その後の日常
復活~です。
2章開始です。
宜しくお願いします。
2章は、「熱くてスカッとする」話でいきたいと思います。
俺の名前は、沖田宗司。
名前は似てるけど。
あの有名な新撰組の剣士でもないし。
子孫でもない。
全く関係ない。
え?
二回目だって。
そこは気にせずに。
そんな俺は、実は剣道部だった。
夏休みは色々あってあまり部活にはいけなかったけど。
それからは真面目に部活に参加し。
冬の高校総体、インターハイの団体戦メンバーになったのだ。
2016年。冬。
ポケモンGOもオリンピックも忘れ去られた頃。
俺は高校の武道場で竹刀を振っていた。
相手は同じ高校生。
防具をつけて、竹刀で打ち合う。
独特の緊張感がある。
畳を足の裏で感じる。
相手の闘志を感じる。
こちらの竹刀を相手に当てる。
相手の竹刀をかわす。
これでも十分に非日常感を味わえる。
仄かな緊張感に刺激を覚える。
だがしかし。
実際に、幕末の京都であったであろう。
命懸けの殺し合いには遠く及ばない。
相手の竹刀に殺気はこもっておらず。
殺す気で、命をかけて襲ってくることはないのだから。
打たれても、こちらは生命の危機になる程の怪我は負わない。
こちらが打っても相手は死なない。
俺はそんな日常に物足りなさを感じていた。
剣道はスポーツ。
当たり前といえば当たり前なのかもしれないけど。
物足りなかった。
心のどこかでは。
本気の斬り合いを望んでいたのだ。
新撰組の様に、命を賭けた斬り合いをしたいと思っていた。
これは、彼女の彩にもいったことがない気持ちだった。
恥ずかしくていえなかった。
でも。
そんな平和な日常な長続きしなかった。
怒涛の日々が巡ってきたのだった。
命を懸けて戦う時が来た。
今。
目の前では、相手は刀を持ち、こちらを殺す気でいる。
鋭い日本刀が俺に向けられている。
鋭い眼光で俺を睨んでいる。
それに。
危険にさらされているのは、俺の命だけではない。
大事な人の命まで賭けられている。
俺に訪れた絶対に負けられない戦い。
負けることが許されない戦い。
敗者に訪れるのは、「死」あるのみだから。
燃える校舎の中。
焼きつくような炎の圧力と、全てを多い尽くすような黒煙が支配する中。
俺は刀を握り、相手に対峙する。
人を殺す事が出来る日本刀を持ち。
相手と対峙する。
目の前から放たれる殺気を受け、神経が高ぶる。
絶対に負けられない。
少しの油断もできない。
後はないのだから。
剣の真剣勝負は、命の賭けあい。
つまり殺し合い。
漠然と憧れていたことだけど。
その意味を。
その真の意味を。
俺は初めて実感するのであった。
相手の刀が迫り、俺の戦いが始まった。
命を賭けた殺し合いが始まったのだった。
~~~~~~~~~~
時は戻って、数日前。
12月10日。
金曜日。
放課後。
クリスマスまで2週間と迫った高校の教室。
吐く息が白くなり。
マフラーを巻く生徒がチラホラいるなか。
妙な期待感が包み、教室はざわざわしていた。
皆。
クリスマスに期待していたのかもしれない。
彼氏、彼女がいる者の方が少数派だけど。
期待せずにはいられないのだろう。
気にしなくても。
心がワクワクするのかもしれない。
教室の一角には女子の集団。
着崩れた服と、茶色の髪。
有村グループが占拠していた。
有村さんは今、この教室の女帝として君臨していた。
9月に起った。
掘北動画流出事件。
彼女はその事件を利用し、クラスで人気が高かった学級委員の掘北彩を追い落とし。
今の地位を築いたのだ。
手に入れたのは、女子のリーダーとしての地位だけでなく。
もう一つあった。
「一条君。明日のデート楽しみだね」
有村さんが話しかける先には。
俺の元親友。
一条の姿。
動画流出事件後は。
評判がズタズタに下がっていた事もあり、大人しくしていたが。
そこを有村さんに狙われたのだ。
弱っていた一条。
クラスからハバにされていた一条は。
有村さんの保護の元、クラスでの地位を戻していくつもりなのだろう。
その条件として、有村さんと付き合うことにしたようだ。
あまり楽しそうには見えないが。
一条は有村さんの傍にいる。
飼いならされたペットのような姿だ。
俺は正直。
有村さんはあまり頭が良い方ではないと思っていた。
ただの性格が悪い女の子だと思っていたが。
さすが女子グループのリーダーという事もあり。
策略に優れているのかもしれない。
ちゃっかりしている。
男も女も。
意中の異性を手に入れるために。
弱ったところを狙うのは古今東西からの使い古されてきた手だ。
シンデレラや白雪姫も。
見方を変えれば、弱った女を権力者の男が狙う話だ。
それが現代も繰り返されているのだ。
感慨深いと思いながら。
俺が教室の窓から外を眺めると。
雪でも降りそうな曇り空だ。
「宗司~。帰りにどこかよる?よっちゃう?」
幼馴染で俺の彼女。
掘北彩がマフラーを巻いたまま俺に告げる。
今日も黒髪ポニーテールは元気いっぱいだ。
柔らかい印象を与える赤いマフラーと。
漆の様に美しい黒髪ポニーテールが良い感じにマッチしている。
とある事件により、一時期落ち込んでいた彩だが。
今では元通り陽気さを取り戻している。
やはり、彼女の元気な姿を見れるのは嬉しい。
「そうだね。イオンにでも寄って行こうか。レッツラゴーの助」
「あたしー、サーティーワンのアイス食べよー」
「俺は銀タコのたこ焼きにするよ」
「えー、今は冬だよ。アイスにしよーよ。寒いときに寒いもの食べるんだよぉ」
「寒がりなんだ、俺」
「うそだー。マフラーもしてないのにぃ」
「マフラーは、息が詰まるから嫌いなんだ」
「じゃあ、あたしも外そっかな~」
唇を尖らせ。
チラチラとマフラーを弄ってる彩。
「いいよ。彩はマフラー似合ってるから」
「そうかな~そう思う?」
「ばっちしさっ!」
俺は彩とイチャイチャしながら、教室を後にした。
教室を出る際。
チラッと有村さんと目線があった。
彼女はニヤッと目元で笑う。
俺は軽く目線で合図した。
そう。
俺は有村さんとそこそこ仲が良い。
掘北動画事件の際にメル友になったのだ。
彼女とは頻繁にLINEする間柄。
有村さんが彩を嫌っており。
俺は彩を庇っているわけだが。
不思議な事に。
どうも俺は有村さんに好意を抱かれているのかもしれなかった。
うん。
不思議だ・・・
乙女心はよく分からない。
学校を出た俺は。
彩と一緒にイオンに向った。




