表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/155

第七話 怪物狩り放題な一日(2/9) 野望に燃える少女

「で、結局ヴァラデアさんが家へ乗り込んできて、お母さんを取り押さえたんだよ。そのあとに心の病気だってことがわかったんで、お母さんを病院に入れたの」

「うわあ」

「完治までかなり時間がかかりそうだって言ってたよ。もともと体も悪かったし、良くなってくれればいいんだけどなあ」


 プレイルームの片隅にある木製テーブルに全員集合中。頭が冷えてまともな会話をしてくれるようになったカレンから、ヴァラデアに引き取られることになった経緯について改めて説明を受ける。

 最初はこの変な女と会話するのは嫌だったが、手土産に果物たっぷりのサラダ盛り合わせを贈ってくれたので許してやった。ぬかりなく好みを調べていた用意の良さは称賛に値する。


 ちなみにサラダは完食済みだ。肉が大好きな妹は手を付けなかったので、独り占めすることができた。ときには良いことがあるものである。

 みずみずしい野菜はやはり良い。豊富な水分が肉料理で脂ぎってしまった牙を洗い流し、肉では決して聞き取れないシャキッとした咀しゃく音が心の脂を落とすのだ。


「お母さんが回復するまではヴァラデアさんが後見人をやるってことで、私たち二人とも引き取られて、ここに引っ越してくることになったわけ。回復した後も住み続けることになりそうだけど」

「そうなんだ。後見人って……お父さんはどうしたの?」

「うち、母子家庭だから」

「ごめん。ええと、じゃあ親戚は? 親戚とかいるはずじゃない? 引き取るにしても、普通はそっちから当たるものだと思うけど」

「うん、確かに叔父さん叔母さんはいるんだけどね。でも、ヴァラデアさんに逆らえる人はいないよ。ヴァラデアさんが引き取るって言ったらそうなるの。あ、いちおう筋はちゃんと通してるらしいから、きみが気にすることないからね」


 犯罪臭さを漂わせる話なためか、カレンは少し苦笑いをして言い辛そうにしている。

 だいたい予想の範囲内の答えに思わず吹き出した。


「相変わらず強引だなあ。なんでそこまでするんだか」

「たぶんだけど、きみたちの相手をする人が欲しかったからだと思うよ。ヴァラデアさん、私たちに『身命を賭して私の娘たちを支え続けろ』って言ってたし」

「そうなの……かもね」


 この屋敷に勤める人間は大人ばかりだ。近い年代の者がいないので、対等なコミュニケーションを取りづらい。

 近い歳というだけなら不定期で通っている幼稚園に居るにはいるが、そこに通う園児相手だと精神年齢の差が大きすぎるせいで、絶望的に反りが合わないのだ。


 大人ではだめ、幼児でもだめという現状。ならば、カレンとリュートという思春期前後の少年少女なら、相手としてはちょうど良い年頃の人物なのかもしれない。

 いや、きっとヴァラデアはそうだと確信したのだろう。そうでなければ強引な手を使ってまで人間を引き取ったりなどしないはずだ。あの母は、己の娘たちを健やかに育てていくためならば、手段を選ばないのだろうから。


「ふふふ、でもヴァラデアさんには感謝してるよ」


 カレンは激しい音を立ててテーブルに強く手をつくと、勢いよく身を乗り出してぐいっと迫ってくる。


「感謝……? 私のお母さんがやったことって、家庭に無理やり乗り込んで一家をめちゃくちゃにしやがったことくらいじゃない?」


 ビミョーな気分からの問いかけに対して、カレンは黙って首を振って否定する。


「これはね、私たちにとって大大大チャンスなんだよ。きみたちに気に入られれば大出世間違いなし! そうすれば家族みーんなが幸せになれるの! リュートも、お母さんも、叔父さん叔母さんも、みんなみんな! わたし頑張るからね!」

