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宇宙(そら)駆けるは帝国海軍駆逐艦! 今なら、もれなく美少女もセットです! 明日の提督は君だっ!  作者: MITT
第一部「来訪者」

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第十話「決戦! 彼の者の名は」④

「大佐……ここまでは順調に来れましたね。」


「いや、まったくだ……タシュケント君達や永友少佐の艦隊が上手く敵の注意を引きつけてくれたようだ。それにしても、マラート君……君なら遠隔で機銃操作やコパイロット役くらいは出来るだろうに……。わざわざ、後部座席に同乗するなど……艦体の方は問題ないのかね?」

 

「どのみち、マラートの速度では、戦場に間に合いませんでしたからね。留守番してるくらいなら、大佐と共に戦わせていただきます……確かに乗る必要はないんですけどね。気分です……気分!」

 

 そう言いながら、何とも気分が良いと思っている自分に気づく。

 

 今の私は、大佐のスツーカの後部座席にパイロットスーツを身に纏い共に空を翔ける身。

 空を翔ける……なんと素晴らしい……もっと早くこうするべきだったと心から思う。 

 

「君もなかなかに酔狂だな……だが、無事戻れる保証は無いぞ……なにせ、時間がなかったからな……。予定よりもはるか手前で発艦した以上、スツーカの航続距離では、マラートまでは戻れんな……。それに永友少佐の艦隊には囮役を押し付けてしまった。この状況では、向こうの空母も無事に済むとは思えない……最悪、片道切符の不時着になるだろう」

 

「……だからこそ、無理言って、着いてきたんです。それくらいは織り込み済みです……このスツーカも不時着しても、数時間は持ちこたえられるように改良してますから……きっと何とかなりますよ。それより、大佐……敵機が上がってきましたね……もう少しだったんですが……気付かれてしまったようですね」

 

「ああ、お出迎えのようだ……だが、些か気付くのが遅すぎたな……ここは一気に突破するぞ。言っておくが、途中で気を失うなんてのは勘弁してくれよ……ちょっと無茶をするぞ!」

 

「誰に言ってるんですか? タシュケントから情報連携来ました……。もうメチャクチャですね……周辺の戦術マップはもう敵のマーカーがいっぱいで、何がなんだか解りません」

 

 そう言いながら、背後から迫りつつあったスティンガー級に機銃を浴びせ、撃破する。

 大佐も無造作に正面機銃のヘッド・オンで、正面から向かってきていたボクスターを撃墜する。

 

 背後に回り込んだ別の機体が銃撃を仕掛けてくるのだけど、大佐は軽々とスツーカを回転させて、後ろに目がついているかのような機動で回避……オーバーシュートさせたところへすかさず私が銃撃を加え、また一機血祭りにあげる。

 

「この程度、東部戦線ではいつもの事だったよ……ふむ、いつもの自動銃撃より精度が良いじゃないか。やはり、直接銃を持った方がやりやすいのかね?」

 

 話をしながらも、流れるような空戦機動で、迫りくる敵機を次から次へと避けていく。

 

 これがエースパイロットの世界……遠隔でモニターするのと、直に体験するのでは、訳が違った。

 でも、恐怖はなかった……むしろ、心躍りワクワクする……いつまでもこうしていたいくらい……。

 

「そうですね……遠隔操作だと、どうしても極僅かながらタイムラグが生じます。けど、こうやって直接銃を握ってとなるとラグなしですからね……。それに、私もれっきとした戦艦ですからね……演算力をフル活用すれば、敵機の未来位置なんて手に取るように解ります。大佐、もっと褒めてもいいんですよ?」

 

 そう言いながら、更に背後の敵機に更に銃撃を加えると、敵機は姿勢を崩して、高度を落としていく……。

 今の一連の空戦で、5機は確実に落とした……鈍重なはずのスツーカが踊るような動きで、軽々と速力で勝る敵機を手玉に取っている……。


 数千回も出撃し、一度たりとも敵機に落とされた事はなかったと言われるほどの空戦技量。

 

