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そして魔法少女と星獣は。③




「春秋さん!」

「おお、来たか。座れ座れ」

「いらっしゃい~」


 電話に従って瑠那を連れて春秋さんの家へと向かう。

 待ち構えていたフェスさんに家へ入れて貰うと、リビングで春秋さんが待っていた。

 四ノ月さんはもちろん春秋さんの膝の上でまったりしている。


「ってあれ。ユーもいたのか」

「……呼ばれたんだよ。瑠那に大事が起きてるって言われたら来ないわけにはいかないだろ」


 むすっとした顔のユーもいた。まあ瑠那と契約してる星獣なんだからいてもおかしくないけど……。


「僕の瑠那がハレンチな格好をしているー!?」

「誰が僕のだ! 瑠那は俺の彼女だぞ!」


 とりあえず瑠那を降ろしたらユーが瑠那の姿を見て驚いていた。でも誰がユーのだ。瑠那は俺の彼女だ。絶対に渡さないからな。


「あー、どうでもいいことで喧嘩するなお前ら。秋桜、お嬢ちゃんにタオルケットでもかけてあげな」

「はーい!」

「あ、ありがとうございます」


 四ノ月さんが用意してくれたタオルケットを羽織って、瑠那がちょこんと俺の隣に座る。ユーも渋々といった表情で俺の隣に座ると、春秋さんがぽつぽつと口を開いた。


「まあ端的に言うとだな。グリード・コアヌスの魔力とお嬢ちゃんの魔力が融合している」

「融合、ですか?」

「適正があったんだろうな。ごく稀にあるんだよこういうの」

「な、治るんですか?」


 瑠那が不安な表情で質問を投げる。そりゃあグリード・コアヌスを倒して貰ったと思ったらこの結果だ。心配なのも仕方ない。


「治す必要があるのか?」

「え……」

「その魔力は属性的には闇属性だが、お嬢ちゃんに悪影響は一切無い。というかお嬢ちゃんの属性が元から闇よりの属性だったから起きた現象だ」

「え、私闇属性だったんですか……?」

「気付かなかったのか? まあこっちの人間は魔法とかまったく関係ない人生を歩むからなしょうがないか」


 瑠那が闇属性……え、というか個人個人で魔力の属性とかあるのか? それこそ初耳だ。

 とはいえ春秋さんも――こっちの人間は魔法に関わらない人生を歩むから仕方ない――と言っているのだから、当然といえば当然か。


「てかユニコーン、お前は知っているだろう?」

「そうなんですか?」

「そうなのか、ユー?」

「…………いやー、知らなかったなー」


 ……おいこいつバレバレな嘘を吐いてるぞ。冷や汗だらだら流してるしあからさまにそっぽを向いてるし。


「大方あれだろ? お嬢ちゃんが好みだったから敢えて教えなかったんだろ? 教える必要だってないと勝手に判断してな」

「ぎくっ」

「意地が悪いよなー。自分が与える属性と正反対の属性だから自然と魔法少女としての力も伸びにくくなるってわかってるくせに」

「……え」

「……ユーくん?」

「待て待て待て待て落ち着け大空浩輝! 瑠那も! 違う。聞かれなかった! 聞かれなかったしわざわざ教える必要もなかったのは事実だ! それにコズミック・ルナはそれでも魔法少女として破格の力を持っていたのは確かだろ!?」

「その言い訳はさすがに擁護も出来なくなるぞ……」


 瑠那がミラクル・コスモスを見て悔しそうにしていた顔を思い出す。瑠那は瑠那で必死に島を守ろうとしていたのに、力を伸ばす方法があったかもしれないのに――ユーは意図的に黙っていた。


「まあユニコーンの言い分もわからなくはない。お嬢ちゃんの才能が凄すぎて他の星獣にスカウトされたくなかったんだろ?」

「……仰るとおりです。瑠那はそこの秋桜同様に圧倒的に天賦の才を持っている。それこそ正反対の属性を与えても、島を襲撃する《侵略者》程度には絶対に負けないほどの才能がね」