「あ、うん。そう。頑張りなよ」


 炎が見えそうな握り拳を作って挑戦的に笑ってみせる。わかりやすい野心がダダ漏れだった。


 この国において、ヴァラデア一族に気に入られることは、人生の勝利者になることを意味している。それはすなわち“絶大な権力者の後ろ盾を得ること”だからだ。しかも後世に渡って。そのため、ドラゴンとお近づきになろうとする人間はそれなりにいるらしい。

 カレンもその一人ということなのだろう。でも、売り込み対象の目の前で堂々と野望を吐露するのはどうかと思う。


「カレンさあ、もうちょっと言葉を選ぼうよ」

「ドラゴンはね、正直者が好きなんだよ。だから私は正々堂々行くよ」


 リュートのおずおずとした忠告に対してカレンは堂々と答えるが、胸を張って口に出すような内容ではない。


「そういう考え方やめろって。普通に友だちになろうでいいじゃん」

「ドラゴンと友だちになるってことはね、打算も含めてすべてを受け入れ合う関係のことを言うの。それを忘れちゃあいけないよ、失敗はしたくないからね」

「もうドラゴン分析本のことは忘れろよ! ほら、あの子なんか疲れた顔してる!」

「ハッ! なに言ってんの! じゃああんたさ、『友だちになろう』でドラゴンに通じると本当に思ってんの? 人間とドラゴンじゃ価値観が全然違うんだよ? 私ら人間の当たり前を押し付けてうまくいくはずがないよ!」


 姉がとんでもないことを口走ると、弟がすかさず突っ込みを入れる。一点の淀みもない息の合ったやりとりだ。仲のいいことである。

 生暖かい気持ちで姉弟の舌戦を眺めていると、妹の問いたげな顔がすっと視界に割り込んできた。


「おい、友だちってなに? 強い?」

「急になにを。うーん、友だちねえ」


 唐突な質問により急激な思考の方向転換を強いられる。

 友だち、友だちとはなにか。もともと定義があいまいな言葉なので、ぱっと説明が出てこない。幼児かつドラゴンに理解できるように教えるには、どう言ったらよいものか。


 しばし黙考してみると、ぽんとエクセラの姿が思い浮かぶ。

 絶大な力を誇るドラゴンと対等な関係を結んでいる女丈夫。力量や身分に関係なく、互いを下に置かずに尊重し合い、必要なときには苦言もいとわない。あれこそ“友だち”の理想形の一つなのではないか。いつかはああいった人と出会いたいものである。


「えーとそうだね、友だちってのはエクセラさんみたいな人のことかな? うん、あの友だちは強いよね」

「エクセラってなに?」


 そのつぶらで愛らしい青の瞳に悪気は一切感じられない。不意打ち的質問にすっ転んでしまう。

 この子は覚えは異様に良いくせに、どうしてこう、人間に関する覚えだけはテキトーなのか。全方面で人当たりが悪すぎて、ちょくちょく心配になる。


「……ええとね、お母さんと、いつも、いっしょにいる、人間の女、のことなんだけど」

「んー、あの強い人間のメス?」


 妹は天井を見上げると長めの首を右に傾げる、左に傾げる。少し間を置いてからまた右に傾けて、ちょっと考え込む素振りを見せたあと、くるくると甘え鳴きしながらすり寄ってきた。