 この人は……本当に凄まじい……。

 

「はははっ……戦場で冗談を言えるくらいでなければ、私の後席は務まらんのだが、君には十分その資格があるな……さぁ、そろそろ敵艦上空だ。急降下で一気に決めるぞ! おっと、その前にパーティ終了の知らせをせねばな……全域通信を繋いでくれたまえ……マラート君」

 

 大佐の指示通り、無線を全域モードに切り替える。

 

「……本作戦参加中の全機、全艦に告げる……これより、私は敵艦への急降下爆撃に移る。弾種は、収束核融合弾……半径5kmは軽く吹き飛ぶそうだ……投下後、起爆まで5分間の猶予がある。現時点で直ちに現海域より出来る限り遠くへ離脱せよ……繰り返す、直ちに現海域より離脱を図れ……! ここまでの道を作ってくれたことに誠に感謝する……では、行こうか! マラート君!」

 

 一瞬の浮遊感のあと、頭上にエーテルの海が広がったかと思うと、視界は一面のエーテルの空に変わる。


 ジェリコのラッパが鳴り響く……。

 

 今頃になって、巨大戦艦の対空砲火が周囲に炸裂し始める。


 駆逐艦や爆撃機の攻撃で、敵艦はもはや満身創痍……その砲火は話にならない程度のもの。

 

 生き残っていた護衛艦の対空砲火!


 機銃弾の砲火がすぐ真横を通り過ぎていき、バンっと言う金属音とともにスツーカが一瞬安定性を失いかけるが、すぐに安定する……それに対空砲火も止まる!。

 

「ほぉ……この期に及んで、援護射撃……それも護衛艦を一撃で黙らせるとは……向こうにも中々の手練が居るようだな。うん、被弾したようだな……さすがに、無傷とはいかんか……マラート君、問題はないかね?」

 

「燃料タンクに被弾しましたが……問題ありませんわ。……燃料カット、防漏機構作動……委細問題なしです。降下、続けてください!」


「さすがスツーカ、上出来だ! ……ここだ! 投下っ……今っ! 機体を引き起こすぞっ!」


 再び、浮き上がるような感覚とともにサイレンの音が止み、ヒュルヒュルと言う爆弾が空を切る音が遠ざかっていく。

 

 巨大なビッグクローラーの甲殻の上で、軽い爆発が見えた……確か、着弾時に一度成形炸薬が起爆し穿孔を穿ち、そこへ本命の核融合弾が敵艦内部奥深くへ撃ち込まれ、停止……然るべき後に起爆。

 

 そのように聞いていた……あの爆発の時点で、爆撃は成功と言うことだった。

 

「大佐……直撃です! 火柱が立つのが見えました! ……直ちに離脱を!」


「ふむ……派手さはないが、すぐに起爆されるとこちらも吹き飛ぶからな。進路を味方艦隊の方へ向けるぞ……そう言えば、タシュケント君達は、どうなったかな?」

 

「タシュケント達はすでに反転離脱中……敵主力と反対側のマラートの待機位置側へ向かっているので、おそらく逃げ切れるかと。むしろ、こちらが問題です……先程の被弾で燃料漏れが発生……漏出自体は止まりましたが……相当量の燃料を失ったので、この調子では味方の空母までは持ちませんよ?」

 

「そうか、まぁ……仕方あるまい……味方へ救難信号を送れ、少なくとも安全圏くらいまでは、ギリギリ持つだろう? いいかね? いついかなる時も諦めてはいかんぞ……私は諦めが悪いのだ……さぁ、帰るぞ!」


「私もですよ……大佐! でも、この分だとギリギリでしょうね……。艦隊へ向かうとなると……敵機群が今頃、こちらへ戻って来ているようですので、それと鉢合わせしますが……どうされます?」

 

 前方に黒い雲のような敵編隊……こちらを捕捉したようで、続々と集結し攻撃態勢に入ろうとしていた。

 

「まったく……今更、戻ってきても手遅れだということが解らんのか? まぁ、奴らに知恵なぞある訳がないが……やむを得ん! ここは真正面から強行突破するぞ! む……なんだと?! 対空砲火だと? この状況で、まだ援護を続けてくれる味方がいると言うのか?」

 

 敵編隊めがけて、下からの砲撃……集結中を狙われた敵機の編隊が算を乱したように散り散りになる。

 

 見ると離脱していく永友艦隊の一隻が反転し、こちらに向かいながら、援護射撃をしてくれた様子だった。


 単騎で無茶をすると言いたいところだが……この場面での助勢はありがたい!

