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Galaxy Trail  作者: 紀之
人類側の反撃

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第三十話 反撃の狼煙




 シュトロン星系の惑星ゲダムの130km前方を人類連盟・レガス隊の旗艦ラッダイト級攻撃空母3番艦『ガラン』と超大型球型ポッド『カルブンクルス』は航行していた。


いまやシュトロン星系そのものが敵FOカンナエのフォトンスマッシャーの射程に入っているのだ。


それを突破する為の今後の作戦会議がガランの1室で行われていた。


「数時間の後にポイントBへ到達する。この地点で2艦は左右に別れる。我がガランはシュトロン星系を右に弧を描くように縦断(じゅうだん)し、カルブンクルスは星系の反対側を同じく弧を描くように光の河を渡り」


ここまで説明してレガス司令官は言葉を切って艦隊上層部の面々の顔色を窺う。


全員怪訝な顔をしている。特にカルブンクルスからやって来たルツは渋面(じゅうめん)を隠そうとしない。


「対岸のダークゲートを通りシュトロン星系外縁部に居ると思われる、敵偵察艦と5柱の1機らしきFOを背後から奇襲する。この分隊で敵FOの高出力砲の狙いを分散するのが本作戦の第1目的である」


「もし次の狙いがガランでそれを変えなかったら?」


ルツの言葉にレガスは意地悪い表情を隠す事なく言葉を継いだ。


「先日の攻撃は敵機動兵器に囚われたカデシュを狙った物と思われる。よって標的は変わらぬと考える方が合理的だ」


ざわつく会議場。その喧騒(けんそう)に負けない声量でルツはレガスにある疑問をぶつけた。


「・・・・なるほど。ならこちらが決死隊やっている間この艦は何をするつもりなんですか?」


司令官はバツが悪いのか、言葉に詰まってシュトロン星系の地図の描かれたモニター前を右往左往する。


コツコツと5周目で彼は意を決したように立ち止まる。


「この作戦の提案者はテオスによるものだ」


全員の背筋が伸びる。それだけでレガスは自分に対する反論が封じられたことを確信した。


テオス


人類連盟の盟主にして正体不明の人物である。少なくともこの会議の出席者は誰も会った事が無かった。

様々な星の言語や文化政治形態の違う人類種を纏める存在であるこの人物は人類連盟という組織の象徴として長らく君臨していた。


だが組織がヘーレムによって追い詰められていく中でも依然として言葉も声も姿も見せない事は次第に戦場で働く人間達からはその為存在自体を疑う声やテオスとは超高性能AIでありそれゆえに姿を見せない、正体を知られたくないのだという憶測さえ出始めた。


その潮目が変わったのが数年前にカデシュが地球にいる事、それによって戦争の流れが人類種へ向いていく、という予言めいた内容の指令が発せられたことだった。


実に戦況はその予言通りに進んでいた。


今やテオスの権威は人類連盟結成以来の地位を取り戻しつつあった。


レガスはテオスの正体に興味は無い。だがこの地位が持つ権威と情報統制によって自分の身の安全を文字通り完全に守る最適な道具だという認識を持ち始めていた。


レガスは会議室を見回すと声を潜めると星図に黄色いマークを点滅させる。


「ガランはポイントBを出た後この地点にある秘密工場に入る。そこで艦の修理と人類連盟のつまり、純人間製のFO部隊と合流する」


小さなどよめきがあちこちから上がる。オリジナルFO開発計画は過去何度も立ち上げらえていたがその度にヘーレムに嗅ぎつけられ潰されていた。


その悲願に立ち会えるという歴史的瞬間の立役者になれるという期待が会議室に静かに充満していった。



シュトロン星系・惑星トマ近海


ぺイリオコン級大型偵察艦のブリッジに遥か彼方の銀河にいるオーシャの第三艦隊から通信が入った。


「オーシャか?どうした?」


機械人間の本来の姿をしたサークレイスの電子頭脳にある設計図がインストールされる。


モニターのオーシャは機械人間の顔ではなく地球人型の容貌をした皮で偽装していた。角度で色が変わる虹色の髪がフワリと浮き上がる。


「なるほど・・・な」


『陛下の不興を買いたくなかったのでな。既に3機製造されている。それも送る』


その設計図の内容は確かに物議を醸すモノで、少なくとも女帝からの叱責は免れないものだった。


「これならこちらの手持ちの資材で3機作り出せるな・・・その3機と合わせて光の河で迎撃させる」


『いいのか?溶けた鉄を拾い上げるようなものだぞ?(*2)』


*2『火中の栗を拾う』と同じ意味のヘーレムのことわざ


「陛下の意を汲む事こそ最大の忠義だと考えての事だ。本隊の消耗は少ないに越したことはないからな」


『スマッシャーはガランに狙いを絞るのか?確かにあの艦の逼迫具合からして基地なり拠点に向かうだろうが・・・』


「その地点を確実に調べる為にガビエネを展開させている。我が艦隊は直接戦闘に適した部隊は少ない。その為に貴公の作戦である、カデシュを確実に惑星ウィクトルで討ち果たす囮にはコイツらは最適だろう」


