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外伝2「BASTARD!!」①

 ……ズルリとそのゲル状装甲が剥がれ落ち、その内部装甲が突如割れる。


 キラキラと輝く金属片と白い煙幕のようなものが撒かれ、その中から小型艦が出てくる。

 

 その大きさは50m程度の長さなのだけど、やたらと背の高い異様な艦体をしていた。


 スカート上の軟構造体、後部にはジェットエンジンのような推進機が二つ……ホバークラフト?

 その上には、大きな放電するコイル状の物体と、その周囲を浮遊しながら回転する三つの球体。


 ワイヤーやら針金みたいなパイプやらがあっちこっちに走り、内部構造むき出しみたいな感じの異様な艦だった。


 ……なにこれ? 当然ながら、ライブラリには該当なし。

 

「何してる天霧っ! ミラージュフォグ展開っ! 最大戦速、取舵いっぱーいッ! 緊急回避ッ!」


 遥提督の警告に、反射的に身体を傾かせて、巡航からフルブーストへ増速!

 バウスラスター最大出力! ……艦体が一気に45度近い角度まで傾き、急旋回の横Gがかかるっ!

 

 次の瞬間、拡大映像の謎のホバー船から光芒が伸び、カメラがホワイト・アウトする!

 

 三本の光芒が絡み合った螺旋光条……それは、天霧わたしの艦橋及び、メイン光学ユニットを根こそぎ持っていく。

 

 光学監視系がダウン、荷電粒子の余波による帯電効果で、電装系にダメージ。

 CICのモニターと照明が消え、真っ暗になり、瞬間的な高電圧により漏電が発生し、激しいスパークが起こる。

 

 即座に電装系を予備系統に切替! ダメージ・コントロール起動! 外装ナノマシンのモードを防電モードへ移行!

 

 ミラージュフォグを最大濃度で散布! チャフ、フレア……デコイ! 使える全ての欺瞞措置を取る。

 データリンク! 各艦にも同様の回避行動指示!

 

 敵攻撃手段……荷電粒子砲。

 彼我の距離は80000……荷電粒子砲がそこまでの射程を実現しているなんて、聞いたことがない!

 

 それに、どうやって、この距離でこちらを観測している?

 

 遥提督が、今の攻撃を事前に察していた事については、驚かない。


 この人は、そう言う人だから。

 

 沙霧の援護射撃が着弾! 敵艦、ジェット機関を真横に向けると、瞬間的に150ノットを超える猛スピードで真横に機動し一気に回避するッ!


 くるくるとジェット機関を回転させつつ、エーテル流体面上をまるで、ミズスマシのように滑りながら、移動していく……何これ、キモいっ!

 

 朝霧、夕霧の砲撃も、その異常な機動力に予測演算が追いつかないようで、その砲撃は尽く外れる。

 

 スマート機雷もこのような敵は想定しておらず、全く追いつけない!

 敵艦に反応、起爆はしているのだけど、全て通り過ぎた後にボフボフと自爆するだけの有様。

 

「提督! な、なんですかっ! あれは……!」


 メインカメラは完全に駄目だ。


 光学監視系統を予備系統に切替……被害自体は、艦橋ブロック丸々全部と、煙突ブロックに内蔵されていた蓄電素子がいくつか持っていかれた程度。


 ダメージレポート総評……戦闘力への影響はなし。

 電装系の主系統はズタズタですけど、予備系統は問題なし……まだまだっ!

 

「荷電粒子砲艦? それもどう見ても人類製の……コイツは一杯食わされたかもしれないね……。えらくアナクロな見かけだけど、見かけのボロさに惑わされてはいけないな。とにかく、天霧は回避に専念! 一発でももらったら、最後だ……各艦は牽制を続けろ! 火力を絶やすなっ! 天霧っ! この感じ……まだ狙われてるぞ! でも、どうやって、こちらを索敵している? とにかく、緊急回避続行! あたしらに構うな! 全力で回避っ!」


 提督が避けろと言ったら、とにかく回避あるのみっ!

 

 その警告に従わないと……死にます。


「夕霧より警告、第二射来ますっ! 提督、ユレさん対ショック姿勢っ! 急制動でお尻を浮かせて、逆ウィリー状態で強引に艦種を回した上で、最大加速にて回避しますから、キツイの来ますよっ!」

 

「直角ターンかっ! いいだろう、やってくれっ! 先も言ったけどアタシらの事は構う必要はない」

 

 夕霧の観測映像。

 敵艦粒子砲……球体周辺に荷電粒子収束中……僚艦からの砲撃は継続されているのだけど、至近弾すら出ていない。


 皆、動揺している上に、敵の動きが早すぎるらしく、後追い撃ちになってしまっている!