 

「大佐……当艦初霜は、殿として、全ての味方の離脱援護を致します。敵は混乱しています……今のうちに一気に突破を!」

 

 その駆逐艦からの通信だった。

 彼女からの情報連携リクエスト……受諾すると、先方からの情報が雪崩込んでくる。

 

「ありがたい! だが、君も早く離脱したまえ……どの程度の爆発になるか……まったく予想出来ないのだ。私は味方を犠牲にしてまで、生き延びるような趣味はない……直ちに反転離脱したまえ!」

 

「わたしも不沈しずまずの武勲艦と呼ばれた艦ですよ? この程度……死地のうちにも入りません。そちらこそ、急いでください。収束核融合弾……エーテル空間での使用実績はありませんが……わたしの持つ実験データによると、衝撃波だけで、その機体が持たないと判断しています……なんとか、本艦まで逃げ切ってください」

 

「大佐……彼女の言うとおりですね……追加装甲、フローティングユニットをパージします……。これで速力が稼げます……ちょっと無茶をしますが……大佐、私に命を預けていただけませんか?」

 

 彼女から提示されたのは、こちらの救出プランだった。

 なかなか無茶なプランだったが……複数のプランの中で、大佐が生存できる可能性が一番高いのがそれだった。

 何と言っても、私の頑張り次第という点が気に入った。


「まったく、どいつもこいつも好き好んで死地に臨みたがるとはな……私も大概だが……君達も大概だな。良いだろう……君達が何を企んでいるのか知らんが……マラート君、私の命……君に預けよう」


 エーテルの海にプロペラを叩きつけんばかりの超低空飛行で突き進むスツーカ。

 敵機は射撃ポジションを取れないどころか、勝手にエーテル流体面に接触して自滅していく。

 

 初霜の艦体がみるみる大きくなっていく……追いすがる敵機も次々、その正確極まりない対空砲火の前に落とされていく。


 タイミングは今、大佐がこちらの指示通り、機体を引き起こすのと同時に爆発ボルトを起爆し、風防をパージ。

 

 私は、前席の大佐の襟首を引っ掴むと、初霜を追い抜きざまに、諸共に機体から飛び降りる!

 

 大佐を抱きかかえながら、甲板へ着地……とは行かず、半ば叩きつけられながら、大佐共々ゴロゴロと転がり、艦橋へぶつかってようやっと止まる。

 

「……まったく、乱暴なのも程があるな……これでは命がいくつあっても足らんよ。生身だったら、軽く即死していたよ……片手と片足が動かんが……手足の一本や二本、安いものだな」


「文句が言えるくらいなら、問題ないでしょう? 見てください……あれを!」


 ちょうど、起爆時間に達したようで、閃光と共にはるか遠くに巨大なきのこ雲が立ち上り、直後に逆回しをしているようにきのこ雲がみるみる縮んでいった。

 

「敵艦消滅! 重力フィールドの展開を確認! ですが、衝撃波が来ます! 到達予測……30秒後! 急いで中に! 外は危険です!」


 初霜からの警告、問答無用で大佐を艦橋へと押し込むと、私も続く。

 

「大佐は耐爆防御姿勢を……マラートさんは手近なものに掴まって、大佐が飛ばされないように抑えておいてください」

 

 大佐も理解しているようで、壁際によると口を開けて両耳を押さえて、手足を丸めてうずくまる。

 私も艦橋の手すりを握ると、大佐に覆いかぶさるように伏せる。

 

