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第二章:偽りのぬくもりと錆びた心臓-第21話:吹雪の特異点と、黄金の深淵

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。▼▼▼▼▼


X (旧Twitter)https://x.com/k7nature1


▼ 前話(第20話)のあらすじ

絶望的なクローン侵蝕の現実を突きつけられたカズたち。しかし、「五人の伝説の戦士」の存在と、マザーシステム破壊という反逆の道標を見出します。

強大な敵を前に圧倒的に足りない「魔力」を補うため、一行は近未来の装甲SUVに乗り込み、父・拓也が遺した北アルプスの極秘訓練施設『アーク・セクター01』へと旅立ちました。

――今回は、その続きとなる第21話。

猛吹雪の雪山に隠された特異点での、シフティによるカズの地獄の特訓が始まります。

無駄撃ちをなくし、光を極限まで圧縮する新技の開眼。しかし、その一撃がもたらした「想定外の威力」により、最悪の追跡者が強襲!

そして、カズの危機に直面したエリスの身に、彼女の「仕様(規格)」である恐るべき変化が訪れます……!

(※ここから第21話の本文スタート)

  視界ゼロの猛吹雪が、マットブラックに塗装された装甲SUVの分厚い防弾ガラスを、物理的な質量を持って激しく叩きつけていた。

 標高二千メートルを超える北アルプスの深淵。荒れ狂う純白の暴風雪の中を、カズたちの乗るホバーSUVは、車体下部のリニア・ドライブから青白い磁力光を放ちながら、道なき雪山を重力に抗うように突き進んでいく。


「マスター・カズ、目標地点マデ残リ三百メートル。強風ニヨル車体ノスリップ率、四十五パーセント。スラスト出力をコンマ一秒単位デ微調整シテクダサイ」

 後部座席に座るミオドロイドが、網膜プロジェクターから地形データをフロントガラスに投影しながら無機質にナビゲートする。


「分かってる……ッ! アダム、アリス、舌噛むなよ!」


 カズが操縦桿スラスト・レバーを巧みに操り、雪崩の跡を避けながら急斜面を駆け上がる。

 やがて、猛吹雪の向こうに、巨大な一枚岩の絶壁が立ちはだかった。行き止まりだ。だが、ミオドロイドは構わず「直進シテクダサイ」と告げる。


「信じるぞ、ミオ!」


 カズがアクセルを踏み込んだ瞬間、SUVの車体は激突することなく、岩肌を『透過』した。光学迷彩によって精巧に偽装されたホログラム・ゲート。それを抜けた先には、外の極寒地獄とは完全に隔離された、巨大な人工空間が広がっていた。


 淡いブルーのLED照明に照らされた、ドーム状の広大な地下施設。

 整然と並ぶ無機質なコンソール群に、最新鋭の医療ポッド、そしてアリーナほどの広さを持つ仮想戦闘ルーム。それらすべてが、イデアの社長である一ノ瀬拓也と、イアン・フィッツジェラルドが、いずれ来たる「全面戦争」を見据えて遺した極秘の訓練施設――【アーク・セクター01】の全貌だった。


「……信じられねえ。こんな雪山の中腹に、軍の秘密基地顔負けの設備を作り上げてやがったのか」


 車から降りたアダムが、煙草に火を点けながら天井を見上げて息を呑む。アリスもまた、壁に格納された無数の武器群やジェネレーターを見て、亡き父たちの覚悟の重さに目を細めた。


「先輩、長旅お疲れ様でした。冷えたお体を、極上のダージリンで温めましょう」


 そんな緊迫した空気などお構いなしに、エリスは車を降りるや否や、施設のメインテーブルに純銀のティーセットを展開し、優雅な手つきで紅茶を淹れ始めていた。彼女のメイドとしての完璧なルーティンは、どんな絶望的な状況下でもブレることはない。


「ありがとう、エリス。……だが、ゆっくり休んでる暇はないみたいだ」


 カズが紅茶のカップを受け取ろうとした瞬間、彼の胸元から眩い黄金の粒子が吹き荒れた。

『――その通りじゃ茶会などしている暇があれば、己の未熟さを恥じよ、愚かな器』


 黄金の精霊・シフティが、腕を組みながら冷ややかにカズを見下ろして具現化した。

『カズ。貴様があのプラントで放った一撃……【極光魔弾きょっこうまだん:アルファ・バースト】だったか。あれは確かにタイラント級の核を砕いた、じゃがしかし魔力を垂れ流しただけの、酷く見苦しい「無駄な花火」じゃな。一発撃って終わりの器など、スクラップ以下の役たたずなのじゃよ』


