第十二話「戦闘空母信濃! 抜錨しますっ!」③
-----------------------------------------------------------
第十二話「戦闘空母信濃! 抜錨しますっ!」③
-----------------------------------------------------------
「さぁ、全銀河3000億人の視聴者の皆様! 楽しみに待っていただけましたでしょうか? 私、皆様おなじみ実況アナのジョニー・カンタビラ! ジョニー・カンタビラでございます! 大事なことなので二回言いました!」
いつも通りの視聴者へのご挨拶を告げると、俄然テンションが上ってくる。
私の名前は、ジョニー・カンタビラ。
全銀河向けの大テレビジョンネットワーク、チャンネル667の人気名物アナウンサーなどと言われて久しい。
今回、私は日夜人類の敵、黒船との死闘を繰り広げる人類の防人。
バトルシップガール同士の演習戦闘の実況中継を担当させてもらう栄誉を担っている。
本来は、この手の実弾演習は人知れず行われていたようなのだが……。
今回は、双方にエスクロン社とアドモス商会と言う星間大企業スポンサーが付いており、新兵器の実戦テストも兼ねるという事で、両社の意向で公開演習と言う事になったのだそうだ。
これまで、あまり表に出てこなかった彼女たちの戦いを生で見れるということで、その注目度は極めて大きかった。
そのライブ観戦チケットは、僅か一時間足らずで売り切れてしまい幻のチケットと呼ばれる有様。
この番組も我が社が独占中継している為、視聴率はうなぎ上り……これは嫌が応にでも緊張する。
「さて……本日は、ゲストとして、アドモス商会の主管エンジニア、デュラン・カドワキ氏と、エスクロン社の若き技術者エリコ・クスノキ氏をお招きしております。お二人は、今回ライバル同士と言える立場で、それぞれの艦の技術支援を担当したと聞き及んでおりますが。ここはひとつ、お二人の意気込みのほどをお聞かせください」
「ご紹介に預かりましたアドモス社のカドワキです。皆さん、よろしく……いやはや、今回は信濃嬢とフッド嬢と言う我がアドモス商会と親交篤い二人による銀河連合主力艦隊第二、第五艦隊の旗艦を勤める武蔵、ビスクマルクと言う最強戦艦ペアへの挑戦と言うことで……。この一大決戦に際し、我が社はその総力を以って支援させていただきました。」
「カドワキ氏のチームは確か、あの第610高速機動艦隊の技術支援も担当されているのですよね? かの艦隊は……先日、あの黒船の大母艦ネストグランデを仕留めると言う大殊勲を挙げ、未曾有の大侵攻を未然に食い止めたことで記憶に新しいです。やはり、あれは御社の技術に頼むところの大きい……。もしかすると、27世紀の人類の英知の勝利だったという事でしょうか? であれば、これは物凄いニュースですよ!」
「だっはっは! そうですな……我々の開発した数々の近代兵器、各艦への改良プランが功を制したと聞いております。特に、千歳、千代田に施した戦闘空母化改装は当人達からも非常に好評っ! 千歳に至っては、最後にネストグランデのセントラルコアと壮絶な撃ち合いの末、勝負を決めたのはその強固な防御力と20cm重衝撃砲の破壊力故に……でした。この20cm重衝撃砲と言うのは、20cm口径にも関わらず、近距離ならば40cm砲に匹敵する破壊力を有する新型砲であります。その破壊力はネストグランデのセントラルコアを僅か3発の直撃弾で完全に打ち砕いたと言う恐るべき威力だったそうです。彼女は軽空母にかかわらず、その戦闘力については軽空母のそれを遥かに超えた存在となったと言えますな。更に、我が社の開発した新型ゼロ戦型制空戦闘機……これの導入もすでに内定しており、第610高速機動艦隊の今後一層の活躍を期待していただいてよいかと思います!」
カドワキ氏? そこは軽く流して、まずはエリコ氏とお互い自己紹介の上でと言う話だったはずでは?
いきなりのドヤ顔、自慢話では、視聴者の皆様ドン引きでございますよ?
まぁ……押しの強い人だとは思っていたのだけど、これはこれでキャラクターとしては悪くない。
マッドエンジニア……確か、そんな表現だったかな……と思うが、まさにそんな感じだった。
けれども、得意満面と言った様子で、610艦隊の戦果を語るその言葉にはかつて無い程の自信と力を感じた。
なにぶん、これまで我々人類は彼女達バトルシップガールと黒船の戦いに、さしたる貢献も出来なかったのが現実なのだ……。
星間連合軍も伝え聞く話からは、些か頼りなく、むしろ足を引っ張っているのではないか?
