9
〜2年後〜
あの出来事から早二年、ついに私も卒業の年になりました。
「エリザベス・クレイス君」
「はい」
「エリザベス・クレイス。右の者が本学園の教育課程を修了し、卒業したことをここに証する。おめでとう」
「ありがとうございます、学園長」
卒業証書を貰い、卒業したという実感がようやく湧いてくる。色々あったなぁ・・・となるのは、少し年寄りくさいでしょうか。
******
〜同日、夜〜
ざわざわと様々なところで卒業生が思い思いに話をしています。ここは、その年の卒業生が集まり互いの卒業を祝うパーティ会場。これを欠席する貴族はいません。何故なら、このパーティは王家主催であり、それの招待を蹴ることは即ち王室への不敬にあたるから。
「エリザベス様、ご卒業おめでとうございます!」
「ありがとうございます、皆様こそ、ご卒業おめでとう」
二年間、私を守ってくれたご令嬢の皆さんも卒業です。留年する方がいなくて本当によかった。
「そういえば、サントラ公爵令息殿下はどちらに?」
「あちらをご覧下さいな。アルフレッド殿下や他の令息達と駄弁っていますわ」
「あらまあ。あの方達、皆エリザベス様に無礼を働いた者たちではなくって?それに、男ばかりですのね。女の1人でも、いえ、それではその女性が可哀想ですわね」
「あら本当」
貴族は噂と陰口を好みます。まあ彼らは?陰口を囁かれても文句を言えないことをしたわけですし?私を襲い既成事実を作ろうとした不届き者は退学になったそうですが、知りません。彼らが悪いんですよ。
「しっ、お静かに。国王陛下のご登場ですわ」
ご令嬢達の見る方は目を向けると、階段から降りてくるお父様とお母様の姿がありました。
「国王陛下、王妃殿下のご登場です!」
その声が響き渡り、その場にいた全員が最敬礼をします。
「うむ、皆面をあげよ。楽にしなさい」
お父様のその言葉で皆敬礼を解き、お父様の次の言葉を聞き逃すまいと耳を傾けます。
「まずは皆、卒業おめでとう。君達がこれからの王国を担い活躍する貴族となることを期待している。今宵は祝いだ!良く食べ、良く飲み、良く騒ぎなさい。ただし、騒ぎすぎて問題など起こさぬようになっ」
お父様の冗談に一瞬の笑いが起きますが、それでも弁えている貴族の方々。すぐに静かになり次の言葉を待っています。
「そしてこちらは我々王室からのささやかな卒業祝いです、受け取って下さいな」
お母様の言葉で控えていたメイドの皆さんが卒業生1人1人に王国の鉱山で採れるアメジストを使用したアクセサリーを手渡します。男性には腕飾りを、女性には髪飾りを。勿論私も頂きました。
「そして!今年はもう一つ、重大な発表がある。全国民へ向けては後々行われるが、卒業生の皆には先に話そうと思う。まずはエリザベス・クレイス嬢、こちらへ」
「はい、陛下」
私の名が呼ばれ、お父様のところへ歩いて行きます。その間に周りを見ると、何が行われるか大体察している者、何が行われるか分からずきょとんとしている者、そして呆然としている者。この3つに分かれていました。
「皆は聞いたことがあるだろうか。我が国では、王家の子を王家が選んだ貴族に預け、学園に通わせるしきたりを。これで理解したならば話は早い。ずばりこちらのエリザベス嬢は、私達の娘であり王女であったのだ」
「既に察していらっしゃる方もいらっしゃるでしょうけれどね」
その時、会場は2つに分かれました。うんうんと頷く者、信じられないとばかりに口を開けたまま固まっている者。私を守ってくれたご令嬢達は前者でしたが。
「そしてもう一つ。ルイス・キャミリア侯爵令息、こちらへ」
「はっ、国王陛下」
「この度、王女エリザベスの婚約者となった、ルイスだ。以前エリザベスと婚約していた者は勝手に婚約破棄したので、ならばということでエリザベスの幼馴染であり彼女が唯一信頼できる男ルイスを婚約者とすることになった。勿論これは双方の合意の上の婚約だ。安心して欲しい」
「つまり、こちらのルイスさんは時期女王陛下の旦那様ということです」
先程よりも大きなざわめきが起きました。まあ当然でしょうか。ルイスが婚約者であることは今初めて言いましたからね。
******
〜数ヶ月前〜
「・・・ということで、私はお父様の案を採用したいと思います」
「そうか。ならば、ルイス君とキャセイ君のご両親にも話をしないとな」
「忙しくなりますね、ブライ」
******
〜キャミリア侯爵家邸宅〜
「キャミリア侯爵、並びにパシフィー子爵、急な呼び出しすまなかったな。今回は娘のエリザベスに関わることで、ルイス君とキャセイ君を含め集まってもらった」
キャミリア侯爵、パシフィー子爵は神妙な面持ちで頷きます。
〜国王説明中〜
「・・・と、いうことだ」
「ふむ・・・私達も出来る限り協力したいのですが・・・2人はどうなのだ?断っても良いのだぞ?」
「親父、僕はエリザベスの為になる事なら何だってしてあげたいんだ。それに親父も聞いただろう?エリザベスの婿になってもキャセイを公的に愛せるんだ。なら僕は不満なんてないさ」
「私も。それに3人で話し合ったことだけど、エリーがルイスと夜を共にする時は私を含めた3人ですることって決めてるから、寝取られる心配もないし。王家の血筋が途絶えることを考えたら、こっちの方が圧倒的にいいわ」
「キャセイ・・・そうか、2人の意志は固いようですな、侯爵閣下」
「ぬ?う、うむ・・・そうだな。これでは私も、妻も認めざるを得んだろう。そうだろう?」
「ええ、少し複雑だけれど、ルイスのことよ、駄目と言っても聞かないわ」
「お袋、それはないんじゃない?」
「お父さん、いいの?」
「ん?ああ、私は最初からいいと思っていたぞ?勿論妻もな」
「そ、そうなの?お母さん」
パシフィー子爵夫人はにこにこと優しい笑みを浮かべたまま動きません。しかし幼馴染の母だから分かります。彼女は私達を応援していると。あの顔はそういう顔です。
「しかしですな陛下。王家の側室が子爵では、いささか身分不相応では?」
「む?いや、問題ない。歴史を紐解けば側室が男爵令嬢だった時代もある程だ。歯向かう者は私達の手で黙らせておくさ」
もっと難航するかと思っていたのですが、意外と円満に終わりそうですね。




