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第三話「艦隊編成」②

「島風、実は問題ないって知ってた。ごめん、ちょっと確認したかっただけなんだ」


「ふふっ。私が何処まで解ってるかって、試したかったんでしょ? まぁ、漫然と航行してても、別に問題ないって解ってはいたけど、道中警戒は一切怠ってないから、安心してね。こうしてる今も、千歳、千代田から索敵機を出してるし、各艦定期的に流体面下スキャンで対潜警戒もやってるわよ」


「さすがだね……島風。敵地において油断なしってところか。とにかく、うちの後方スタッフや協力してくれてるAI君達は、皆、優秀だからね。この作戦の後方支援は実に手厚い。少なくともこっちの世界で情報戦となると、我々に分があると思っていいよ。もっとも、今の課題としては、セカンド側への情報網の確立ってところなんだけどね。どうにも向こう側の情報が圧倒的に足りてないってのは、やっぱり問題だよ」


「なるほどね……。確かに桜蘭ですら、シュバルツの情報ってのはあまり多く持ち合わせてない。遥君の話を聞いていると、対人類戦ともなると情報の重要性が、黒船相手の戦いとは比較にならないほど、重要みたいだからね。敵を知り己を知れば百戦殆うからず……だっけかな?」


 アタシらの話を聞いていた永友提督が、口を挟んでくる。

 うん、情報の重要性については、永友提督もよく解っているようだった。


 この人って、最前線に置くよりも、後方で前線を取りまとめる後方指揮官タイプなんだよね……。

 割と独自の情報網みたいなのや、幅広い人脈をコツコツと作ってるみたいだし……意外と軍司令官とか、政治家に向いてるのかもしれない。


「まさにそれですね。可能であれば、桜蘭側とも色々情報交換や、出来ることなら、合同の情報機関くらい作って、相互協力体制や、あちらさんの情報網を強化しておきたいところなんですが……。なかなか、繋ぎがないし、今の所通信手段も限られていて、なかなかどうして難儀しているところです。その辺、実は永友提督に期待してたりもするんですが、どうですかね? いい窓口があったりしませんか?」


「確かに、そうかもしれないね。一応、向こうの艦隊総司令のクルギ提督とは懇意にしてるから、良かったら話を通しておこうか? 向こうも、こちらの情報は欲してるみたいなんだけど、こっちの世界の諜報関係者なんて、これまで全然表に出てこなかったからねぇ……。そう言う事なら、遥くんを銀河連合の諜報関係者って事で紹介すれば、お互い悪くないかもしれないね」


「それはいい話ですね。そこはぜひよろしくお願いします。桜蘭も、無茶をやる馬鹿共が一掃された事で、比較的付き合いやすい相手になってますからね。今後も色々と仲良くしたいところです。カドワキ氏も技術情報交換会を開いたり、かなり積極的に動いていたようですし……。中央としては、セカンドのことは一般的には内密に……とかやってましたが、もうシュバルツ、ウラルの進出で公然の秘密みたいになってますから、桜蘭との交流もオープンにして、もっと民間レベルに門戸を広げたって良いと思うんですよね」


「なるほど。実際、向こうも人材交換プログラムの提案とか、こちらとの交流は色々、積極的にやりたいって言ってたからね。けど、銀河連合のお偉いさん達は、シュバルツの連中にはむしろ嬉々として、侵略じみた真似すら、受け入れてるのに、桜蘭の方は一時期に比べると、どうにも消極的なんだよなぁ……。それに、私が現場から離れてる間に、色々あって、桜蘭もこっちの中央への不信感を抱きつつあるみたいなんだ。なんなんだろね、この温度差は……」


 諸提督の中で一番桜蘭に近いと言われる永友提督だけに、やっぱり色々情報持ってるなぁ……。

 この戦いを制したら、こっちは一息つける位には情勢が安定するはずだから、次はセカンド側へって考えてるから、これは是非話を進めてもらわないと。

 

 しかし、確かになんで同じセカンドの国なのに、ここまで対応の温度差があるのか。

 可能性として、シュバルツがこっちの上層部にまで食い込んでる可能性……どうも、これは否定できそうもない。

 カイオスによる永友提督の暗殺未遂の件だって、後任に使えないヤツを送り込んで、派手にかき回してくれたし……あの時のアタシに、今くらいの力があれば、何とでもなったかもしれないけど、あの頃はアタシも辺境の駆逐隊の司令なんて、立場だったから、後手後手に回ってしまった。


 中央の腐れ政治家共との戦い……これはどうも、避けられそうもない。


 ……まぁ、そっちは爺様達に任せよう。

 海千山千の狸共の相手なら、こっちも海千山千の鶴亀連中に任せるに限る。

 

 あの爺様達も人生最後の華を咲かせるとか言って張り切ってたからなぁ……。

 