「無駄な花火って……あれで俺の魔力はすっからかんになったんだぞ」


『だから無駄じゃと言っているのじゃよ。聞け。真の【アルファ】とは、光を広げることではない。光を内側に「圧縮」し、循環させることにある。外に漏れ出すオーラをすべて己のコアに引き戻し、極限まで密度を高めるのじゃ。……ミオとやら、仮想戦闘ルームを起動しろ。敵のシミュレーションは【メナス級(脅威級)】五体じゃ!!』


 シフティの無茶苦茶な要求に、カズは息を呑んだが、すぐにアルファ・レオンを抜き放ち、広大なアリーナへと足を踏み入れた。

 数分後。仮想戦闘ルームには、カズの荒い息遣いと、肉が焼けるような嫌な音が響き渡っていた。


 ミオドロイドが投影したメナス級のホログラム群が、容赦なくカズに襲い掛かる。アリスやアダムがサポートに入るが、シフティは「カズの射撃以外での破壊は無効」という厳しい縛りを設けていた。

『違う! 力むな! 殺意を外に向けるでない! 内へ、もっと深淵の底へ引き摺り込むのじゃ!!』


 脳内に響くシフティの怒号。

 カズは目を閉じ、自身の内側で荒れ狂う黄金の魔力を必死に手繰り寄せた。今までのように、怒りに任せて光を外へ爆発させるのではない。細胞の一つ一つに浸透する光を、無理やりへその下の丹田へと集め、凝縮し、さらに小さな「点」へと圧縮していく。

『……もっと。もっとじゃ。光を、漏らすでないぞ……ッ!』

 カズの身体から、眩い黄金のオーラが『消えた』。


 いや、消えたのではない。すべての光が、極限の密度まで圧縮され、カズの輪郭を覆う薄皮一枚の『見えない鎧』へと変質したのだ。


「……先輩の魔力が、見えません」


 コントロールルームから見ていたエリスが、驚愕にオッドアイを見開いた。彼女には、カズが全くの無防備な一般人に戻ったように見えたのだ。

 だが、カズの右手に握られた魔銃『アルファ・レオン』だけが、異常な変を遂げていた。銃身の隙間から漏れていた光は一切なくなり、銃口の奥底にだけ、ブラックホールのように周囲の光を吸い込む「極小の黄金の球体」が形成されていた。


「シフティ……これか」


『……ふむ。ようやく少しはマシな形になったようじゃな。撃ち放ってみせろ!』


 カズは迫り来るメナス級の巨大な頭部に照準を合わせ、静かに引き金を絞った。

 轟音は随分と控えめな音となり、銃口の閃光も、吹き荒れる衝撃波も少ない。ただ、銃口から放たれた目に見えないほど速さの魔弾が「黄金の線」の尾を引き空間を切り裂きながらメナス級の頭部に着弾。


 新技――【零式収束魔弾ぜろしきしゅうそくまだん:アルファ・ゼロ】。


 トウゥゥン!といういた音と共に、メナス級の頭部が分子レベルで静かに「消滅」した。断面は鏡のように滑らかで、一切の熱も衝撃も周囲に拡散していない。

 エネルギーの100%すべてを「破壊(消滅)」のみに変換した、究極の高燃費・高密度の一撃。カズは膝をつくこともなく、魔力の消耗もほとんど感じていなかった。


「……成功、だ。これなら、何十発でも撃てる……ッ!」


 カズが自身の拳を見つめ、確かな手応えに戦慄した、その時だった。


『――警告アラート警告アラート。訓練施設ノ、外部ステルス・シールドニ異常発生』


 ミオドロイドの赤い瞳が、突如として激しく点滅を始めた。


「どうしたミオ!?」


「マスター・カズガ放ッタ【アルファ・ゼロ】ノ魔力密度ガ、施設ノ想定防御チヲ大幅ニ超越シマシタ。着弾箇所ノ防壁ガ分子崩壊ヲ起コシ、一瞬デスガ、施設ノ『波長』ガ外部ヘト漏洩シマシタ」


「なっ……!?」


 カズたちが顔面を蒼白にしたのと同時刻。

 アーク・セクター01の直上!!

