そして魔法少女と星獣は。④
画面越しに映る第三の魔法少女――スペルビア・エルル。
……魔法少女?
七対の羽を生やして。鎧を着込んで。正面で剣を突き刺して構えている。
「ラスボスじゃないんですか?」
「言いたいことはわかる」
いやだって魔法少女と言えばひらひらのドレスできゃるるるんな杖を振り回して魔法を華麗に使うものじゃない?
羽は百歩譲っても……いや七対十四枚はおかしいだろ!
鎧って! ドレスは!?
剣って!!!! 魔法を使うためのステッキは!?
どこをどう見ても魔法少女要素がゼロじゃないか!
「……先輩は魔法少女だったら誰でもいいんですか?」
「違うから! それでも魔法少女には一言物申したいんだよ!」
「みー。よくわからないけど、先輩がひどいってこと?」
「四ノ月さんまで!?」
ジト目で瑠那に睨まれるし、四ノ月さんからも変な評価を貰ってしまった。
不本意だ……俺はこんなにも瑠那一筋なのに。
「せ、先輩は私の恋人なんだから他の魔法少女は見なくて良いんですっ」
「瑠那……。そうだな。俺も瑠那だけを見続けていたいよ」
「先輩……っ」
「瑠那っ」
ひしっ、と瑠那と抱きしめ合う。小さな瑠那の身体は暖かくて柔らかい。いつでも抱きしめていたい素敵な感触だ。
「おーい。続き見るぞー」
春秋さんに促されてテレビの前に戻る。
とはいえ状況はあまりにも圧倒的だった。瑠那や四ノ月さんの戦いも見てきたけど、スペルビア・エルルの戦闘は――おおよそ魔法少女とは思えなかった。
画面越しの三人目の魔法少女は、翼を羽ばたかせ大剣を振り下ろすパワータイプだ。魔法は使うけれど、あくまで牽制目的だ。
ガ○ラに似た《侵略者》だけあって、背中の甲羅――装甲は非常に堅牢に見える。繰り出される魔法のほとんどを弾いてはいるが、大剣が振り下ろされる度に甲羅は欠けていく。
ガ○ラは苦しそうな雄叫びを上げながらも炎を吐いてスペルビア・エルルを近づけさせないようにする――が。
大剣を一薙ぎするだけで炎は振り払われ、驚愕に表情を歪めたガ○ラは接近を許してしまう。
決着がついた。
スペルビア・エルルが振り下ろした一撃によってガ○ラは両断され、爆発四散する。
「あっさり決着したなぁ」
「みぅみぅ。エルルちゃんも強いもんねー」
「はい。いつ見ても力強い戦い方です」
四ノ月さんと瑠那がスペルビア・エルルの戦いを賞賛する。俺は魔法少女と思えない戦いに素直に声をあげられないが、それでも島を守ってくれた存在だ。
「今日も今日とて街の平和は守られましたとさ」
「まあお父さんが《ゲート》を守ってる以上は私たちだけで倒せる《侵略者》しかこないしねー」
「え……春秋さんって普段なにをしてるんですか?」
四ノ月さんの言い分だと、まるで春秋さんが《侵略者》のほとんどを撃退しているようじゃないか。
「《ゲート》の中で大半の侵略者をボコってる」
「えー……」
まじだった。そうか、だから普段から《管理者》を見かけることがないのか。
島での戦いは魔法少女たちに任せて、自分はそれ以上の存在を《ゲート》を通さないために奮闘している。
……改めて、凄い人なんだな。
「弱い奴はさすがに島に任せてるんだよ。俺も一人だしそこまで手が回らん」
「みぅみぅ。そこは私に任せてくれればいいんだよっ。お父さんのお手伝いなら私がなんだって頑張るよーっ」
「秋桜は良い子だなぁ!」
「みぅー!」
春秋さんが四ノ月さんを抱きしめてわしゃわしゃし始めた。仲睦まじい親子というか……飼い主と子犬? いやでも微笑ましい光景だなぁ。見ているこっちが和む。
「……いいなぁ」
「瑠那?」
「な、なんでもありませんっ!」
瑠那が俺と春秋さんをちらちら見ている。春秋さんというより……四ノ月さん?
いいなぁ、って言ってたけど……あー、なるほど。
「……夜にな?」
「~~~っ!」
瑠那が甘えたがっているなら俺はそれに応えるだけだ。表情を明るくした瑠那がこくんこくんと激しく頷く。やべ、俺の彼女可愛すぎない……?
なんか尻尾があったら激しく動いてそうな感じだった。
「馬鹿親子とバカップル……」
「あらあら~。平和な光景でいいじゃなりませんか~」
ユーとフェニックスがなんか言ってるが、アーアーキコエナーイキコエマセーン。
「……で、だ。ちょうどいいしちょっとした頼み事を受けてくれないか?」
話も一段落した頃、瑠那の着替えが終わったところで春秋さんが口を開いた。
頼み事……? 春秋さんが人に頼みをするって意外というかなんというか。
「簡単なことだよ。この手紙を届けて欲しいんだ」
「手紙、ですか?」
「ああ。こいつにな」
そう言って春秋さんが指さしたのは、画面に映る存在。緑髪の魔法少女――訂正、ラスボスことスペルビア・エルル。
「それ、俺じゃなきゃダメなんですか?」
何の内容かはわからないけど、見知らぬ俺が行くよりも《管理者》である春秋さんが行った方が意味があると思うのだが。
「俺が行っても顔を見せないんだよあいつ。秋桜でもダメ。警戒心バリバリすぎて家に入ることすら許されない」
「みぅー……。エルルちゃんと仲良くしたいのにぃー……」
《管理者》の春秋さんでも会えない。それって無理ゲーなのでは???
そんでもって縁もゆかりもない俺? いやいや無理でしょ。
「お嬢ちゃんはまだエルルとは面識ないんだよな?」
「少し……だけですね。一緒に戦ったこともぜんぜんないです」
「それなら大丈夫だ。あいつは人見知りでコミュ障で陰キャのぼっちだけど知らない人にはそれなりに優しい対応するから」
「数え役満ですか?」
「ダブル役満だな」
なんかそれ聞いてるだけでも会うの躊躇うレベルなんだけどな……。
「まあ協力してくれたらしっかり礼はするよ。俺に出来ることなら何でも叶えてやるから」
「本当ですか?」
随分魅力的――というか、この人に出来ない事って逆に何があるのだろう。
あれか。もしかして異世界旅行とかさせてくれたり!?
それだったらちょっとだけ楽しみになってきたぞ!
「お嬢ちゃんとの新婚旅行まで企画してやろう」
「やりますっ!」
「うむ。素直な奴は好ましい。それじゃこれが手紙な」
春秋さんから手渡された封筒は、何の変哲も無い封筒だった。しっかりのり付けされている手紙には、「親愛なるナナクスロイ様へ」と書かれている。
「ナナクスロイ? これがスペルビア・エルルの名字なんですか?」
「名字っつーか姓名だな。エルル・ナナクスロイ。別に無理して覚えなくていいぞ。どうせあっちもすぐには名前を覚えないし」
「あはは……わかりました。それじゃあ行こうか、瑠那」
苦笑いしながら瑠那の手を引いて立ち上がろうとする……が、瑠那はぴくりとも動かなかった。
「瑠那?」
「先輩と旅行……先輩と旅行……新婚旅行……新婚……新婚……先輩の奥さん……えへへ。ふにゃぁ……」
あ、やっべ俺の彼女可愛すぎない絶対旅行連れてってもっといちゃいちゃする。
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