次なる作戦に向けて
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──次なる作戦に向けて
アレックスたちは無事にカミラが主宰し、警察軍に包囲されたパーティーから脱出し、学園へと戻ってきた。
そして、パーティーで得た情報を整理するためにアレックスたちは翌日に『アカデミー』の本部に集まることとした。
「まずカミラ殿下は間違いなくスパイだ」
アレックスがそう言う。
「彼女はトランシルヴァニア侯とともに『フィッシャーマン』という暗号のスパイと接触するつもりのようだ。『フィッシャーマン』は国防省の人間だという話だが、今のところそれ以上の情報はない」
「うーん。それだとできそうなことはないね」
「そんなことはないぞ! 我々にはできることが多くある!」
エレオノーラが諦め気味に言うのにアレックスが首を横に振る。
「第一に調べるべき人間にある程度目安が付いた。カミラ殿下は当然として、新たにトランシルヴァニア侯と警察軍のアルトゥール・ヴォルフ少佐が上がってきた」
「アルトゥール・ヴォルフ少佐って誰です?」
「昨日ホテルを強襲した帝国鷲獅子衛兵隊を指揮していた公安の人間。恐らく、というより間違いなく帝国内務省国家保衛局の人間だ。この人物はカミラ殿下について調べているようだ」
「そんなのよく分かりましたね」
「サタナエルが惨殺した警察軍の兵士の死霊から聞き出したのさ!」
「うへえ」
アレックスが述べるのにアリスが嫌そうな表情を浮かべた。
死者から情報を引き出す死霊術も黒魔術のひとつだ。アレックスはその手の魔術も使え、それによってサタナエルが虐殺した兵士たちからヴォルフ少佐の情報を引き出していたのである。
「カミラ殿下については引き続き調査するが、さらにトランシルヴァニア侯とヴォルフ少佐についても調査を行おう。それによって『フィッシャーマン』の正体を暴き、カミラ殿下を味方にするのだ」
そうアレックスはこれからの方針を宣言。
「カミラ殿下は学園にいるからいいけれど、トランシルヴァニア侯やヴォルフ少佐は学園にいないよ。どうやってこのふたりを調査するの?」
「うむ。その点は向こうも同じなのだよ、エレオノーラ。カミラ殿下は学園にいる。そして彼女もアルカード吸血鬼君主国の諜報作戦の一翼を担っている」
「もしかして、だからトランシルヴァニア侯やヴォルフ少佐が学園に来ると?」
「ああ。トランシルヴァニア侯はともかくとしてヴォルフ少佐はカミラ殿下に狙いを付けている。学園内を彼女の聖域にしたままにするとは考え難い。何かしらの監視を行おうとするはずだ」
「なるほど。なら、私は引き続きカミラ殿下と仲良しになるってことでいいのかな?」
「その通りだ。頼むぞ、エレオノーラ!」
「了解」
エレオノーラは引き続きカミラに接近することに。
「そしてエレオノーラが接近している間に我々は地道な調査だ、アリス。そろそろ君の下級悪魔や死霊のストックも十分だろう? 学園中に監視の目を光らせたまえ!」
「はいはい。けど、覚えておいてくださいね。学園内には今や聖騎士だっているんですからね?」
「ガブリエル君たちのことなら気にするな。彼女は既に学園内で悪魔を使う黒魔術師がいることに気づいているよ」
「はあああ!? いつ!? いつですっ!?」
「前に君が私を呪殺しようとしたときだよ!」
「ぐえー!」
そう、ガブリエルは既に悪魔を宿した人形の存在を察知している。
「うーん。ガブリエルさん個人は悪い人ではないのだけれど、やはり教会の人間ではあるんだよね。カミラ殿下ともあまり仲が良くないし、黒魔術にも否定的だし……。そういう意味では一番危ない存在なのかも」
「そうだね。ガブリエル君には注意を払っておく必要がある。彼女が我々を黒魔術師と告発したら我々は大打撃を受ける」
「分かった。なら、私も見張っておくよ」
ガブリエルの存在はある意味では国家保衛局やアルカード吸血鬼君主国のスパイより危険な存在であった。彼女は確実に他でもないアレックスたちを破滅させる方法を有しているのだから。
「さて、エレオノーラとアリスが働いている間、私もさぼるつもりはない。私とサタナエルはこの迷宮で使えそうなものを探しつつ、トランシルヴァニア侯や国家保衛局の動きに注視しよう」
「迷宮にはいろいろなものがあるみたいだね。次は何が見つかるのか楽しみ!」
「はっはっはっ! 楽しみにしていたまえ、エレオノーラ!」
ミネルヴァ魔術学園地下迷宮にはまだまだお宝があるようだ。
「けど、本当に学園中を見張るんですか? 何か他にいい手はないんです?」
「アリス。君は私よりスパイに詳しいだろう。その君が何か別の手段があるというのならば是非ともやってくれたまえ。学園の中を国家保衛局が見張るとすれば、彼らはどのような手段を使うのか」
「いろいろと手段はありますね。けど、一から部外者を潜入させている時間はなさそうですから、学園内にいる教師や学生をスカウトするのが有力か……」
「トランシルヴァニア侯もカミラ殿下に接触するはずだし、国家保衛局がほしいのはカミラ殿下が誰と繋がっているかの情報だ」
「私たちがほしいのもその情報ということを考えると国家保衛局の動きが分かっても、手出しはせずに見守った方がいいのかもしれませんね」
「そこは君に一任しよう!」
「丸投げじゃないですか」
アレックスがそう言い、アリスがうんざり。
「私も手伝えることは手伝うよ、アリスさん」
「お願いしますね、エレオノーラさん。カミラ殿下の近くを見張るのが一番手っ取り早くはあるのですが、もっともリスクも高い感じですから」
エレオノーラはアリスへの協力を約束。
「では、今日は解散だ。ご苦労だった、諸君」
「うん。じゃあ、明日も集まる?」
「そうしよう。それぞれその日の出来事を報告するようにしようじゃないか」
「分かった」
そして、エレオノーラたちはアレックスの指示で解散した。
アレックスたちはポータルで学生寮の自室に戻る。
「しかし、スパイ探しとはな。また退屈そうな話だ」
「そういうな、サタナエル。君はこの前暴れたじゃないか」
「雑魚相手にな。そろそろ聖騎士辺りを相手にやり合いたいものだ。雑魚を踏みにじるのは暇つぶしにしかならん」
「しかし、君は弱者がもがくのを見るのも好きだとは言っていなかったかね」
「お前はハエに殺虫剤をかけて楽しいか? 虫が虫として足掻くにしろ、少しは歯ごたえがあって生にしがみついてくれなければ殺す方としても退屈だ」
サタナエルは寮の部屋でアレックスにそう言う。
「君といい、アリスといい、私の周りの女性は文句が多いな。少しはエレオノーラを見習ってもらいたいよ。とは言え、そのような敵との交戦の可能性がないわけではないのだよ、サタナエル」
「ほう」
「トランシルヴァニア侯は古き血統だ。古き血統がどういうものかは、君も知っているだろう?」
「ああ。下手をすれば世界が生まれたときから存在する特異個体。化け物の中の化け物ども。そいつらと戦う機会があるとでも?」
「トランシルヴァニア侯はカミラ殿下のスパイ容疑を我々が明かしてしまうのを良しと思わないだろう。可能性としてはあり得るさ」
「それは楽しみだ」
アレックスの言葉にサタナエルがにやりと笑った。
「ま、それがないにせよ、いずれ聖騎士とはやりあうことになる。それも世界最強の聖騎士とね」
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