2話:転生
今日が初回ということもあり一日三話投稿します。
今日以降はできれば週一で投稿したい!
それから徐々に意識がハッキリとしてくる。重たい瞼を開く。すると、見慣れない天井が見えてきた。
(確か私は妹達を庇って……ということは?ここは病院?でも鼻の奥をツンと刺すような、無機質で冷たいアルコールや塩素、グルタラールなどの嫌な臭いはしないし。)
体を起こしてみるといつもよりも軽くて少し違和感を感じる。というか肩凝りが全然ない。自分の手を見るといつもよりも小さいことに気づく。
「セレフィーナお嬢様!目を覚まされましたか?シェーラ、すぐに旦那様に連絡しなさい!」
「はい!ミューラお姉様。」
「シェーラ、仕事中はお姉様は不要です。」
その二人の女性は秋葉原とかのメイド喫茶で働いているようなフリフリのついた可愛らしいメイドのような服を着ていた。そして、シェーラと呼ばれた女性は勢いよく返事して部屋から飛び出していった。
すると、この部屋は私と指示をしたメイドだけの二人の空間になる。完全に見えなくなったのを確認するとそのメイドが口を開いた。
「セレフィーナお嬢様、体調は大丈夫ですか?高熱を出してからもう数日も寝たきりで本当に心配したんですよ。回復魔術をかけても全然目を覚まされなくて……。」
そのメイドは私が目を覚ましたことが嬉しいのか目元に涙を浮かべていた。それは悪いことをしたなと思い謝る。
「ごめんなさい。心配させてしまったようで……。」
私がそう言うとそのメイドは驚いたのか大きく目を見開いた。そして、手を横に振りながら慌てて口を開いた。
「お辞めください。お嬢様は何も悪くないですし敬語なんて。私はお嬢様の従者ですので。」
今までの話を整理すると私の名前はセレフィーナであるそうだ。そして、報告に行ったメイドの名前がシェーラで今、会話しているメイドはミューラであるそうだ。
「ごめん。記憶喪失になってるのかも?自分や周りの状況について思い出せないんだよね。教えてくれない?」
ミューラはその私の発言に深く頷いた。そして、思い出すために少し考えるような素振りを見せてすぐに口を開いた。
「えっと……お嬢様の名前はセレフィーナ・フォン・ラグナフォードで、年齢は今年で七歳です。それから辺境伯ファルダン・フォン・ラグナフォード様の一人娘でお兄様が四人おります。」
どうやら辺境伯の一人娘であるそうだ。それから領土の話やこの世界について色々と聞いた。
このメイド曰く、父上の治めるラグナフォード領は隣国であり敵対国であるウィラブナス帝国に隣接しており国境に大きなラグナ川が流れている。また、グランヴェル王国を守るための重要な防衛拠点となっているようだ。また、この世界には職業があり十五歳の時の『神授の儀』の時にステータスやスキル、剣士な魔術士など様々な職業になることができるそうだ。
「……そして、こんなことがありまして……」
メイドが話をしている最中に勢いよく扉が開いた。すると銀髪の四十代半ばくらいの男が姿を現した。その後ろからコバルトブルーの髪の色をした美しい女性が顔を覗かせて銀髪の男性よりも先に部屋に入ってくる。
「セレフィーナちゃん……!よかった、本当によかったわ……!」
「セレフィーナが無事で本当によかった。」
鮮やかなコバルトブルーの髪を靡かせて部屋へと駆け込んできたその女性は、私のベッドにすがりつくようにして名前を呼んだ。そして、銀髪の男性は私たち二人を包み込むように抱きしめてきた。おそらくこの男がミューラの言っていた私の父親であるファルダン・フォン・ラグナフォード辺境伯だ。
大きな体格に、戦場をくぐり抜けてきた者特有の鋭い眼光をしているが、今のその表情は愛娘の無事を心から喜ぶ父親そのものだった。
「お父様……お母様……」
記憶の中にある日本の優しい父親の姿が重なり、私は自然とその言葉を口にしていた。前世と合わせても数年ぶりに自分の父親に出会ったのだ。
父親は私の小さな体をそっと抱きしめ、温かい大きな手で頭を撫でてくれた。父親の涙がポタポタと頬に落ちてくる。
「高熱を出して三日も意識が戻らぬ時はどうなることかと……。医者も原因が分からず、魔力暴走の反動ではないかと言われてお前を失うかもしれない恐怖で気が狂いそうだった。お前が無事で本当に良かった……!」
(はて?魔力暴走とはなんだろう?)
「ご心配をおかけしてすみません。なんだか少し、ボーッとするだけで体はもう大丈夫です。」
私がそう微笑むと、父親であるファルダンは安心したように大きく息を吐き出し、それからハッとした顔をしてミューラとシェーラに向き直った。
「二人がつきっきりで看病してくれたおかげだ。ご苦労だったな。……おい、何か温かいスープでも持ってこい。セレフィーナの口に合うものをすぐに用意するんだ。」
この部屋にはその言葉にいち早く反応するものがいた。シェーラである。
「はっ!すぐに手配いたします、旦那様。」
シェーラが再びパタパタと足音を立てて部屋から駆けていく。ミューラも私に優しく微笑み、ベッドを整え直すために少し下がった。
一人娘である私をこれほどまでに深く愛してくれている父親。四人の頼もしい(かもしれない)お兄様たち。そして、元の世界に残してきた可愛い妹や弟たちのことを思い出して胸が少しチクリと痛むけれど、私は今、この世界で『セレフィーナ』として生きることになったのだ。
(それにしても……私の職業って、いつわかるんだっけ?)
ミューラの話では、職業やスキルが決まるのは十五歳の『神授の儀』の時だと言っていた。今の私はまだ七歳。あと八年も先のことだ。
視界が真っ黒になる前に文字が一瞬見えたあれは一体何だったのだろうか。転生する前の私の勘違いなのか、それともこの体が成長したときに何か関係してくるのだろうか。
「セレフィーナ?どうした、まだ具合が悪いのか?」
私が考え込んでいると、父親であるファルダンが心配そうにのぞき込んできた。その大きな瞳には、私への愛情があふれているように見えた。
「ううん、何でもないです、お父様。ただ、お腹が空いちゃったなと思って。」
(私は三日間何も食べていないらしい。だから、さっきからお腹が鳴って少し恥ずかしいのだ。)
そう答えると、父親であるファルダンは豪快に笑った。歯に光が反射してキランと光る。
「そうだな!お前が目覚めたと知れば、あのバカ息子たちも大喜びで飛んでくるだろう。さあ、まずはしっかり食べて体力をつけるんだ。」
そう言うとゴロゴロと肉のようなものの入ったスープを私の前に出してきた。それをフーフーして食べてみると絶品でほっぺたが落ちちゃいそうだった。
「これ、すごく美味しいです!なんのお肉なんですか?」
前世では食べたことのないような肉だった。口に入れた瞬間とろけるようにふわふわで、しかしスープの中で溶けたりはせずに原型をとどめていた。
「これは、ハピネスボアの肉だよ。セレフィーナがいつも食べたいって言っていたお肉さ。」
私はそのスープをすぐに飲み干してしまう。
ご飯を食べ終えるともう三日も寝ていたはずなのに眠気が来て目がトロンとしてくる。ベッドにもう一度横になるとすぐに寝ついてしまった。
ここからさらに面白くなっていくので期待しててください!




