第二章:偽りのぬくもりと錆びた心臓-第19話:暴君(タイラント)の産声と、無数の絶望
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▼ 前話(第18話)のあらすじ
街を行き交う人々の泥のように濁った瞳。熱湯を被りながらも完璧な笑顔を崩さないカフェのマスター。そして、テレビ越しに全く同じタイミングで瞬きをする国のトップたち。
世界はすでに、軍事企業『オブシディアン・ミリテック』が放ったクローンたちによって、静かに、しかし確実に乗っ取られていました。
絶望的な状況の中、カズは「俺たちが全部ひっくり返す」と、反撃の狼煙を上げます。
――今回は、その続きとなる第19話。
静かなサイコホラー展開から一転、今回はド派手なアクション回です!
まさかの頼もしい(?)新メンバーの加入、そしてずっと沈黙していた最重要キャラクターの復活。
カズたちはクローンの製造拠点である『第一プラント』へとカチコミをかけます。立ちはだかる巨大な異形に対し、アリスの神速の抜刀術とカズの魔銃『アルファ・レオン』が火を噴く!
怒涛のバトルと、その先に待つ『真の絶望』をお楽しみください!
(※ここから第19話の本文スタート)
「……で? なんでコイツがここにいるんだ、カズ」
郊外の地下隠れ家。アダムが呆れたように指差した先には、赤いLEDの瞳を静かに点滅させている機械少女――ミオドロイドが直立不動で立っていた。
「驚かせて悪かったな。実は明日香と夏帆を見送った後、こっそり着いて来てたんだ」
カズは苦笑しながら答えた。
「あの地下三階で、無数の蜘蛛ドローンを瞬殺したあの動き……今の俺たちには、このイデアの極秘テクノロジーの塊である彼女の戦力とハッキング能力が絶対に必要だと思ったからな」
「マスター・カズノ判断ハ合理的デス。私ハ、防衛・殲滅ニ特化シタプロトタイプ。戦力トシテ申シ分アリマセン」
ミオドロイドが無機質な声でカズの言葉を肯定する。
その横で、エリスが腕を組みながら、ジト目でミオドロイドを睨みつけていた。
「……最強のメイドは私一人で十分です。先輩も物好きですね、いくら妹のミオちゃんそっくりだからって!」
相変わらずのヤキモチを焼くエリスを宥めつつ、カズは作戦の要題を切り出した。
「ミオ。オブシディアン・ミリテックが、この街のどこにクローンの製造工場を隠しているか、逆探知できるか?」
「肯定。……スデニ、特定済ミデス」
ミオドロイドが両手首のポートからケーブルを伸ばし、アダムのコンソールに接続する。空間にホログラムのマップが投影され、臨海区にある巨大な「旧浄水場施設」が赤くハイライトされた。
「ココガ、偽装サレタ第一プラント。街ニ潜伏シテイル『置換型クローン』ノ生産拠点デス」
「よし、潰しにかかるぞ!エリス、アリス、アダム準備だ。……だが、その前に」
カズが自身の胸元に手を当てた、その時だった。
『――ふん。ようやく我を頼る気になったか、愚かな器よ』
眩い黄金の粒子がカズの胸から溢れ出し、空間に具現化する。
神々しい光を纏った黄金の精霊――シフティだ。
彼女はずっとカズの深淵で沈黙を守っていた。
「シフティ! お前、ずっと黙り込んで……今まで何をしてたんだ!」
『黙っていたのではない。観察し、抑え込んでいたのだ。……この狂った19回目の世界で、奴ら(オブシディアン)がバラ撒いているクローン兵器が、どれほど世界のマナ(星の生命力)を汚染しているかをな』
シフティはふわりと空中に浮遊し、冷ややかな瞳でホログラムのマップを見下ろした。
『聞け、カズ。プラントには、ただの置換型クローンだけではない。星の理をねじ曲げて作られた、巨大な『防衛用の異形』がいる。生半可な攻撃では再生するぞ。
