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第五話「Operation Bite The Dust」⑤

 なにせ、各提督には、その行動や言動を記録するモニタリングシステムってのがあるのだ。

 

 要は、良からぬことを企まないようにと言う反乱防止システムなんだけどね。

 

 それは再現体の電子脳に直結されていて、その行動や言動を全てモニター記録する……そう言うシステムなのだ。

 もちろん、業務時間外はプライバシーモードに設定して、モニターをオフには出来るのだけど、オフにしている間の記録自体はサルページしようと思えば出来てしまう。

 

 まぁ、アタシ的には、とっても気分の悪い代物だった。

 一応、乙女ですので……色々問題あるに決まってる。


 実際、数少ない女性提督達には、超不評だった……第3艦隊のカズミ・シュリーマン提督辺りなんか、もう会うたびに愚痴ってた。


 当然、今はそんなもんは撤去済み……ザマミロ。

 

 それはともかく、今回、グエン提督や永友提督に関しては、そのモニタリングシステムを事実上無力化することを告げた上で、協力してもらっていた。

 

 二人は、辺境の独立艦隊の提督なので、中央艦隊ほどその監視の目は厳しくなく、月に一回モニタリングデータをまとめて中央に提出すると言う割と杜撰な管理体制が敷かれていた。

 

 なので、その情報改ざんもアタシらであれば、容易に出来てしまうのだ。

 

 けれど、中央艦隊の提督ともなると、その周辺セキュリティは極めて強固。


 その言動を記録されるだけに留まらず、一人一人に担当監視官が付いて、業務中は執務室に設置された監視ユニットによって、ほぼ24時間遠隔モニタリングされている。

 

 ちょっとでも反乱を匂わせる言動があろうものなら、昔だったらBDSが派遣されてたようだけど、今だともしかして、アタシらの役目なのかな? それ。

 アタシなんかが、反乱を企む提督の所に派遣されたら、そりゃもうとっくりお話し合いして、仲良くするところだなぁ。


 まぁ、その辺、どうなるか解らないのが実情なので、第二艦隊の司令、北上提督については、今の所ノータッチが正解。


 と言うか、銀河連合軍もその暗部については、アタシも顔を知らないお仲間が順調に駆逐してるらしいので、中央艦隊の縛りもそのうち緩くなるんじゃないかな?

 

 どう考えても、こんな大戦力を置物にしてるとか、馬鹿すぎる。

 戦力なんて使ってなんぼ、それを使わないとか、まるで、旧帝国海軍の如し愚行だ。


 ……そんなだから、シュバルツ程度の小勢に舐められるんだっての。


「助かります。全く、信濃もこんな秘匿回線をこっそり作っていたとは、実にありがたい援軍ですよ。北上提督に関しては、貴女から差し障りのない範囲で、お伝え下さい。言いたい事は解りますね?」

 

「ああ、中央軍所属の諸提督の事情は、私も良く解ってるからな。本当は、北上提督も君と直に話したがっていたのだが、やむをえん。……うん、ここだけの話をさせてもらうが。どうもそちらは情報を自在に操って、本来実弾演習をやってる事になってる艦隊を、戦場に動員出来たりもするみたいじゃないか。良ければ、我々を使ってもらってもいいのだぞ? うちの提督もこんな中央で燻ってるのは不本意らしくてな……。実を言うと、私もこんな派手な戦で暴れられる信濃達を羨ましく思っている。我々は君達のように裏で動くなんてのは、とんと縁がないのだが。実は君の噂は色々聞いていた。今後、是非力になりたいから、我らの事、覚えておいて欲しい」


 状況は信濃から聞いてるはずなんだけど、羨ましいと平然と言い放つ辺り、この武蔵ってのも大概だな。


 北上提督は……。

 割と可もなく不可もない真面目な人って聞いてるけど。

 

 日本系艦の選りすぐり艦隊、第二打撃機動艦隊の指揮官。

 粘り強い戦いぶりと、堅実な作戦に定評がある少し影のあるイケメンだった。

 うん、イケメン……ここ重要ね。

 

 そして、その傘下の艦隊も大戦艦武蔵を筆頭に、戦艦伊勢、日向、空母蒼龍、飛竜と言った名のある艦艇群が居並ぶ銀河連合軍随一の艦隊。

 

 味方となれば、頼もしいなんてもんじゃない。

 実戦経験を積んで欲しい艦隊ではあるので、今後のためにも色々と考えておくとしよう。

 