「だが黙っていたのは良くない。せめてグリード・コアヌスと交戦する前に伝えておくべきだっただろう」

「……もうしわけございません。確かにそこは僕の判断ミスです」


 ユーが真っ正面から謝っている光景はなんとも珍しい。まあ、それだけ管理者――春秋さんの影響力が強いと言うことだろう。


「瑠那、それに大空浩輝。申し訳ない」


 ユーがしおらしく頭を下げてくる。……なんか釈然としないが、ここは過ぎたことだと割切るべきだろう。

 問題はそこじゃないんだ。今優先するべきことは、ユーとの契約云々ではない。


「とりあえずこの衣装を直すことは出来るんですか?」

「直す必要があるのか? お前は好きだろこういうの」

「好きですけど刺激が強すぎるんで……」

「……せ、先輩が好きならこのままでもいいですけど」


 瑠那も大胆になったなぁ。いや、あれか。春秋さんの説明からするとグリード・コアヌスの魔力が融合したのだから、多少でも影響を受けているのかもしれない。

 それに俺にだけこういう態度をしてくれるのは嬉しいしな!


「み、私とフェスは相性抜群だもんね~」

「はい~。でも秋桜様はサクラの魔法を好んで使うんで私との相性ほとんど必要ないんですけどね~」

「みみみ。ごめんなさい」

「いえいえ~。私は秋桜様が元気に舞ってくれるだけで十分ですよ~」


 しゅーんとする四ノ月さんをフェニックスがフォローしている。

 最強の魔法使いと言われているし、四ノ月さんは星獣にも恵まれたのだろう。

 ……で、だ。ちょっと思いついたというか気になったというか。


「ちなみに……ですが、春秋さんってそういう属性はあるんですか?」


 なんたって《管理者》だ。全属性に対応してるとか言い出しても不思議じゃない。

 みんなが都市伝説だと思っている《管理者》。俺と瑠那くらいしか知らない秘密とか……ちょっと知りたくない?


「俺か? 俺は炎だよ。炎。少年漫画の主人公っぽいだろ?」

「うわ確かに。でも炎属性から全属性に覚醒したりとかするんじゃないんですか?」

「覚醒というか適正なんか飛び越えてぜんぶ扱えるようにはなったけどな。そもそも属性魔法なんか使う必要ないレベルだし何だったら時間だって操れるし異世界転移も出来るけど」

「ですよね」


 さすがは管理者というか、なんかさらっと凄いことを言ったような気もするけど……そこは気にしないでおこう。


「みぅみぅ。お父さんだったら片手でこの島も沈められるしねー」

「指二本かなー」


 ……聞かなかったことにしておこう。


「でも瑠那ちゃんでも本気出せばこの島くらい沈められるよ? 星獣と契約した魔法少女ってそういう存在だし」

「えっ」

「えっ」


 コズミック・ルナでも出来るの!?


「そ、そうなんですか? 魔法少女ってそんな危ないんですか?」

「まあだから星獣は契約者をしっかり選ぶんだけどな。力に溺れて暴走しないように……な」


 春秋さんがちらりとユーのほうへ視線を投げる。

 まあ、人選は間違ってなかったよな適正はともかく適正は。


「まあ衣装を変えたかったらユニコーンと契約を上書きするといい。基本的に魔法少女の設定はぜんぶ星獣が握ってるからな」

「あ、そうなんですね。じゃあユーくん、契約の上書きをお願いします」

「……うー、わかったよ」


 さすがにユーも自分の失態がバレては強く拒絶出来ない。これなら上手く契約を上書きないし破棄出来るだろう。

 問題は、その内容だけど。……できる限り瑠那に有利な内容にするか、ユーとの契約を破棄するかだな。


「ま、契約の話は置いといてたまには他の魔法少女の活躍でも見ようぜ」

「み、エルルちゃんだね!」


 春秋さんがテレビを付けると、タイミングが良かったのかちょうど《侵略者》の実況が流れていた。画面に映っているのはこれまでに見たことがないタイプの《侵略者》――ではない。あれガ○ラだ。亀だ。


 一方で相対するのは、第三の魔法少女。


 七対の漆黒の羽によって空を飛んでいる、緑髪の少女。軽装に見える鎧を着込み、琥珀色の瞳がガ○ラを見つめている。


 あれが……スペルビア・エルル。

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