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外伝2「そして、彼女達は戦場へと向かう」①

「……沙霧!」


「ああ、天霧……どうも、遊んでる場合じゃなくなったみたいだな……。私は自艦に戻るよ! 天霧も出撃準備は出来てるだろうな? 私はすでにホットスクランブル状態……提督から指示があり次第、緊急出動だ!」


 沙霧は、それだけ言い残し、風のように走り去る。

 いつもながら、血の気の多い娘だこと……。


「もっとも、こちらも出撃準備に抜かりはなし……。遥提督っ! ご命令を!」


 ピシッと敬礼をしつつ、遥提督に向き直る。

 

「ああ、やっぱ、こうなっちゃったか。……天霧、状況報告を頼む」


「はっ! 報告します……。現在、黒船警戒レベルが注意勧告コードイエローから、警戒態勢コードオレンジへ移行しました! 先程まで上流域にて、黒船の軽巡級と駆逐級2をケンペンフェルト艦隊が追撃していたようですが、その差が一向に埋まらず、どうやら振り切られつつあるそうです……。推定速力60相対ノット?! なんでこんな速度を……」


「60相対ノットなんて、如何に流れに乗ってるからって、どう見てもおかしい数値だね。どうやら、これは新型ってとこかな? ケンペンフェルト艦隊は、企業支援の護衛艦隊……。黒船相手の積極的な追撃戦は荷が重いだろうって思って、朝霧と夕霧を出しておいたんだけど、どうやら正解。でも、二人が抜かれる可能性もある。そうなると天霧、沙霧……君達が最後の防壁だ。緊急出動……沙霧にもその旨、通達! 急げっ!」


「了解です! そうなるとユレさんの取材は、ここまでですかね。……TVの取材中に来るなんて、まったく気の利かない奴らですね……」


 せっかくの私のアイドルデビューのチャンスが……。

 絶対許しません! 足の速さが自慢だと? そんなもん知るかっ! 断固突撃粉砕ですっ!


「どのみち、今のコードオレンジの時点で、非戦闘員の港湾施設からの退避勧告が発令されてるからね。二人共、最寄りのシェルターか、ゲート施設へ避難するといいよ。終わったら、ゆっくりまったり、取材でも何でも引き受ける。もっとも、無事に戻れたらの話だけど」


「……あらやだ。さっさと降りろなんてそりゃないわよ。悪いけど、あたしもお付き合いさせてほしいわ。こんなチャンス滅多にないものっ! ちゃんと事前に星間連合軍にも取材中の事故については、自己責任にて対応するって誓約書を提出してるから、万が一があっても問題ないわよ。あ、アイリッシュちゃんは、AD君達とシェルターに避難してていいわよっ!」


「ユ、ユレさん、さすがに無茶が過ぎますって! いくらプロデューサーだからって、そこまで体当たり取材する必要あるんですか? コードオレンジなんて、私初めて見るんですけど……携帯端末にも、強制割り込みかかって、直ちに避難しろって、指示が出てるし!」


「アイリッシュちゃん、これまで、あたしらはこの戦争に無関心で居すぎたんじゃない? あたしも、事前に色々調べて、痛感してたのよ。例の演習会場襲撃の時……うちのジョニーちゃん覚えてる? あの子ビビりまくりでも頑張って、いちばん最後まで戦場に残ったんだからね。アタシも同じことするだけ……ねぇ、遥ちゃん、いいでしょ? お・ね・が・いっ!」


「……まったく、好き好んで戦場に行きたがるとか、正気の沙汰とは思えないね。マスコミ人って奴はカメラ構えてれば、その向こう側は別世界……とでも思ってるのかね? でも、現実はそんなに甘かないよ……そのうち地雷を踏んでサヨウナラってなるよ」


「20世紀の戦場カメラマンだったかしら? それ……。うちは20世紀の古い映画やアニメ、ドキュメンタリーなんかもライブラリから発掘してるから、その映画も見た事あるわよ。カッコいいわよね……ああ言うのって、同じ報道関係者として憧れちゃったわ」


「まぁ、いいさ……死んでも文句は言わないってのなら、好きにするといい。そう言う酔狂は嫌いになれない。天霧、追加オーダー……CICに予備シートってあったよね?」


「簡易シートではありますが……本気なので?」


「まぁ、これも文字通り、乗りかかった船ってヤツだよ。ユレさん、言っとくけど途中下艦は出来ないし、同行する以上は、あたしらと一蓮托生だからね。この手の未知の新型種との交戦……。アタシらは、これまで何度か経験してるんだけど、はっきり言って、何が起こるか解らないから、無事に戻れる保証なんてこれっぽっちも出来ない。降りるなら今のうち、どうする? 引き返すなら、これが最後のチャンスだよ」


 さすがに、提督の最終通牒とも言える言葉に、ユレさんの額にツゥッと汗が伝う。


 ……少しくらい体鍛えてても、人間なんて、さっきの私達のおフザケ半分のド付き合いに巻き込まれた程度で、即死しちゃいますから……逃げたって、別に恥でも何でも無いと思うのです。

 

 もっとも、世の中には永友提督なんて言う、頭のおかしい人も居るんですけどね。

 あの人よく死ななかったねーってのが、私達の共通見解……むしろ、普通は死にますからね。

 

 けど、ユレさんも額の汗を拭うと、ニヤリと笑う。

 

 うん……上出来、怖いもの知らずなんてのは、ただのバカだけど。

 怖いのを我慢して、それでも笑う……なんと言うか、それでこそ男です!

 

 って……ユレさんは、中身女の方でしたっけ。


「お見事っ! その心意気は評価に値する……では、改めて、ユレさん。天霧へようこそ! いざ、戦場へ共に参ろうじゃないか……」


 そう言って、遥提督が前に出るとユレさんの手を力強く握りしめる。

 提督って、こう言う勇気ある人は大好きなんですよね。


 私も、嫌いじゃありません。


「それでは……提督、ユレさん、直ちに出港します。急いで中へ……。アイリッシュさんも、また後ほどと言うことで、速やかに、ご退艦願います!」


「……あ、あのっ! ユレさんを、絶対……無事に返してあげてくださいねっ!」


「これまでアタシは、バックアップ無しで一度も死んだことがないのが自慢だ。天霧、いつものようにアタシの命……預ける! いつもどおりにやれ……それで十分だよ」


「いつもどおりに……オーダー了解です」


かくして、私はゲストを乗せて、未知の敵が待つエーテルの海へと出撃するのだった。

書いて、軽く推敲した矢先の投稿。

自転車操業っすなー。(笑)


ちなみに、遥提督のキャラクターを一言で表すとなると……。

女新城!(笑)


まぁ、幼女戦記の主人公みたいなもんです。

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