「ありがとうございます。何のことやら解りませんが、機会があれば、そのうち。まぁ、どうせこの薄氷の平和もこれで木っ端微塵になりますよ。そうなれば、あなた方も忙しくなるでしょう。ひとまず、今回の後方情報支援……お願いします。なぁに、上にはバレないように、こちらも手配いたしますので、ご安心を」


「ああ、それは任せておけ。すでに、主要各艦は、情報連結の上で君達の情報支援体制に入っている。ちと、電力をバカ食いすることになるだろうが、ちょうど定期ジェネレーターフル稼働テストの予定が入っていたのでな。前倒しにすると言ってあるから、そこはどうとでもなる。言っておくが、我々は君の味方だ……これだけは断言しておくよ。もちろん、うちの北上提督もな」


「……心からの感謝を」


「ああ、貴官の健闘を心より祈る。なかなか厳しい戦のようだが、勝利の女神とは諦めが悪いヤツにこそ、微笑むものだ。君はなかなか諦めが悪そうだ……。幸い我が妹もいるのだ、あれのしぶとさも大概だからな! なぁに君たちなら必ず勝てる! 生きて帰って来いよ! そうだ、うちに来る時は日本酒でも手土産にするといい。北上提督はアレで意外とイケる口でな。私も酒は好きだ……互いの武勇伝をツマミに一杯やるのもなかなかオツであろう?」


「ありがとうございます。解りました。そう言う事なら、天然物の大吟醸でも持参するとしますよ。それではいずれ……また」


「うん、それは実に楽しみだ。武運を祈るぞ!」


 武蔵との通信が切れる。

 ははっ、手土産持参で遊びに来いと言われてしまったら、行くしか無いか。

 

 ついでに、第二艦隊の司令部にバックドアでも仕掛けとけば、情報改ざんもやりたい放題になる。

 そうすれば、あの艦隊もだいぶ、身動きがしやすくなるだろう。

 

 実弾演習……全く、実に都合のいい隠れ蓑だ。

 今後も大いに活用させていただこう。

 

 この調子で、中央艦隊の各司令部とコネとバックドアを仕掛ければ、あの大戦力すらも自在に動かせるようになる。

 そうなれば、セカンドのアカやナチス共も鎧袖一触、黒船共諸共二つの宇宙から消し去るのだって、不可能じゃない。

 

 まぁ、いずれにせよ、ここから無事に戻れたら……の話だけど。

 

「さすが、提督。向こうも思った以上に好意的のようでしたね。提督って、意外と色んな人から好かれてるんですね……。では、各艦準備も出来たようです。後は提督の号令を待つばかりです……いつでもどうぞ」

 

「解ったよ……天霧。では、名付けて「Operation Bite The Dust」実施を下命する! 総員、かかれっ!」


「了解しました。それってどう言う意味なんですか?」


「地べたに這いつくばって土でも噛んでろ……そんな感じだったかな? 嘲りの言葉だよ。あとは、戦争で死ぬとか、負けるとか、機械が故障するなんて意味もあったかな」


 うん、我ながら素晴らしいネーミングだ。

 是非、カイオスの野郎に、面と向かって言って差し上げたい言葉だ。


 野郎のニヤケ顔を引っ掴んで、地面とキス。

 きっと、笑いが止まらないだろう……思わずサディスティックな笑みが溢れる。


「なるほど、カイオスの秘策を食い破り、地べたに叩き落とす作戦……そう考えれば、なかなか悪くないネーミングですね。では、「Operation Bite The Dust」開始します! 各駆逐艦相互ダイレクトリンク接続確立、各ソノブイも所定位置に投下致しました。全空母との統合リンク網確立中、後方演算リソースも必要値を超えました。第二艦隊各艦へ音響解析ドライバの共有完了。統制ピンガー準備よし、打ちます! 3、2、1……ゼロッ!」


 ……同時100箇所での統制ピンガー。

 

 ここには何も伝わってこない。

 けれども、そこから得られた情報の洪水。

 

 限度ってものを知らないほどの膨大な量のアクティブソナーの一斉放射……そして、得られたノイズだらけの情報を後方第二艦隊の大型艦総出での解析。

 

 これらが一瞬で行われた。

本日は、二本立て!

スピンオフ作品の「宇宙きゃんっ!」もよろしかったらご一読を!


下の方にクリックするところがあるじゃろ?

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