・時間稼ぎの為にな」


レガスはリマジハの村を振り返り吐き捨てた。


「1射目は恐らくカデシュ狙いだったと思うよ」


「それがどうした?」


レンが口を挟んだことに不快そうに返すレガス。


「つまり、あの武器の攻撃範囲は未知数だって話。もし最大攻撃範囲が100kmとかだったらここからうちのキャンプも含まれるよ」


脂汗を流してレガスの足が早まった。


「あんまりあいつを刺激しない方が良いよ」


「言わなかったらあんたが言っていたでしょ。ルツにばかり貧乏クジを引かせるわけにもいかないだろ」

ヒソヒソ声で顔を見合わせた2人はクスクスと笑い合った。



人類連盟・野営地


「よし、これでカルブンクルスに送る分は全部だね。お疲れ、コトネさん、ユーカさん。少し休んでください」


タープ周辺の物資の山が消えたのは夜遅くになってからだった。


イフル補給官は顔の汗を拭って側にいた少女達に声を掛けた。


「は~ようやく一息つける!」


タープの下の物資箱に座り、手足を大きく広げる優歌にカップを渡す琴音。


「お疲れ優歌ちゃん。イフルさんも」


「ありがとう、コトネさん」


「そう言えばイフルさんはなんで補給官なんて地味な仕事してんの?翔みたいにFOのパイロットにならなかったの?」


「ちょっと優歌ちゃん!?」


「良いんだよ。僕も最初はFOのパイロットをしていたんだ。けど初陣で撃墜されてね・・・命は助かったけど、それ以来コクピットに乗れなくなってね。でも何とかして前線の兵士の為になる事をしたくてね。それで補給官になったのさ」


「そうなんだ・・・そのごめんなさい」


「気にしないでくれ。形は違えど誰かの為に戦いたいって思いは皆一緒だから」


「本当にそう思っているのかな、アイツは。ロボット動かせて嬉しい!って事しか考えてないみたいだけど」


優歌は自分や野営地の奥に停泊しているガランの主砲をカデシュを使って溶接している幼馴染が目の前の男性よりはるかに幼いように思えてならない。


「思っているさ。だからここまでこれたんじゃないか。君と彼は幼馴染なんだろ?関係が近すぎると見えないものもあるさ」


「大人だ・・・」


「優しいんですね」


「そ、そろそろ作業を再開しよう!今夜中にガランに積み荷を搬入しないと!」


2人の少女の称賛の眼差しにむずがゆい思いを感じてイフルは立ち上がって物資箱をを荷台に積み始めた。



同時刻・ガラン司令室


居心地の良い自分の定位置にようやく帰り着いたレガスは卓上の通信機がメールが来ている事を告げる点滅をしているのに気づき、足音を殺して稲妻の様に椅子に座る。


「この暗号はテオスからの物だ・・・何!?まだ希望はある!後はカルブンクルスの連中がやってくれれば!!」


『テオス』は人類連盟の盟主の称号である。その正体は不明でレガスは自分とルツを除いた最高評議員7名の内の誰かだと考えていた。


「カルブンクルスのルツ艦長に繋げ!」


ガランのオペレーターはレガスの異様にはしゃいでいる声に困惑しつつも指示通りに行動する。意志に背いてわざわざ不機嫌にさせる理由も無いからである。


半日後。

航行だけは可能になったガランはリマジハの村やゲダムに移民する事に決めた10億の地球人に見送られながら宇宙空間へ旅立っていった。


カデシュのパイロット4名の少年少女達はカルブンクルスへ戻って行く。その後ろからアタノールの残骸を改造した砲撃艇カーカスが続く。


カルブンクルス単艦と機動兵器2つ


たったこれだけの戦力でシュトロン星系外縁部に居るはずのサークレイスの艦隊へ攻撃をかける、無謀な作戦を行う為に。


眼下の新たなる地球人の新天地を守る為に。


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