 

 瞬間的にジェット推進ベクトルを逆進へ!


 イナーシャルキャンセラーが間に合わず、何かにぶつかったかのような衝撃! シートから投げ出されそうな程の減速Gがかかる!

 

「この程度っ! 踏ん張れーっ!」


 流体面から艦尾が浮いて離れるのが解る……この瞬間に艦尾サイドスラスターを吹かして、お尻を振って急速回頭っ!


 更なるミラージュフォグ散布! デコイを展開しつつ、即座に最大加速!


 超乱暴な鋭角ターン……艦船の機動じゃないのだけど、これならさすがに敵の予測を振り切ったはず! 


 敵艦第二射! 展開しておいたデコイに直撃!

 よし、上手く逸らせた……この様子なら、射撃間隔は決して早くはない。

 

 今のうちに距離を取って、ミラージュフォグの散布濃度を濃くして、視界を撹乱……あんなのとまともに撃ち合うなんて冗談じゃないです!

 

 けれども、間髪入れず戦術モニターにアラート!

 

 更なる取舵指示? さっきの取舵の勢いのまま緩旋回中だったから、更なる旋回をかける。

 横倒しになる寸前まで艦体を傾かせつつブーストを掛ける、立て続けの無茶な旋回Gで、艦体がギシギシと軋みをあげる!

 

 至近距離を第三射が通過っ! 横っ腹を向けていた状態から、背中を向けた事で投影面積が減ったため、狙いを外した……そんな感じみたいですけど……。

 

「……フェ、フェイク?! 危なかったっ!」


 第一射と第二射が妙に空いたから、第三射はすぐには撃ってこない……そう思わせた上での速射!

 

 なるほど……敵艦はあの三つの球体一基につき、一発……その気になれば、三連射が可能。

 ……そんな感じらしい。

 

 危なかった……警告がなかったら、完全に直撃されていたタイミングでした。

 

 今の警告は、後方の初霜からの警告。

 どうやら、こちらの状況をモニターしつつ、随時情報支援をしてくれるつもりらしい……これは、ありがたい支援。

 

 それにしても、相応のデータが集まっているはずなのに、沙霧達はまだ当てられない様子。


 皆、私が狙われているのを知って、全力での支援砲撃を行っているようで、射線ラインが凄いことになっているのだけど、有効打が全く入ってない……。


「ちょっと! 皆、なにやってるんですか! こっちもそう長く持たないっ!」


「すまんっ! 天霧っ! なんか弾道がブレる……どうなってんだ畜生っ! 全然当たらねーぞ! 夕霧! 朝霧! 観測データ間違ってんじゃねーのか!」

 

「……沙霧、それに天霧も……この弾道データを見て! ……あのコイルみたいなのは、粒子加速器だと思うんだけど。励起中は強電磁界フィールドが発生してるみたいだ。まともに狙っても、弾道に予想不能のベクトルがかかって、さっぱり当たらないみたいだね。モノとしちゃ、粒子加速器に融合炉とホバーを付けた高機動荷電粒子砲艦ってところみたいだけど、安普請の見た目の割に、攻防一体のなかなか優秀な兵器みたいだ」


 提督から提示された沙霧達の放った砲弾の弾道データ。

 それは敵艦の数百m位手前の位置から、不自然にズレていってることが解る。


「なんですか! それっ! 攻走守完璧ってことじゃないですか! ズルい! チートですっ!」


「そいつは同感。と言うか、これは君達レールガン装備艦艇を相手にすることを想定しているんじゃないのかな? 黒船相手にするには、どうみてもオーバーキルレベルの装備だし、多分稼働時間も決して長くないはずだが、荷電粒子砲の弾速はほぼ瞬時だからね。機動力の高い駆逐艦には極めて有効な兵器だ」


 ……確かに、駆逐艦を超える機動力、レールガンを逸らす電磁界フィールド。

 そして、駆逐艦の機動力を持ってしても、回避不可の荷電粒子砲。

 

 こちらがまだ無事なのは、私達「白兎隊」の特殊装備……ミラージュフォグ。

 

 それ自体が電磁気を吸収する上に、光を拡散、屈折することにより、相手の光学観測を欺瞞する……高機能の煙幕ってところです。

 

 たぶん、これが効いている。

 けど、相手がミラージュフォグによって、作られる虚像と実像の誤差を計算に入れて、対応してきたら終わる。

 ……そうなる前に、ケリをつける必要があった。

 まさに、ここが正念場ッ! それにしても、気になるのは、さっきの初霜の警告は……何を根拠に第三射を撃ってくると、判断したんでしょう。

 

 提督のは、戦士の勘……とか言ってたけど。


 むー、気になりますっ!

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