第一章
第一部を読まずに、この作品を読むことはおすすめしません。これは第二シーズンであり、完全に独立した作品ではありません。
新しい寝台が届いたのは、急場しのぎで直した古い寝台が、女竜ヘラに見られただけでまた怪しく軋みはじめてから三日目のことだった。
注文は余計な説明なしに出されたが、職人はどうやらすべて正しく理解したらしい。土台は普通の木ではなく、見た目にはほとんど石のような、黒い鉄樫の芯材で作られ、魔法を帯びた鋼の帯で締められていた。脚は太く低く、内側には衝撃を吸収する仕掛けが入っている。背板は彫刻もなく、優雅でもない。その代わり、竜が肩で押しつけても背後の壁を突き破らずに済みそうな代物だった。四隅には太い柱が立っていて、まるでその寝台は密かに攻城塔になる夢でも見ているかのようだった。側面の枠には、職人が焼き印まで残していた。
「強化構造。試験荷重――未記載」
たぶん、書く勇気がなかったのだろう。
試験はその夜から始まった。
最初は慎重に。次は、あまり慎重ではなく。その次には、たしかアイリが、科学的な検証にはあらゆる荷重の組み合わせ、体重の分散、横方向の圧力、縦方向の揺れ、そして柔らかい面への不意の投げ込みを確認する必要がある、と言い出した。テリは耳の先まで赤くなりながら、それは本当に科学的検証と呼ぶのかと確認しようとした。ベラは柱の一本の固定を掌で落ち着いて確かめてから、構造がヘラに耐えるなら用語はどうでもいいと言った。ヘラは半分だけ侮辱された。残り半分は、得意げな顔で寝台を横切るように寝転がり、皆に研究を続けるよう提案することで忙しかったからだ。
朝までに、いくつか重要な事実が判明した。
第一に、寝台は本当にヘラに耐えた。
第二に、寝台はヘラ、メイ、シリ、リニ、テリ、アイリ、ノエル、ベラ、そして彼を同時に乗せても耐えた。
第三に、ヘラが喜びすぎると、床のほうが寝台より苦しむ。
第四に、四隅の柱は当初の想定よりずっと有用だった。特に革紐と組み合わせると。そのため、翌日職人が注文品に問題はないか確認に来たとき、リニは彼の目を見るのを避けた。
彼のほうは、その寝台を正しいものだと認めた。
声には出さなかった。声に出して言ったのは、「今度は強度の余裕も十分そうだな」ということだけだった。だが、そのときの彼の顔つきがあまりに雄弁だったので、通りかかったシリは小さく鼻を鳴らし、メイは獣じみた笑みを浮かべ、アイリは無邪気な声で「研究対象が増えた場合に備えて、同じものをもう一台注文する必要はあるかしら」と尋ねた。
生活は、ほんの短いあいだ、ふたたびほとんど平穏になった。
ほとんど、だ。
なぜなら彼らの家で「平穏」という言葉は、もはや混沌が存在しないという意味ではなく、混沌が今のところ誰かを殺そうとしていない、という意味にすぎなかったからだ。
ギルドからの知らせが届いたのは、昼に近い頃だった。
いつもの使いではなかった。短い書きつけでもなかった。気の抜けた「時間があれば対応してほしい」という依頼でもなかった。やって来たのはデイロンだった。武装した魔導士二人を連れていた。普段ならどんな公的な人物に対しても「さあ、驚かせてみろ」とでも言いたげな顔で迎えるメイでさえ、笑みを消した。
彼は、デイロンが口を開く前から事態が深刻だと理解した。
顔が白すぎる。背筋がまっすぐすぎる。言葉が慎重に選ばれすぎている。
「ラマール丘陵へ向かう旧道の北東に、呪われた土地の領域が現れました。最初は残留した魔力の暴発だと思われました。次には、失敗した儀式だと。偵察隊が三組、戻りませんでした。四組目は半分だけ戻りました」
「半分だけ?」リニが静かに尋ねた。
ギルド監察官は唇を引き結んだ。
「文字どおりの意味ではありません。ですが正気を保っていたのは二人だけです。そして二人とも同じことを繰り返しています。そこには、一体の上位魔族がいる、と」
部屋の温度が下がった。
魔法によってではない。ただ、ときどきそういうことがある。言葉が卓の上に落ち、その重さを周囲の全員が理解したときに。
アイリの笑みが消えた。ベラは壁際でゆっくりと身を起こした。テリは指で杯を握りしめ、陶器がか細く鳴った。メイは武器の柄へ掌を下ろした。今ここで戦うつもりだからではない。体が勝手に、正しい場所を思い出したのだ。