 今の話でどういった結論に至ったのかがわからない。わからないが、慕われているように思えて悪い気はしなかった。


 いつになくかわいらしい仕草を見せる妹の背中を撫でている間に、姉弟の論争も決着したようだ。


「失礼失礼。あ、お取り込み中かな?」

「いや、お構いなく」

「仲いいねえ」


 姉弟は妹が甘える様を和やかそうに鑑賞したあと、居住まいを正して並び立ってから、そろって頭を下げた。


「私たちは、この屋敷の居住区に住んでいます。良かったら遊びに来てください。これからよろしくお願いしまーす」

「うん、よろしくね。って、きみらあそこに住めたんだ。そこまで期待されてるんだねえ」

「ふふふ、それに応えるのが私たちの仕事なのですよ。相応の仕事をさせていただきます!」

「豪華すぎて気が引けるよあそこ。僕も頑張るからね」


 姉は堂々と胸を張って、弟は控えめにうつむきながら、それぞれの決意を述べた。


 カレンが言う居住区とは、この屋敷で働く人が住むための部屋がある区域のことである。ただ、そこに備わる部屋はただの部屋ではない。


 そこで暮らしているエクセラの話によると、家族十人暮らしでも全員が個室を持てるほどの広さで、高級住宅街に建つ豪邸に匹敵する質の設備があるらしい。

 それでいて家賃など諸々の維持費が完全無料という、至れり尽くせりの待遇とのこと。無敵のドラゴンも警備員としてついてくるので犯罪対策もばっちりだ。

 もちろん、相応の資格を持つ者だけが入居を認められるので、気軽に使える物件ではないようだが。


 そんな厚遇を受けることができたこの姉弟。本当にヴァラデアから期待されているのだ。母の本気ぶりが知れた。


「いやー、あそこは広くてきれいで本当にいいねー、前の家とは大違いだよ。待遇分の働きをしないと罰が当たるね。ほら、生活改善したおかげで、こんなに髪がつやつやに!」


 カレンは艶やかな赤毛を指先で撫でて見せつけてくる。見れば確かによく手入れされている、実に健康そうな質感である。


「そこまでいいところなのか。んー、場所は知ってるんだけど、あそこは一度も見に行ったことがないんだよね。私たち、だいたい決まった部屋にしか行かないから」


 そう言った瞬間、カレンが一歩前に踏み出ると、草食獣の群れに物陰から強襲する肉食獣のごとく食いついてきた。

 動きが完全に野生の獣のソレだ。この上なく効率的で、あまりにも必死過ぎる。


「だったらさっそく私たちの部屋に来てみる? 興味があるんだよね? 今すぐでも歓迎するよ!」

「いやいやいや、いいから遠慮するから。急になにを言い出すの」

「あはは、冗談冗談。まだ会ったばかりだしね」


 いきなり私室に誘うなんてとんでもないと、おかしそうに笑いながら手振りで否定する。そうは言うが、今の誘いの言葉は妙な迫力が感じられ、冗談には聞こえなかった。


 『はい』と答えていたら、そのままカレンたちの部屋に引きずり込まれていたかもしれない。まったく、油断も隙も無い女である。


 これでするべき話は終わった。そろそろ解散と思いきや、カレンはまだ用事があるようで、やや前のめりの体勢になって顔を寄せてくる。

 攻め一色の雰囲気をまとう彼女は、今までとは少し毛色の違う話を切り出してきた。


「ねえ、明日……は雨か。明後日は予定空いてないかな? きみたちといっしょに遊びに行ってみたいところがあるんだけどさ」

「……なにをするつもりなの? 用件を先に言ってよ」

「狩りだよ。獲物がたくさんいる山があるそうでさー」


 “狩り”という言葉を聞いたとたん、胸がどくんと高鳴る。妹の尻尾もぴくりと揺れる。


「私ね、実はハンターの免許を持っててさ、狩った獲物を売れるツテがあるんだよね。さあ、私たちと協力してたくさん狩って、ひと儲けしよう! どうかな?」


 彼女は息巻いてびしっと拳を突き出すと、『どうだこの魅力的な話は』といった感じで得意満面に提案してきた。


「ほ、ほほお、狩りかぁ、いいねぇ~~」


 今までカレンに抱いていた悪い印象をすべて吹き飛ばす、本当に本当に魅力のある最高の提案だ。

 獲物が血しぶきをあげて死んでゆく様を想像すると、ついつい口元を全力で釣り上げて牙を剥きだしにしつつ爪で床を引っ掻くという、歓喜の肉体表現をしてしまう。そんな獣同然の仕草をしてしまっているのを自覚しているけど、無上の昂りの前には気にもならない。