「……来ますっ!」


 初霜の言葉の直後に、艦体が浮き上がるような感触。

 

 嵐の中の小舟に乗っているかのように、グルグルと回り、上下すらも解らなくなるほどの凄まじい揺れ。

 けれども、初霜は懸命に姿勢制御に努めているようで、艦体は持ちこたえていた。

 

 果てしなく続くかのような揺れは、やがて唐突に収まり静かになる……。

 

「……す、凄まじい衝撃波だったな……。爆風自体は抑えられても、衝撃波は止められなかったと言う訳か……確かにスツーカでは、木っ端微塵になっていたな……。まったく、未来人共め……欠陥兵器を寄越しよって……。マラート君、そろそろどいてもらえないかな……私なら、大丈夫だ……」

 

 大佐の声が聴こえる……全く元気な人だった。

 と言うか……未来人達は全力で止めようとしていたと思ったのだけど……何とも理不尽な話だった。


 艦橋へ続く階段を登り、こちらが顔を見せると初霜が安堵のため息とともに、へたり込む様子が見えた。


 彼女に大きな借りが出来てしまった……。


 私は……と言うと、気を抜いた瞬間、ブワッと涙が溢れてしまい。

 思わず、大佐の胸に顔を埋めてしまう。

 

「……やれやれ、気を抜くのはまだ早い……と言いたいところだが。君達のお陰で命拾いした……初霜君、敵はどうなったかね?」


 大佐の手が私の頭に置かれる……あ、これいい感じ。

 

「……あ、はい……大佐、腕とか足が変なふうに曲がってるんですが……それ、大丈夫なんですか?」


 初霜が震える声で返してきた。

 着地の時だと思うのだけど……さすがに、大佐も無傷では済まなかったようだった。


「問題ない……この程度、気にするな……私もバイオサイボーグ体だ。幸いちゃんと利き腕は動く……例え、手足が千切れようが戦うのに支障はない。むしろ、そんな事はどうでもよろしい……戦果報告をしてくれ給え」


 平然と答える大佐に、さすがに初霜が呆然としながら、助けを求めるような視線をよこす。


 歴戦の武勲艦すらも困惑させる大佐……。

 ごめんね……大佐は止まらないのよ……むしろ、止める方法があるなら、教えてください。

 

 私は力なく首を横に振る……初霜も何とも微妙な表情をするのだけど、どうも考えるのを止めたようだった。


 たぶん、それが良いと思う。


「えーっと……電磁パルスの影響で、電探は真っ白ですが……少なくとも目視できる範囲の上空の敵機群は壊滅……。ビッグクローラーも消滅しました……敵侵攻艦隊は文字通り全滅、我が方の勝利です……お疲れ様でした。大佐殿……我が艦隊司令の永友提督から通信です……繋ぎますね」

 

 向こうの祥鳳経由から、艦隊の被害報告が回ってくる。

 私の艦体マラートはタシュケント達の遥か後方……問題ないらしいが……。


 駆逐艦群は無事な艦はタシュケント達を含めて一隻もなし……いずれも小中破……初霜も兵装の半数を消失し……大破、自力航行も怪しいらしい。


 空母は無傷ながら、その艦載機群は、両艦合わせて直掩機の20機余りの戦闘機と僅かな攻撃機と爆撃機を残して全滅したようだった。

 

 艦隊の戦闘力は五割以下まで低下との評価だった。

 

「よしっ! マラート君、休んでいる暇はないぞ! 続いて、敵の本拠地攻めだ! 祥鳳君から、日本の99式を拝借させてもらう事で話がまとまった……初霜君、悪いが……このまま祥鳳まで送っていって欲しい。諸君、戦いはまだまだこれからだ! 往くぞッ!」

 

 まったく……この人はなんなんだろう?

 ……死ぬような思いをして、こっちが命懸けで守っても、結局こうなるのね……。


 流石に呆れ返りながらも私は……。

 

「かしこまりました! こうなったら、最後までお供します!」


 ……気がつくとそんな風に返していた。


 私も大概、酔狂だった。

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