「まぁ、アタシらは中央のお偉いさんの意向とか、関係ありませんからね。クルギ提督には、諜報関係者って肩書で紹介してもらって結構ですから、お願いしますね。ついでに、桜蘭の地上世界の観光とかも出来たら、いいんですけどね……」


「解った……そこは任せておいてくれ。ただ私も向こうの地上世界には、一度も上陸させてもらってないから、地上世界の観光ってのは難しいかもしれない。あの様子だと、あまり見せたくないのかもしれない……。けど、向こう側の慰問船とか言う移動ショッピングモールみたいなのは見せてもらったよ。売ってるものとか、文化的には、こっちの日本系の地上世界なんかと、あんまり変わりなかったね」


「それは、むしろ興味深いですね。どのような雰囲気でしたか? 売ってるものとかも見れたんですよね。アタシもこっちの地上世界には、あまり縁がないので、あまりピンと来ないんですが……」


「そうだね……。君に解るように例えると、むしろ、21世紀の頃の日本のショッピングモールみたいな感じって言えば解るかな? レストランや喫茶店や、屋台みたいなのもあって、普通に美味しいものがたくさん売ってる。洋服やら雑貨やらが並んでて、女の子たちや家族連れが買い物してたりしてて、なんとも平和的だったよ。そうそう、桜蘭って意外と食材のレベルが高いんだよね……。当然のように天然小麦や天然のジャムやクリームを使ったクレープなんかも売ってて、それも格安だったから、びっくりしたよ! 人口が少ないって話だったから、合成品で数を揃えなくてもなんとかなってるみたいなんだ。そこはちょっと羨ましかったな……」


 おおう、永友提督の話……話、聞いてるだけで、値千金の情報の山だよ……これ。

 くっそー、もうちょっと早く永友提督から、色々話聞いとけばよかった。


 永友提督って、中央からは要注意人物扱いされてるから、直接接触は出来るだけ、避けてたんだけど……これは、失策だったかもしれない。


 たぶん、アタシならその慰問船ってのをグルって回るだけで、相当な情報を仕入れることが出来そうだ。


 けど、ショッピングモールかぁ……。

 ああ言うのって、アタシみたいなボッチ属性には、地味にハードル高い。


 買い物なんて、通販サイトで十分……とか嘯いてたけど、友達と楽しそうにショッピングモール巡りとか……。

 洋服選び合って、美味しいもの食べて、キャッキャウフフ……。

 

 すみません……ホントは、ちょっとは憧れてました。

 ……ううっ、頭がっ! か、過去のトラウマがっ……。

 

「わ、解りました……。なるほど、それくらいなら、堂々と公開してるって訳ですね。地上世界を見せたがらないってのも、桜蘭もそれなりに防諜に気を使ってるって現れでしょうね。優秀なエージェントなら、民生輸出品のサンプルや港湾施設を散歩する程度で、軍事技術レベルやセキュリティレベルの当たりは付けられますからね。実際、シュバルツの奴ら、こっち相手の金儲けに味をしめて、こちらに軍需物資の横流しを始めたりしてるんで、おかげで向こうの技術レベルの推測が出来てたりするんですよ」


 まぁ、正確には民間業者に偽装したうちの関係者が、シュバルツの軍人に賄賂と引き換えに、横流しさせた物資とか、ぶち殺した敵兵の装備品やら、撃沈した艦艇の残骸。

 

 そんなものから向こうの技術力や工業生産力、食糧生産能力や推定人口、国力を推測してるってところなんだけどね。

 

 ……今の所、シュバルツってのは、意外とショボいってのが解ってる。


 こちらの集めた情報を取りまとめた限りだと、セカンド各国の国力差としては、ブリタニアが頭一つ抜きん出てて、次点でウラル、桜蘭、シュバルツって感じらしい。

 

 比率的には、4:3:2:1……これが推測されている、各国の国力比だった。

 ……実際は、シュバルツと桜蘭の差はそこまでもなく、4:3くらいらしいのだけど。

 

 これに銀河連合を加えると「100:4:3:2:1」となる。

 もちろん、ひとつだけおかしい数値なのが、我らが銀河連合だ。

 

 その差の前には、そのような格差もはや、誤差レベルだろう。


 銀河連合の国力は圧倒的だ……桜蘭も当初は、やる気満々だったのに、手のひら返して、仲良くしましょうと言う路線に走ったのは、この圧倒的な国力差を実感したと言うのもあるだろう。


 シュバルツやウラルが和平を結んだ上で、コソコソと実効支配領域を広げるってやり方で正面切って戦おうとしないのも当たり前で、その上で銀河連合を分断、弱体化する事で、勝機を見出そうとしている。


 要するに、セカンド相手の戦いなんて、本来、どの勢力が相手だろうが、タイマンで戦う限り、相手にならない。

 

