表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金屋子の隠れ里山  作者: 戸次葵楓
壱章.祭りの役者たち
2/3

はじまりは農学部

大学――それはどこでもだいたい個性の強い人間がいて、面白い変わったところ。

どの大学へ進学した友人たちに訪ねても、みな個性の強い人が多いと口をそろえる。

まさに異口同音とはこのこと。やはり、大学というのは変わった人のいる変わった場所なのだ。



入学して1ヶ月。わたしは徐々にクラスにもなじみ、仲良しの子らと小さいグループを形成していた。

わたしが進学したのは自然に乏しい地元にある、とある大学の農学部。

そう、いわゆるところの都会にある農学部なのだ。

主に遺伝子組み換えなどを扱う学科が多くある中、農業について専門的かつ実践的にやっている学科がひとつあった。

そこにわたしは属している。

男女比2:1という割と理想な学科。定員は少なく23人。そのうち多くの子が地方から来ている。

仲良しの子も地方から来ていた。

肥えの匂いがふと風に乗ってやってくる教室で、わたしたちは弁当を食べていた。

下宿している子はおおむね自分で作ったお弁当である。

「紗枝ちゃんと恵実ちゃんってさ、弁当いっつもおんなじやんな?相談とかしてんの?」

ふと、思ったことを二人に聞いた。

目の前に並んで座る二人の弁当は、箱も中身も瓜二つなのである。

ウインナーやふりかけ、さらにはゆで卵の形や半熟加減まで。

ほんとうに瓜二つなその光景が滑稽だった。

「え、これ一緒に作ってるから一緒やねんけど」

恵実ちゃんが、言っていなかったっけといった表情をした。

「一緒につくってんの?」

「そうそう。だって一緒に下宿してるし。って、これ言ってなかったっけ?」

聞いていない。きょとんとした顔をしたのだろう。紗枝ちゃんが食べていたカツを飲み込み口を開いた。

「めぐとうちは生まれて以来の幼馴染やけぇ。そいで、一緒の大学に行けたから、一緒に下宿したんよ。」

紗枝ちゃんは恵実ちゃんと顔を見合わせた。

活発で運動が得意な紗枝ちゃんと大人しいめぐちゃんが幼馴染かぁ。

一見合わなさそうだが、意外といいコンビになっていたのかもしれない。

ねー、という二人はいかにも幼馴染の相方で親友である雰囲気を十分にかもし出していた。

少しため息をこぼした。

「あとね、うちと恵実の他に幼馴染がもう一人一緒に大学にきたんよ。

あの毛の短いへんちくりんな男子、覚えてる?山中孝太っていうやつ」

「えーっと、まだ覚えてないかも。男子はほとんどわからへんわ」

この何気ない昼食トークが、わたしの夏休みに関係してこようとは、このとき微塵も感じることなどできなかった。




前期の考査も済み、結果はともあれ大学生特有の長期休暇が始まろうとしていた。

ヒートアイランドと温暖化により人間の体力を蝕んでいくコンクリートジャングル、もといアスファルトランドの中、わたしは夏休みの短期バイトを探していた。

大学生といえばバイトだろうと思うが、現実なかなか見つからず、面接で落とされるなどして

アルバイトにはたどり着けなかった。

なにがいけないのだろうか。面接で落とされるということは、わたしに問題がある。

がっくししてキャンパス内のベンチでカンカン照りの空を見上げていた。

空になにか映らないか、わたしの弱点が映らないかと、ぼーっと見上げていた。

すると、映った。空一面に黒いものが。

ただ、それは弱点や欠点ではなかった。

紗枝ちゃんのセミロングの黒い髪が垂れたものと、逆光でシルエット状態となった彼女の顔だった。

「うわっ!?っと、なにしてんの、もう」

あわてて彼女のほうを向いた。

すると、いつものように恵実ちゃんも一緒にいた。

「夏休み暇ー?」

恵実ちゃんがいつものように明るく尋ねる。

「うん・・・残念ながら暇やねん。バイトの面接全部落ちて」

「ちょうどよかったわ!旅行に行かん?」

一瞬なにがちょうどいいのかとむっとしたが、夏休みに特に予定をもたない私にはありがたい話だった。

「えっと、うちらの地元で祭りがあるんよ。それの参加者を募ってて…ね。あってる、めぐ?」

「あってるよ、むらげちゃん。うそはついてへんし」

言い回しが少し危険な臭いがするが、それよりも気になったことがあった。

「やるやる!っていうか、紗枝ちゃんのあだ名ってむらげちゃんやったっけ?

槇村やからむらげ?げってなになん??」

「なんもないで。それより、その祭りやねんけど・・・」

あわてて紗枝ちゃんが祭りの話をしだした。少し口元が引きつっていた。

「夏休みの間やけど、この祭りどれぐらいの期間かわからんくて。だから8月中は最悪全部ってことになるけど。宿泊と食費とかは心配なし、全部こっち側負やし。あとは、もしかしたら謝礼も少しならあるかも?」

紗枝ちゃんは少し言葉を選びながら、時折恵実ちゃんを見ながら説明した。

「ほんま!?行く行くー」

私は無料で旅行という餌に食いついた。紗枝ちゃんたちの故郷でこの心を癒してこよう。

私の食いつきのよさに、二人の顔から不安が一気に消えた。

少し残っていた罪悪感とともに。


ご閲覧賜りありがとうございます。

まだまだ何も始まりません故、多少退屈なくだりとなります。

ほのぼの系ですので、全体を見たところで盛り上がりにかけますが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