第六十七話 保護者来襲
karaan
『それで…怒られちった♡』
『怒られちった♡…ではない馬鹿者』
『ひん!ごめんなざい~捨でないで~』
すげぇ、何言ってるか分からねぇが、あの婆が一方的に叱りつけられてる。そんな事できる奴居たんだ。こっちが何言っても、直ぐに煙に巻こうとしてくる婆がしおらしくしているだなんて、始めて見たもんで俺は内心驚いた。正直信じられねぇ。だから一応隣にいる家の旦那さまにも聞いてみる。
「ねぇ旦那?あれが旦那たちの親父さんなんだろ?凄いもんだね、ババ…お義母さまを大人しくさせれるんだから」
「そうだ。あれが我らの父、帝国最後のエルフでこの世界で唯一、母を完全に御せる存在でもある。姉や妹たちも、一応言う事は聞かせられるが拳が必要であるし、そう言う事をすると母は後で必ず報復するからな」
愉快な家族だね…俺も身内だけど。ん?
「最後?お義母さまは?あの方も帝国の生き残りじゃ…」
「母は滅びた帝国に頓着などしていないからな。二人の会話は分からんだろう?あれは正式な宮廷エルフ語だ。正直、私も聞き取れはするが、話すとなると無様な物になるから、普段使いする者は父と父と会話する時の母くらいだ。それでも父は家族相手に宮廷語で通している。着物にしても、未だに自分で帝国式の正装を補修して使っている。父は今でも帝国貴族なのだ」
「意地を通す男なんだねぇ親父さんって。俺はそう言うの嫌いじゃないよ」
そう言われて見ると良い男だ。旦那より背は低いがヒョロヒョロ…人間たちからの略奪品でも見た事もない上質布の長衣を着ていて盛りあがった筋肉が分かるし、顔も旦那に似た…親子だから当たり前か…オーク好みの…おわっ!旦那ぁ!急に肩を引かないでおくれよ!
「なにさ、危ないじゃないの旦那ぁ」
「幾ら自分の親でも他の男に嫁が見惚れるのは我慢できん。お前は私の女だ」
「嫉妬しちゃったのぉ?もぅ…俺は旦那一筋♡」
「それなら良い」
ああ可愛い人♡しっかし、なんで急に旦那の親父さん押しかけて来たんだ?
ーーーーーーーーーーーーーー
おう!義娘!私がこうやって怒られてるのにいちゃついてんじゃねえよ!視界に入ってるし会話も聞こえてんだぞ!
「聞いているのか白百合」
「はぃぃ!聞いております貴方様ぁ!」
皆さまも私の義娘の乙女ちゃんと同じく、なしてマイラバ―お兄さまが登場したか疑問でしょうから、少しご説明いたします。私の夢枕に立ってくれやがったロキのせいで飛び起きてから現在3日程経過しております。
その間、私は現在の計画の内、オークエクソダス計画を除き全計画に中止命令を出しまして、「なんだ?どうした?説明せんかい!」と詰め寄る首脳陣は遠ざけてたんですが…
「子細は効いたぞ。確かに、私を呼び出すに充分な事態であるな。随分と私に報告していない事があるのではないか白百合?」
先ほどお兄さま(ほごしゃ)呼ばれました…誰よ告げ口したの!猛ちゃん貴方ね!一番来てほしくない人物をなぜ呼んだの!帰れなくなったらどうすんのよ!世界樹の門は年単位で安定しなくなる事があるの知ってるでしょ!それを口実に事が終るまで会いたくなかったし、報告も誤魔化してたのに!
「母よ、貴方が全て放り出して塞ぎ込むとは余程の事なのだろう?それを我らに話せないと言うのも考えあっての事とは思う。だが今の私は貴方の幼子ではなく族長のなのだ。一族を率いる者としてそれは看過できない分かってくれ」
うにゅう。それを言われると弱い。そうよね貴方はもう寝小便して怒られてた子供ではないのよね…お母さんそれ忘れがち…でも~子細は聞いたってなにかな~もしかして~これまでの事全部ゲロった訳では~。
「父に隠しごとは出来ん。確かに族長としては貴方を指導者として尊重するが、一家の主は飽く迄父だ。父親が息子に母の行状を尋ねてきたのであれば、素直に答えるのが孝と言う物では?」
おい!今さっき族長云々言った口で親子関係持ち出すな!誰に似たのよその二枚舌!…私か。そこまで言い合ってますと、如何にかして帰ってくれないかな~と思っていた私の夫が判決を言い渡す様に口を開いたのございます。
「そう言う事だ。今度という今度は私もお前を野放しには出来ん。図り事を用いるのは指導者の常だが、それを家族に、まして己の夫にまで行うのは度が過ぎる。私たちはどうやらよく話し合う必要があるようだな」
あれ~?お兄さま大分ご機嫌斜めな感じ~?白百合~不機嫌なお兄さま嫌~い!怒っちゃ嫌~なの!
「お前は私が怒りを覚えずに居られると思うのか?何度死に掛けた?我らが主以外の外なる神を敵に回しとは初耳なのだが?ん?何か申し開きはあるか?」
怒ってるぅ!!私が始めて一服盛った時並みに怒っていらっしやる!!!
