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英雄と認めるために

「んぅ……。ふああぁぁ……。あれ? いつの間にか眠っちゃった……?」

 体を起こし、大きく息を吸い込んでいると、体に小さな眠気が宿っていることに気付く。


 確か昨夜は、ルクス様の星を見る機械――天体望遠鏡を眺めていたはず。

 夢中になって星空を見つめ続けていたが、朝になると同時に眠ってしまったようだ。


「アハハハ……。眠気に耐えられずに眠っちゃう英雄も、なんだか情けないなぁ。みんなは――居間にいるのかな?」

 体にかけられていた毛布を丁寧に畳んでからソファを降り、居間へと続く扉を開く。


 そこにはやはり、ミタマちゃんにイデイアちゃん、ルクス様にテペス君とラタちゃんの姿が。

 優しい笑みを皆が浮かべているところを見るに、どうやら私はかなり深い眠りに落ちていたみたいだね。


「ゆっくり休めたようだね。ベッドではなくソファで休ませてしまったが、お目覚めはどうかな?」

「眠気はしっかり取れました。でもまだ、瞳の奥に星空が映っている感覚です! 素敵な景色を見せていただき、ありがとうございました!」

 ルクス様に感謝を伝えた後、イデイアちゃんたちが座るソファに移動する。


 私が突如として眠ってしまった時のことを、二人はからかうように語りだし、クスクスと笑いだす。

 頬を大きく膨らませつつソファに座り、用意してくれた水を口に含む。


「リヴァイアサンからの試練を達成しつつ、各大陸を巡っているんだったね? アディア大陸、インヴィス空中大陸とやって来たということは、次に向かうはアイラル大陸かい?」

「ええ、そうなります。雷鳴山に住まう聖獣――ハタヒコ様にお会いし、試練を頂戴しようと考えています」

 ニーズヘッグ様の試練は問題なく突破、フェンリル様の試練はかなり特殊な形で達成することができた。


 ハタヒコ様は、どのような試練を課してくるだろうか。


「ハタヒコとは既に会っているんだったね? それはつまり、雷がひっきりなしに降ってくる雷鳴山の登頂に成功したということ。それだけでかなりの力を有しているということだから、私も試練の内容を想像するのは難しいね……」

「案外、ハタヒコ様とやらも試練の内容を決めあぐねているかもしれないな。二回も危険な山を登頂することに成功すれば、力に不満はなし。知識も勇気も満点以上ということになるだろうさ」

「ニーズヘッグ様の時もそうだったけど、求められたのは力とかじゃなかったもんね……。レイカちゃんはもう、英雄としての力は問題なく宿っているんじゃない?」

 仮にミタマちゃんの言うことが正しかったとしたら、なぜレヴィア様は私に試練を課したのだろうか。


 もちろん、私が試練を与えて欲しいと言ったことも理由にあると思うが、世界を巡り、聖獣たちから認められるなどということをしなくても良いはずだ。


「もちろん、更に実力を付けて欲しいと考えている部分もあるだろう。だが一番の理由は、自身が英雄であると、自分自身が認められるようになって欲しいと考えたからではないだろうか?」

「私自身が、私を英雄と認められるように……?」

「君は誰かから認められることで、英雄になれると考えているんだろう? それは決して間違いじゃないし、象徴としての英雄であるなら正しいさ」

 象徴としての英雄。私は、皆にもてはやされるためにそれになるつもりは無い。


 世界に暮らす命たちが、さらに先の未来を生きて行けるようにするがために、小惑星ヴァラクと戦おうとしているだけ。

 もちろん、全てを成した後に多くの人たちが喜び、褒めたたえてくれたら、すっごく嬉しくはあるけどね。


「昨夜にテペスが言っていたように、その心意気そのものが英雄にふさわしいんだが、君自身が納得できていない。これから先の旅は、いかにして自身を納得させるかに重きを置いてごらんよ」

「してもらうだけでなく、自ら考えて行動してみろということですね。分かりました。助言を心に、進んでみようと思います」

 そういえばお兄ちゃんが、与えられた道だとしても、自分で考えて新たな一歩を踏み出せば、それは自分の道になると言っていた。


 私に必要なのは、一歩を踏み出すための力と知識、そして勇気。

 自分自身を英雄と認めるために、頑張ってみよう。


「さあ、仲間たちと共に世界を見ておいで。一所に留まっていては、道など見えてこない。雷鳴轟く嵐の中であろうと、進むからこそ答えを見つけられるんだからね」

 ルクス様のお言葉に大きくうなずきつつ、ソファから立ち上がる。


 共に歩んでくれる仲間たちと共に扉を開き、橙色の光が挿し込む大地に足を下ろすと、目の前には空をも飛べる不思議な機械が。

 それの乗降口には、ニコリと笑みを浮かべるシルバルさんの姿があった。


「おはようございます、皆様。次なる地に向かうための準備は完了しておりますよ」

「ありがとうございます。それでは早速、出発しましょうか。テペス君も、私たちの旅についてきてくれるんだよね?」

「はい! ラタさんとはもっと交流を深めておきたいですし、成長した姿をハタヒコ様にお見せしたいので! 未熟者ですが、よろしくお願いしますね!」

 風の聖獣フェンリル様の子、聖獣見習いのテペス君を一行に加え、飛空艇は空中大陸から離れていく。


 次の目的地はアイラル大陸。

 雷の聖獣ハタヒコ様が見守る大陸であり、私が生まれた故郷の大陸だ。

ご覧いただき、ありがとうございます。


次回は、もう一人の英雄候補のお話です。

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