 もっとも、戦いが国力だけじゃ決まるなら、誰も苦労はしない。


 実働戦力の比較となると、「10:5:3:3:2」……銀河連合を10とすると、こんな割と現実的な数値となってくる。

 順番としては、「銀河連合:ブリタニア:桜蘭:シュバルツ:ウラル」となる。


 国力比と軍事力比が、正比例していないのは、いくつかの理由があるのだけど。

 その実現性の可否はともかくとして、セカンドの全戦力をかき集めると、銀河連合を上回る事になる。

 

 銀河連合軍も、その戦力はとにかく薄く広く配備されている上に、基本的に防衛軍的な性格が強いので、セカンドへの逆侵攻となると、もうドクトリンから兵站まで、あらゆる分野の見直しが必要なレベル……。

 

 対人類艦戦闘も手探り状態で、装備も戦術も慌てて研究しているような段階なので、その国力からすると、侵攻に使えるようなレベルで、かつ防衛に支障を来さないフリーハンドな戦力となると、意外と少ない。

 

 セカンドの情勢については、どうも黒船が派手に暴れてるのは、ブリタニアと桜蘭に接するデルクリア大海とそれに接するエリア……。


 やはり、あの黒船共の最大拠点が、やはり一番のガンになってるみたいで、そこから湧いて来る個体が多数……文字通り桁がおかしいくらいの戦力が集結している。

 

 そいつらの相手をしているうちに、ブリタニアや桜蘭はそれなりに鍛えられたようで、当初の桜蘭の技術力はこちらを上回っていたほどだった。


 ブリタニアについては、解らないことも多いのだけど、桜蘭とは友好的な関係だったようで、英国王室の血を引く王家と、民主的に選ばれた実務を取り仕切る大統領を頂点とする政府による、二重権力構造の政治体制を取っているらしい。

 

 21世紀で近いものとしては、日本……それも天皇家の権限が強くなった……そんな感じの国体を有しているようだった。

 

 向こうのエーテルロードの各地にもボツボツと拠点が点在してて、シュバルツやウラルは、二番目の規模の大規模拠点と接しているようなのだけど、デルクリア程のチートレベルじゃないので、それなりに何とかなってるらしい。

 

 おまけに、エーテル空間戦闘艦は、向こうもこちらと同じく、第二次大戦中の実弾無誘導兵器系軍艦ベースと言う縛りがある関係で、当時の戦力の力関係がそのまんま反映される。

 

 アメリカ、イギリスのUSN、RN系が質、量でぶっちぎりってのも同様。

 んな、二大海軍国連合なんてチートだろう……なんで、そんなのを抱えておきながら、ブリタニアも色々グタッてるんだかなぁ……。

 

 日本……IJN系もUSN系と比較すると、見劣りするものの、そりゃ比較対象が悪いって話で、RN辺りと比較すると、同等レベルと、かなり層が厚い上に、質も悪くない。


 ……実際、銀河連合艦隊でも、有力艦隊では、日本系艦艇が最大勢力と言ってもいい……。

 

 この海洋国家シーパワーズ御三家に比べると、ドイツ、フランス、ロシアなんてのはあからさまに見劣りする。


 なにせ、アイツらって、所詮陸軍国ランドパワーズだからねー。

 スペック的にはどれも悪くないみたいだけど……実際は、どこも割と微妙だったらしい。

 

 多少歴史が違っても、海洋国家ってのは総じて海が強いけど、陸軍国の海軍なんて丘に上がった河童みたいなもんで、どうやっても見劣りするってのが実情なのだ。

 

 まぁ、いずれにせよ……シュバルツなんて、一番の小物。

 こっちの世界に進出してる連中は、それなりの精鋭らしいけど、こちらの戦力の向上もあり、様々な事情で弱体化しているのが実情。


 ウラルは、技術も国力もそれなりに高いようなのだけど、とにかく物量、質なんてどうでもいいと言うドクトリンのせいで、エーテル空間での戦いとなると、まぁ……雑魚をいっぱい作って、数で勝負って感じ。

 黒船の技術を流用した黒船モドキが主力なもんで、その戦いは毎度毎度、物量頼みの消耗戦。


 頭脳体による戦闘艦と比較したら、まぁ、勝負にならないってのは目に見えている。

 そんなのに良いようにかき回されてる時点で、銀河連合もポンコツすぎるって話だった。

 

「普通にそこらで売ってるような物を見るだけで、その国の技術力が読まれるとか……。諜報の世界って、そんなものなんだ。……しかし、そうなると君らの情報戦能力は大したもんだね。今、「我々」の実弾演習のTV中継を見てるところなんだけど……。これってチャンネル667まで、今回の作戦に協力してるってことだよね?」


 横目でTV中継の画面を見ると、今日もジョニー・カンタビラ氏がノリノリで実況解説をやってるところだった。

 今はまだ、始まる前だから、両艦隊指揮官のコメントやら、双方の艦艇紹介コーナーみたいなのをやってる。

 

 これ普通に見てる分には、めっちゃ面白そう。

 視聴率も爆上げ状態らしい……ユレさん、ウハウハだろうな、これ。

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