 猛吹雪の上空三千メートルの空域で、光学迷彩を纏って滞空していた巨大な黒い輸送機の内部に、甲高いアラート音が鳴り響いていた。


『――ターゲット【アルファ】ノ生存ヲ確認』


 輸送機のハッチが重々しい音を立てて開く。

 極寒の暴風雪が機内に吹き込む中、全身を漆黒の強化装甲と人工筋肉で改造された、オブシディアン・ミリテックの『特務追跡者エリミネーター』が、眼下の雪山を赤い単眼で不気味に発光させ、一直線に降下を開始した。


「……見ツケタゾ、一ノ瀬和」


 *


 施設内。カズたちが状況を把握する間もなく。

 轟音と共に、施設の天井の岩盤が吹き飛んだ。

 漆黒の装甲を纏った特務追跡者が、大量の瓦礫と共にアリーナの中央へと降臨する。


「ターゲット【アルファ】。……抹殺スル」


 特務追跡者が機械音声と共に、両腕に埋め込まれた高周波ブレードを抜き放ち、カズへと一直線に突進した。


「先輩には指一本触れさせません!!」


 エリスが前に飛び出し、双剣から漆黒のオメガの魔力を爆発させ、強固な『闇の盾』を作り出す。

 だが、特務追跡者のブレードは、エリスの闇の盾を紙のように切り裂き、そのまま彼女の身体を弾き飛ばした。


「なっ……エリス!」


 吹き飛ばされたエリスが壁に背中から激突し、血を吐く。


【……エリス、フィッツジェラルド。……イアンノ娘。……貴様ハ、最後ニ殺ス】


 特務追跡者はエリスを無視し、カズへと距離を詰める。

 エリスが壁に背を預け、ゆっくりと立ち上がった。


「エリス!もう立つな___」


 彼女の美しい銀髪が、逆立つような黄金のオーラに包まれる。彼女の中の『核心コア』が、カズへの害意を検知し、強制的に共鳴を開始したのだ。


 トランス化(核心共鳴)。


 カズは驚愕に息を呑んだ。

  エリスの顔。眼周りから頬にかけて、まるで真っ赤な血管が浮き上がったかのような、複雑な術式花纹が紅く発光しながら浮き上がっていく。


 彼女が握る双剣の柄から伸びる手、その手首から前腕にかけても、同じ黄金と紅の術式が皮肤を突き破るように浮き出ていた。


「……エリス、その、顔、は……?」


 カズが動揺に声を震わせる。

 エリスはカズの方を振り返らず、冷徹な瞳で特務追跡者を見据えたまま、感情の抜け落ちた声で答えた。


「……マスター。これは、私の『仕様(規格)』です。……マスターを傷つける不浄の存在を、完全に沈黙させるための」


 エリスの言葉と共に、彼女のスカートの下、露わになった白い太腿にも、円形の魔法陣の様な術式が浮き上がり、紅い光を放ちながらエリスの全身を禍々しい黒い闇のオーラが覆っていく。


 それは、彼女がイデアによって作られた、完璧な『殺戮の器』であることを示す、おぞましくも美しい刻印だった。


「……欧米ガの、器。……トランス。……不明ナデータ」


 特務追跡者がエリスの変貌に、機械音声をノイズ混じりに発した。


「……ゴミクズが……私のマスターの前から、消えろ!!」


 エリスが黄金と紅の術式を全身に発光させながら、特務追跡者へと音もなく突進した。彼女のトランス化した全身から放たれる圧倒的な殺意と、オメガの闇の魔力が、施設内を真冬の静寂へと沈めていく。


 第二章 第22話へとつづく


いつも『19回目の殺意を紅茶に添えて』をお読みいただき、本当にありがとうございます!


今回は、カズの新技【零式収束魔弾:アルファ・ゼロ】の開眼、そしてラストのエリスの『トランス化(核心共鳴)』を描きました!

普段は「先輩に淹れるダージリン」にこだわる検診的なメイドのエリスですが、彼女の正体はイデアによって引き出された『オメガの器(殺戮の器)』。

顔や太腿に浮かび上がる紅い術式や魔法陣は、彼女の肉体そのものが魔力回路として暴走・機能している証拠です。ヒロインの痛々しくも美しいダークな変貌を今回はイラストにしてXにて公開してます。是非ご覧下さい。


▼ 次回予告:第22話

「……ゴミクズが。私のマスターの前から、消えろ」

トランス化し、圧倒的な闇の魔力と殺意を解放したエリスと、オブシディアンの特務追跡者による死闘が幕を開けます。

しかし、敵は人間の規格を外れたバケモノ。カズやエリスが苦戦を強いられる中、いよいよ『もう一人のヒロイン』に眠る強大な力が双子の力によって目覚める!?


次回、アリス進化に激アツ展開です!お楽しみに!

▼ くろねこパパのX(Twitter)はこちら!

今回のラストで術式が浮かび上がった『トランス状態のエリス』のイラストなども呟いていますので、ぜひ視覚的なイメージの補完にフォローと気に入って貰えたらいいねもよろしくお願いします! #フォロバ100、#相互フォローもよろしくお願いします。

https://x.com/k7nature1

※少しでも「面白くなってきた。」「エリスのトランス化カッコいい!」「アリスの覚醒も早く見たい!」と思っていただけましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での応援をよろしくお願いいたします!

皆様からの応援が、作者の執筆の原動力になります!!

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