奴らを完全に沈めるには、我の力……純度の高い【アルファの光】で、体内にある『黒曜石の核』を直接破壊するしかない』
「黒曜石の核……わかった。シフティ、力を貸してくれ」
『当然だ。お前が死ねば我も消えるのだからな。行くぞ、虫ケラどもの巣穴へ』
*
【 オブシディアン・ミリテック 偽装第一プラント(旧浄水場) 】
深夜の臨海区。冷たい雨が降る中、カズたちは音もなく浄水場の地下施設へと侵入を果たしていた。
そこは、まさに地獄の光景だった。
巨大なドーム状の地下空間には、無数の培養槽が林立し、その中には緑色の液体に浸かった「泥の瞳を持つ人間たち」が、全裸のままプカプカと浮いている。
サラリーマン、学生、老人、子供。これから地上へと放たれ、本物の人間と殺して入れ替わるための『在庫』たちだ。
「……反吐が出るわね。命に対する最大の冒涜よ」
アリスが嫌悪感に眉をひそめ、腰の『三日月宗近』の鯉口をチャキリと鳴らした。
「ミオ、メインフレームをハッキングして、この施設ごと自爆シーケンスを起動しろ。全員で援護する」
「了解シマシタ。マスター・カズ」
ミオドロイドが中央の巨大なコンソールにアクセスした、その瞬間だった。
施設全体に、鼓膜を破るようなけたたましい警報音が鳴り響き、空間が真っ赤なエマージェンシーライトに染まった。
『――侵入者ヲ検知。防衛システム、最終フェーズヘ移行』
ズンッ!ズズズズズ……ッ!!
奥の巨大な隔壁が重々しい音を立てて開き、そこから「それ」が姿を現した。
「……おいおい、冗談だろ」
アダムが煙草を落としそうになりながら、ヘビーマシンガンを構え直す。
現れたのは、全高4メートルを超える、肉と機械の悍ましい融合体だった。
肥大化した両腕には重機関砲が埋め込まれ、人間の顔がいくつも溶け合ったようなグロテスクな頭部が、不規則に痙攣している。
未来で明日香たちが戦っていた異形――【タイラント(暴君)級】のプロトタイプだ。
「ガァァァァァァァァッ!!」
咆哮と共に、タイラント級の右腕から無数の銃弾が嵐のようにバラ撒かれる。
「下がってください、先輩!!」
エリスが前に飛び出し、双剣から漆黒のオメガの魔力を展開して強固な『闇の盾』を作り出し、銃弾の雨を弾き返す。
「――シッ!!」
その隙を突き、アリスが動いた。
足元から青白い稲妻を発生させ、電磁加速鞘が『ギュィィィィィン!』と限界までエネルギーをチャージする。神速の抜刀術。
電磁抜刀術。
【雷閃・三日月】
抜刀、一閃。
青い閃光がタイラント級の巨大な右腕を根本から綺麗に切断した。
「よっしゃ! 今だ!!」
アダムが切断面に向かってヘビーマシンガンを掃射し、ミオドロイドが両手のひらからプラズマサーベルを展開して、巨体の足を溶断しにかかる。
圧倒的な連携。
だが――タイラント級は、倒れなかった。
切断された右腕の断面から、グチャグチャと肉の触手が飛び出し、落ちた金属の腕を無理やり引き寄せ、わずか数秒で元通りに『結合(再生)』させてしまったのだ。
「…う…嘘でしょ、再生したっ!?」
アリスが驚愕に目を見開く。
『言ったはずだ、カズ! 奴らは死を概念として持たない! 核を潰せ!!』
脳内でシフティが叫ぶ。
「わかってる……!! エリス、アリス、アダム、ミオ! 奴の動きを3秒だけでいい、完全に止めてくれ!!」
カズの叫びに、全員が即座に呼応した。
アダムが全弾を頭部に打ち込んで視界を奪い、エリスの黒い魔力が巨大な両腕を床に縫い付ける。ミオドロイドとアリスが、それぞれ左右の膝関節を同時に破壊し、タイラント級をその場に強制的に跪かせた。
「消えろ!!」
黄金の輝きを放つアルファ・レオンの銃口から、轟音と共に一発の光の魔弾が発射される。
バシュゥゥゥゥゥッ!!