 ドラゴンという猛獣は、“狩り”によってのみ真に満たされる生き物だということは聞いていたけど、やっぱり自分もドラゴンなんだと実感する瞬間であった。

 人間にはいまいち慣れない妹も興味を持ったようで、カレンたちを暴力的な光を宿す目でじっと見つめていた。


 本当にいい話だ。とてもいい話だ。いいんだけど、その提案には一つの大きな穴がある。衝動のままに頷いたりはせずに、しっかりと確認は取っておく。


「うーん、いいんだけどさ、けっこう遠くに行くんじゃない? 私たち子どもだし、遠出はお母さんが許してくれないと思うよ」

「いや、だいじょうぶだよ。行ってもいいよ」


 そこで不意にヴァラデアのお許しの言葉が割り込んできた。

 姿は見えないが、声だけが頭の中に響く。音を用いないドラゴンの“音なき声”で、壁越しに話しかけてきたのだ。

 ちなみにヴァラデアは今、隣の部屋でエクセラといっしょになって待機している。


「え、いいの? うちの庭よりもずっと遠くに行くことになるじゃない。いや、嬉しいけどさ」

「そこまで閉じ込めることはもうしないよ……産後のときとは違うんだ、獣だった産後とは。ああ、もちろんおまえたちだけで行くのは駄目。いちおう私もついていくからね」


 ヴァラデアはなんでもないことのように答えてくれる。

 子どもだけでの遠出は許さないが、保護者同伴なら問題なしということだ。生まれたての頃は部屋から出ることすら許してくれなかったというのに、自分たちの成長ぶりにはちょっと感無量である。

 今後はちゃんとお願いすれば、いろいろなところに連れて行ってくれるかもしれない。これからの暮らしはたぶん明るい。


「それで、どうするんだ? シルギット。狩りに行くか行かないか」

「もちろん行く!」


 思い立ったが吉日、即決で行くことにした。


「狩り! クルルルゥ狩りっ!」


 その決定に妹も大満足そうに両前足をあげていた。こういう話には良く食いつく。


「そうか、わかった。予定を組んでおこう。明後日なら晴れるはずだから、いい狩り日和になるだろうね。

 あ、そうそう、今回は車で行ってもらうよ。おまえたちのために特注の最高級キャンピングカーを用意しておいたんだ。そこのカレンちゃんとリュートくんも乗せられるくらいの大きさだから、たっぷりとくつろげるはずだ」


 目の前に二つの立体映像が現れる。

 一つ目は、最高級キャンピングカーとやらの外観だ。見た目は普通の青い大型車である。

 二つ目は車の内装だ。こちらは外観と違って普通とは程遠く、異様にぜいたくな造りになっている。


 床は大理石張りと思われる素材で、真新しい壁は暖色の壁紙が張られている。天井は素材自体が発行する照明天井か。革張りの三人掛けソファが二台に木目調の机が一基、調理台、冷蔵庫、大型の収納なども用意されている。

 それだけの設備が詰まっているにも関わらず、人間の大人が二・三人くらいは床に寝転がることができそうな広さがある。まるで高級ホテルの一室のようである。


 わけのわからないくらいに高そうな車を見せられては、妹を除くみんなで唖然とするしかなかった。


「ふふ、気に入ったようだな。この私自らが夜なべして組み上げたのだから当然だろうな。では、明日を楽しみにな。さあエクセラ、あの子たちの送り迎えは任せられるな?」


 ヴァラデアがエクセラに一言お願いをすると、なぜかそこで言葉が途切れて妙な間が空く。

 耳を澄ませてみると、エクセラが『明後日は用事があるのに』、『自分で連れて行きましょうよ』などと言っているのを聞き取れた。


「そ、そんなこと言うな。私はおまえ以外の人間を背に乗せるなんて嫌なんだよ。いやー、うーん、そもそも乗り慣れてないと危ないしー、たぶん。えーと、定員オーバーしてるしー」