「息子よ、しばらくお前の家を借りるぞ。私は少々長くお前の母と話をしなければならないようだ。主だった者を集めてから戻ってきてくれ」
「分かった。日が落ちてからで良いか?」
「うむ。行くぞ白百合。逃げるのは許さんからな?」
嫌ーーーーーーーー!!何処に行くのですか息子!母を置いていかないで!!!お母ちゃんお父ちゃんにガン詰されちゃうーーーーーー!!
「良い薬だろう。偶には本気で説教された方が貴方の為だ」
あーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
てな訳で此処で詰められいるのです。息子には話していない事もぜーんぶ吐きました。うふふ…なに?これ?なに?なんで私は自分の旦那を目の前にして攫われてヒデェ目にあった事や、他人の種で産んだ子供がラスボスですまで言わなあかんの?プレイじゃんこれ?お兄さま寝取らせ趣味が?私、貴方様だけにはそう言う趣味持って貰いたくなかっ…イデェ!!!DV!DV!
「馬鹿を言うな。お前の行状ついては当に諦めているが、私にその様な趣味は無い。私が怒りを覚えているのはお前のその秘密主義と全てを抱え込む性格についてだ。少しは夫を信頼しろ。私はそんなの頼りない男か?」
いえ、そう言う訳では…
「ではどう言う訳だ。己さえ、等と言う愚かな事を言ってくれるなよ。お前は他者を紙の上の数字として、酷薄に振舞ってはいるが、その数字に己の大事な物を加えず、自分の命で釣りあいが取れると考えているのではないか?件の神の怒りをかったのはその傲慢さなのだ。例外を作るな。種の存続を賭けて争う以上、他種族の命も我々の命も同じ盤面に乗っている。そこに軽重は無い」
それ言われました。
「そうだろうな。神から見れば生命は対等なのだ。思えば帝国は最後までそれを理解できなかった。お前は新時代のエルフの指導者だ。同じ愚を犯すな」
はい。もっともでごぜぇますお代官さま。オラが全て悪ぃんです。そうです私一人の罪でございます。かくなる上はこの腹掻っ捌いてお詫びを…オゥ!また拳骨落とした~!!酷いわ!責任取って!永遠に一緒に居て!あと千人子供作るから頑張って!
「白百合?愚は犯すなと言ったばかりだぞ」
ちきしょう。流石は育ての親にして夫のお兄さま。寝技に持ち込まない限り勝ち目がねぇ…仕方がない真面目にやろう。
「承知いたしました愛しい方。私の浅はかさをお許し下さいませ。時に貴方様は私をお叱りになる為だけに、此方に御出でになった訳ではないのでしょう?」
「いや、八割は本気でお前に説教をしに来た」
「あの…私も久方ぶりに真面目に話をしておりますので、急に砕けないで頂けると嬉しいのですが」
「謝りはしないぞ。本心ではあるからな」
「然様でございますか…意地悪!でも好き!…では残りの二割の訳とは如何様な物でございますか?」
「簡単な話だ。お前を助けに来たのだよ」
「貴方様のお手を煩わせるまでも…此度の事は私の失態で…」
「それよそれ。お前がそれを言い出すから猶更、私はお前だけには任せて置けないのだ。言っただろう?私は頼りない夫か?」
「いえ決して」
「ならば良いだろう?それにだ…」
「それに?」
あれ?なんか雲行きがまた怪しくなってません?お兄さま?なんでそんなに猛獣みたいな顔してるの?
「外なる神が祝福を与えたお前の子。その父親は生きているのだろう?私はな白百合。これまで随分と我慢をして来た。業腹であるが、お前のその奔放さの相手を仕切れない私にも非があるからな」
いやん。それ蒸し返しちゃう?嫌な予感が強くなって来たのでフォローしとこっと。
「それは偏に私の浅ましさ故、貴方様のお気になされる事では…」
「妻が他の男と寝ていて嫉妬しない男がいるか?」
ですよね。当然だよね~。だから私も近ごろは森では致さない様にしてるし避妊もしてるのよ。そんで一発やったらお兄さまと子作りする。平均三発はやる。逃げようが何しようがやる。それでは駄目だったかぁ。御いたわしやお兄さま…私が頭オカシイばかりに…脳が破壊されていたのですね…。
「返す言葉もございません」
「なので鬱憤を晴らしにも来た。お前を守れんばかりか見分けも付かん愚か者なのだろう?切って悪い道理はあるまい。ん?そうではないか白百合よ」
「ひゃい!」
怖ぇ!殺気が!殺気が!すまんお坊ちゃん!これ助けられませんわ!私が10割悪いから努力はするけど、死んだらごめん!
「そう怯えずとも良い。それは空く迄も余裕があればの話だ。先ずは外なる神の試練とやらを解決せねばならないのだからな。お前の事だ考えはあるのだろう?」
嘘だ。絶対に切る気ですよこの方。これまで私の体を通り過ぎて行った数多の男への恨みと嫉妬をぶつける御積りですよねマイダーリン!……仕方ない!切り替えるか!
「ございます。貴方様が参陣して頂けるとあらば幾らであろうと策は巡らせます」
「では聴こう」
うぅ…笑ってない。笑ってるけど笑ってない!でもぉ~そんなお顔も素敵!
「言い忘れたが、私は戦の為に来たのだ。寝屋は共にしないぞ。……動けなくなっては困るからな」
「お預け?」
「お預け」
そんにゃ殺生な…