発射された莫大なエネルギーの衝撃で空間が一瞬制止し、その直後、凄まじい衝撃波が周囲へと駆け巡る!
カズの放った光の魔弾が、タイラント級の分厚い胸の装甲を貫通し、その奥深くで脈打っていた漆黒の『黒曜石の核』を完全に粉砕した。
ピキッ……パリンッ!!
「ガァアァァァァァァァァ!!!……」
核を失ったタイラント級は、断末魔の声を上げると、全身から光の亀裂を走らせ、泥のように崩れ落ちて完全に消滅した。
『自爆シーケンス、起動完了。コレヨリ、施設ノ崩落ガ始マリマス。脱出シテクダサイ』
ミオドロイドの無機質なアナウンスと共に、施設内の培養槽が次々と爆発を始める。
「やったな……! これで、この街のクローン計画は終わりだ!」
炎上する施設から全速力で脱出しながら、アダムが安堵の笑みを浮かべる。カズもまた、息を切らしながら深く頷いた。
タイラント級という絶望的な強敵を打ち倒し、プラントを破壊した。これで、少しは未来を変えられたはずだ、と。
――だが。
安全圏である高台まで退避し、燃え盛る第一プラントを見下ろしていたカズたちの耳に、ミオドロイドの冷酷な報告が飛び込んできた。
「……マスター・カズ。先ホド、施設ノメインサーバーカラ、オブシディアン・ミリテックノ『世界ネットワーク情報』ヲ傍受、解析シマシタ。コレヲ見テクダサイ」
ミオドロイドが、空中に巨大なホログラムマップを投影する。
それは、この街だけでなく、日本全土……いや、世界地図だった。
「……なんだよ、これ……」
カズの声が、絶望に震えた。
投影された世界地図。
そこに、今しがた破壊した第一プラントと同じ『赤い光点』が、次々と点灯していく。
一つ、十、百、千……。
日本中に、そして世界中の主要都市の地下に、まるでウイルスの増殖のように、無数の赤い光点が埋め尽くされていく。
「……拠点、一つじゃなかったのかよ……」
アダムの口から、煙草がポロリとこぼれ落ちた。
アリスもエリスも、言葉を失い、ただその赤く染まった絶望の地図を見つめることしかできない。
今、死闘の末に破壊したあの巨大なプラントは。
オブシディアン・ミリテックが世界に張り巡らせたクローン製造ネットワークの、ほんの『虫けら一匹』程度の末端施設に過ぎなかったのだ。
「そんな……じゃあ、私たちは、何を相手に……」
エリスが、震える声で呟く。
燃え上がるプラントの炎が、カズたちの絶望に染まった顔を赤く照らし出していた。
彼らは勝利したのではない。
自分たちが、絶対に覆すことのできない『本物の絶望(世界の終わり)』の中にいることを、残酷なまでに思い知らされただけだったのだ。
第二章第20話へとつづく
いつも『19回目の殺意を紅茶に添えて』をお読みいただき、本当にありがとうございます!
今回は、ド派手な総力戦アクションからの、急転直下の絶望エンドでした……!
アリスの電磁抜刀術【雷閃・三日月】や、カズの【アルファ・レオン】によるフィニッシュブロー、カッコよく書けていれば嬉しいです。
そして、妹そっくりのミオドロイドが仲間入りしたことで、またしてもエリスのヤキモチが爆発しています(笑)。シフティもようやく重い腰を上げてくれましたね。
しかし、死闘の末に一つのプラントを潰した彼らを待っていたのは、世界中を埋め尽くすほどの無数のレッドドット(拠点)でした。
▼ 次回予告:第20話
見渡す限りの絶望。世界中が敵の生産工場と化している中、カズたちに打つ手はあるのか?
圧倒的な戦力差を前に、彼らは次なる決断を迫られます。
このバグった19回目の世界で、カズは『最強の器』としてどう立ち向かうのか。物語はさらに予測不能な深淵へと進んでいきます!
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