 ヴァラデアは、なんかえらく弱腰な態度でたどたどしく言い訳を並べ立て始める。

 思い浮かぶのは、人間であるエクセラにへこへこ頭を下げて嘆願するドラゴンの姿だ。カレンたちもすぐ横で話を聞いてるというのに、情けないを通り越して恥ずかしくなってくる。


「いや、それよりも私はおまえの華麗な運転を見たくてだね、だからわざわざ予定を空けて……あーッ!?」


 言い訳を遮るヴァラデアの悲鳴とともに、なにか細かいものがカラカラと崩れて地面に散らばる音がした。

 壁の向こうでドラゴンの気配だけが慌ただしく動き回るのを感じる。


「くそっ、あと一息で五十段まで積み上がったのに……あっ、ま、待て。待つんだエクセラ。積み上げるんじゃあない。その手を止めるんだ。このままじゃ私に勝ち目がなくなってしまうじゃあないか! 戦友だろー!?

 ああ、うん。くっ、やめろ、そんな目で見るのは……現役時代を思い出して、ちょっぴりゾクっときちゃうぞ。いや、気持ち悪いなんてそんな……と、とにかく車で行ってもらうからな! わかったな!」


 そんな捨て台詞を残して、ヴァラデアの音なき声は遠ざかっていった。


 大人たちはいったいなにをしているのだろうか。あまりにもアホらしいやりとりだ。

 今のアホ臭さ満点の会話を聞いていたはずの姉弟をちらりと見てみる。


「うん、やっぱりだいじょうぶみたいだね。よかったよかった! これで明後日は四人で狩り三昧だね!」


 にかっとサワヤカな一笑い。不自然なまでになにも気にしていないようだった。あるいは気を遣ってくれたかだ。


「ちょっとカレン、四人って……もしかして僕も狩りに連れてくつもり? 僕、ハンター免許持ってないから猟銃とか使えないんだけど?」


 先ほどから黙りっぱなしだったリュートが、姉の顔を覗き込みながら不安そうに問う。


 狩猟用の銃器などは、ハンターの免許を持っていなければ使うことができない。

 狩猟銃に限らず、“人間を殺傷可能な武器全般”は無資格の人が使おうとしてもセキリュティが働いて動かなくなるのが当たり前なのだ。

 これでは彼だけが手ぶらで狩りに参加するハメになってしまう。


 が、カレンは弟の肩をがしっと掴んで、安心させるように優しく語りかける。


「だいじょうぶ! ヴァラデアさんにお願いして、あんたでも使える銃を用意してもらうから」

「えーっ、そんなことするのかよー!?」

「するの! 初めてのお付き合いだっていうのに、みんなでいっしょに楽しまなきゃ意味ないでしょー? ヴァラデアさんもわかってるはず!」


 セキリュティを破る気満々のようだった。

 確かにヴァラデアならどうとでもできそうだが、引き取られた身でよくそんなことを思いつくものである。お世話の一環とはいえだ。いろいろな意味で清々しい。


「そのうち免許はとるつもりでしょ。いい機会なんだから実践実践!」

「なんというか、あーもう」


 リュートは裏口入学的提案に困惑を隠せないようだ。そんな彼を放置して、カレンは振り返ると締めに入った。


「うん、これでよし! じゃあ、私たち他の仕事があるから、そろそろ失礼させてもらうよ。明後日を楽しみにしててね!」


 今の話で予定していた用事がすべて済んだのだろう。短い別れの言葉とともに、弟の手を引っ張ってさっさと退室していった。


 嵐のように出会い、勢いをほとんど弱めることなく過ぎ去っていく。まったく慌ただしい姉弟だった。うるさいのは姉だけだったが。

 『明後日の狩りも慌ただしいことになるんだろうなあ』と予感しつつ、狩り狩り言って愉快そうに体を揺らしている妹の背中をそっと撫でた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