『手柄をくれるとはどんな風の吹き回しだ?』


オーシャの銀色の瞳が好奇心旺盛な猫の様に細められる。


「奴と戦っていないのがテルモピュライだけだからな。ただそれだけの事だ」


『そう言う事にしておこう』


無言で手を振り、サークレイスは通信を切った。そしてオーシャから渡された設計図をペイリオコンの格納庫兼簡易製造工場に送る。


『これを作れと?』


工場長の立場にあるヘーレム兵士の無機質な言葉に彼は頷く。


「2日で3機。出来るだろう?」


『勿論。しかしこんなモノに乗り込もうとする奴は居ませんよ?』


「先の戦いでガビエネが捕まえてきた人間共がいるだろう。そいつらの頭脳を使え」


『ハ。直ちにサンバルテルミⅢの開発にかかります』



ガランと別れたカルブンクルスは長距離スペースジャンプの後単艦でエネルギー再チャージまで通常航行でシュトロン星系を縦断していた。


その格納庫ではメカニックマン達が慌ただしく動いている。彼らを掻き分けるように相羽優歌はFOカデシュへと向かっていた。


「おーい!翔、そろそろ休憩したら?」


カデシュの足元で優歌はコクピットにいる幼馴染の北条翔に大声で呼びかけるが反応は無かった。


「もう!!」


優歌はエレベーターに乗って直接彼の目の前に躍り出る。


彼は一心不乱にコンソールを弄りつつサブモニターとにらめっこしていた。


「翔!!」


「分かっているよ!ただ、あの天井のレバーが出て来ないんだ」


「レバーってあの天井の奴?あれ引いて強くなったんだよね?」


「そうなんだ。あの戦闘で元に戻って以来レバーが消えちまってさ。だからどうやってまた出てくるのか色々とやっていたんだ」


「火事場の馬鹿力って奴だったのかな」


「そうだったのかな・・・」


翔は大きく息をついてシートにもたれる。


「ならさ、また同じ事になったら出てくるんじゃない?」


ドリンクの入ったカップを渡す優歌に翔は感謝を伝えながら


「もうあんなことにはさせない・・・!させちゃいけないんだよ!あれはその為の力のハズ・・・優歌だってそう思うだろう?ここにはおじさん達や牧野さんの両親も乗っているんだ」


「それはそうだけど・・・」


相羽夫妻と牧野夫妻は惑星ゲダムへの移民を拒否し、娘達と共に宇宙へ行く道を選んだ。


強硬に反対する娘達や翔に


『宇宙のどこに娘を戦場に送り出してのうのうと生きていられる親がいる?それにこの歳で全く環境の違う星に移民などと耐えらないよ。なら多少危険でも家族と一緒に過ごせる方が良い』


そう言って艦内の清掃や食事要員として働き始めたのだ。


「カデシュは何て?」


「何も・・・」


沈黙が2人を包む。その雰囲気を払うように優歌はそうだ、と明るい声を幼馴染に掛ける。


「今目の前に光の河ってのがあるの!気分転換に見に行かない?」


「分かったよ」


翔はどうにもならないのとこうなった幼馴染を止める術を知らないのとで結局彼女についていく事にした。


光の河


シュトロン星系の代名詞ともいえる、天然のソーラーパネルの役割を果たす全長185kmの特殊鉱物の帯の呼称だった。


『だった』というのは今ではヘーレムにこの鉱物を大量採取した事で光の河川は干上がってしまっていた。


カルブンクルスが到達したのは2kmほどのいわゆる水たまりと言っていい場所だったが、そこだけ見ればこの場所の往年の姿がどんな物であったかが容易に想像できた。


翔と優歌が来た時はカルブンクルスの展望ブリッジは既に多くのクルーでごった返していた。ゲダムを出てから緊張感の連続で誰も彼も一時の癒しを求めていたのだ。


「綺麗・・・でも目が痛い」


優歌は顔に手を翳しながらスマホのカメラを向けてシャッターを連射する。


「記念撮影ってわけじゃないけど・・・撮ろうか?」


翔の申し出を優歌は若干頬を赤らめながら了承し、更に提案する


「ありがとう。ならさ・・・一緒に撮らない?」


「良いのか?」


「良いの!ほら、早く!」


「お、おう!?近すぎないか?」


(ニブい)


幼馴染の朴念仁ぶりに内心がっかりしながらもそれでも思い出には違いない、と気を取り直した優歌は自撮りモードでスマホを掲げる。


「うん?」


小さなざわめきが展望ブリッジのあちこちから上がる。翔も優歌のスマホのカメラに映るある一点の光が徐々にこちらに近づいているのに気が付いた。


敵だ、という誰かの声と同時に展望ブリッジにけたたましい警報が鳴り響いた。


「優歌行くぞ!」


「もう、どうしてこうなるの!?」


人の波を掻き分けて2人は格納庫へ走り、カデシュのコクピットへのエレベーターに乗り込む。


「ハアハアッ・・・お待たせしました・・!?」


遅れて牧野琴音が息を切らせてエレベーターに滑り込んだ。


「そういえばレンは?」


「ここにいるよ」


コクピットハッチを開きながらそう言った優歌の眼前には既にレンが自分のシートに座り発進準備に取り掛かっていた。


「あんた、早いわね・・・」


「行かなかったからね」


「ええ?綺麗だったのに」

琴音も意外そうな顔しながら自身のシートに滑り込んだ。


「興味ないんだよ」


視線をコンソールに向けたまま淡々と言ってのけるレン


『カデシュ!出撃遅いぞ!?接敵まであと2分!!』


「すみません。すぐに出ます!」


(そうだった・・・俺達の戦争はまだ終わっていないんだ)


自分の迂闊(うかつ)さに苛立ちながら翔はルツに謝罪しつつ、頭上のヘルメットを被る。


『敵の動きが止まった・・・!気を付けろよ!』


「了解!!カデシュ出ます!」


オペレーターの言葉に疑惑と不安を感じつつも、翔は光の河へ向けて機体を発艦させた。

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