そんな声すらも聞こえてきていたのですが……。
一星間企業に過ぎないアドモス商会といい、エスクロン社といい……。
人類が黒船との戦いに、大いに貢献したのは間違いなかった。
彼らは、今後の我々人類による黒船との戦いの新たなステージの象徴とも言えるかもしれない……。
とにもかくにも、ここはひとつエリコ嬢の方もフォローしなければなるまい。
「以上! カドワキ氏のコメントでした! いやはや、技術者としての熱い意気込みがこちらにも伝わってくるような力強いコメントでしたね。続きまして、エスクロン社の若きエースエンジニア、エリコ・クスノキ嬢……一言、お願いします」
「どうも、エスクロン社国、兵器開発局第3課主管エンジニアのエリコ・クスノキです。アドモス商会様の戦果報告……非常に興味深かったです。詳しいお話はそのうちじっくり聞かせていただくとして……。あの戦いでは我がエスクロン社の開発した新型エーテル空間戦闘機「Kazakami T/RY-HUR型」も大いに活躍いたしました。それにあのビッグクローラーを完膚無きまで消し飛ばした収束核融合弾も我々が開発提供したものです。610は……こう言っては何ですが、最後においしいとこを掻っ攫っていっただけなのではありませんか? 私も戦闘記録については拝見しましたが……。御社の技術が勝利を決したとはとても思えませんでしたが……これは見解の違いなのでしょうね」
挑戦的な態度を取るエスクロンのクスノキ嬢。
そんな彼女に対して、カドワキ氏も顔色を変えて、ガタリと席を立つ。
おーっと! これは場外乱闘勃発って奴ですねっ! 私は素早くカメラマンへ指示を出す。
面白そうだから続けさせる……ジャンジャン撮っとけと。
番組的には、こうやって両陣営の裏方スタッフ同士が火花を散らすと言うのも盛り上がって実にいい。
プロデユーサーもゴーサインを出している……なんら、問題なかった。
ハプニング? 予定外? ……どーんといらっしゃいっ!
「あん? クスノキのお嬢ちゃん……そりゃまた、随分と大きく出たな? こちとら、ケプラー20星系中継ステーションの戦闘記録だって、ちゃんと入手して分析してんだ。その上で言わせてもらうと、オタクの戦闘機……とんだポンコツだったみてぇじゃねぇか。現場の奴らが機転を効かせたのと、現地生産での数の暴力で、なんとか戦力になったってだけだろう? そもそも、事前演習で軽空母祥鳳の旧式ゼロ戦相手にキルレシオが1:4とかどんだけポンコツなんだって話だ。それにあの収束核融合弾も重力フィールド展開時の多重衝撃波の問題をクリアしてねぇ、未完成品を押し付けただろ? 危うく、駆逐艦一隻沈めて、大佐殿を死なせるところだったみてぇじぇねぇか……。俺も記録映像を見たが……駆逐艦が空舞って、二転三転してやがったじゃねぇか……良くあんなので無事に済んだもんだ。はっきり言って、ただの奇跡って奴だ! まったく、戦場ってもんを何一つ解ってねぇお嬢ちゃん方が慣れねぇことやった挙句、現場におんぶにだっこ! ……エンジニアが聞いて呆れるって話だ!」
「な、なんですって! このクソアニメオタク不良中年! こっちだって、あんな未完成品出すつもり無かったわよ! 大佐が勝手に無茶やったんだから、こっちの責任じゃないわよっ! だいたい、そっちだって、欠陥だらけの装備やら20世紀のアニメのアイデア平然とパクったような仕様にしてるくせに、何言ってんのよ!」
「ああん? お前、あの反転甲板式の戦闘空母がどれだけ洗練されたシステムなのか理解してねぇだろ? 恐るべきは20世紀の人間の発想力だな……600年も昔にここまで完成されたアイデアを考えつくのもすげぇが……。あの時代に作られた数々の基礎理論が今の俺達の科学技術の大本になってやがるからな。おめえらも今度、旧時代のアーカイブを発掘して見てみろや……アイデアの宝庫だぜ……ありゃ。まぁ……なんにせよ、それを実現し、実戦で使えると証明したのもまた俺達だ。わりぃがこちとらエーテル空間戦闘兵器のパイオニアだって、自負してんだ……伊達に辺境で自力で輸送艦に砲塔並べて黒船相手に実戦やってんじゃねぇんだぞ! おたくらエスクロン社も例の大佐殿と専属契約とか色々フカシてやがるみてぇが、地道な積み重ねで、ここまで来た俺達と歴然たる差がある事を教えてやんよ!」
立ち上がって、ドンとエリコ嬢を指差すカドワキ氏。
いちいちオーバーアクションなのけど、キャラクター的には実に良い。
いいぞもっとやれっ!
そんな訳で、続き。
今回、視点どうしようかと考えたのですが。
全くの中立の人ということで、実況中継アナウンサー目線と言うなんとも斬新なものとしました。(笑)
なお、アナウンサーの口調などは、プロの実況と解説シリーズのようなノリを目指してます。
あと今回はちと小分けにしてます……いまいち、区切りのいいとこが無かったので……。
と言うか、カドワキ……お前、ネームが長いよ。(笑)
もしかしたら、本日中にもう一度更新するかもしれません。