シリは沈黙していた。
彼は彼女を見た。
彼女は窓辺に立っていた。外見上は、ほとんど落ち着いていた。落ち着きすぎていた。ただ、家の中では隠すのをやめた尻尾がわずかに震え、肩が硬くなっている。まるで皮膚の下で古い鎖が張りつめたかのようだった。
「名前は?」彼は尋ねた。
ギルドの代表者は彼に向き直った。
「偵察兵たちは、カールヴェス、あるいはカルヴェスと呼んでいました。聞き取りが難しくて。生還者の一人は、魔族自身が自らを『灰瘡の王』と名乗ったと言っています」
シリは、とてもゆっくり目を閉じた。
それだけで十分だった。
「知っているんだな」と彼は言った。
彼女はすぐには答えなかった。
「ええ」
部屋の誰も遮らなかった。
シリは目を開けた。その中に、純粋な形の恐怖だけがあるわけではなかった。恐怖はあった。だがそれだけではない。恥。怒り。嫌悪。そして、もっと古く、深く打ち込まれた、錆びた釘のような何か。
「あいつは、私より上にいた者たちの一人だった」と彼女は言った。「あの頃は。すべての前。あなたたちの前。私が……」
彼女は言葉を詰まらせ、苛立たしげに肩を揺らしてから、さらに硬い声で言い切った。
「私が誰かの玩具でいるのをやめる前」
メイが低く罵った。
最初に立ち上がったのはリニだった。
「なら、行きましょう」
「話し合うべき」ではなかった。「考えよう」でもなかった。「危険だ」でもなかった。
ただ、行きましょう。
アイリがうなずいた。その顔には、柔らかく悪戯っぽい女が彼女の中で遊ぶのをやめ、女神が表に現れるときの、あの奇妙なほど人ならざる澄んだ表情が浮かんだ。テリは杯を置いた。もう陶器のひびには目を向けていなかった。ベラは無言で革帯と留め具を確認した。ヘラはかなり不穏な笑みを浮かべたが、その笑みに軽さはなかった。ただ大きく、重く、翼を持つ何かの約束だけがあった。
彼はシリのそばへ歩み寄った。
抱きしめなかった。頭を撫でなかった。すべてうまくいくなどとは言わなかった。彼女なら、たぶん彼からそれを受け取ることもできただろう。だが今、彼女に必要だったのは慰めではなかった。
必要だったのは、隣に立つことだった。
「あいつは死ぬ」とシリは言った。
「ああ」と彼は答えた。
それで十分だった。
呪われた土地は、境界もなく始まった。
一歩前までは、草は乾いて黄色く、夏の終わりとしては普通だった。もう一歩進むと、土は灰色になった。まるで色を吸い取られたかのように。石には黒い筋が走っている。空気は鉄と苦味と、そして息をしたくなくなる甘ったるい何かの匂いがした。
馬はそれ以上進むことを拒んだ。
いななきもせず、暴れもしなかった。ただ壁の前に立ったように止まった。ベラが最初に下馬し、自分の馬の首を掌で撫でてから手綱を放した。
「ここからは徒歩だ」
「ここからは楽しいな」とメイがぼやいた。
「楽しかったのは昨日だ」とヘラが言った。「これはどちらかといえば仕事だ」
皆の意外をついて、アイリが小さく笑った。
「昨日も仕事だったわ。ただ、大好きな仕事だっただけ」
テリが、咳とも笑いをこらえた音ともつかない短い声を漏らした。
シリでさえ、一瞬だけ唇の端を動かした。
彼はそれに気づいたが、何も言わなかった。
深く進むほど、世界は生きているものに見えなくなった。木々は葉を落としていたが、枯れているのではなかった。ねじれ、黒ずみ、根から大地を引き剥がして逃げようとして、できなかったように立っている。窪地には重く粘つく霧が横たわっていた。ときどき、その中で何かが動く。ときどき、地面の下から遠い囁きのような音が聞こえた。
リニは彼の隣を歩いていた。黙っていたが、彼には彼女の周囲で魔法が密になっていくのが感じられた。彼女は自分を保っている。とても慎重に保っている。力を外へ漏らさず、空間を押し潰さず、呪いを一息で焼き払わない。そこにほかに何が隠れているかわからないからだ。
シリは前を歩いていた。
メイは彼女のやや横についた。近すぎて邪魔になるほどではなく、けれどいつでも最初に飛び出せるほどには近い。実に彼女らしかった。過去から人を守れないなら、せめてその過去を最初に短剣で刺そうとする。
彼らは呪われた領域の中心で魔族を見つけた。
そこには、かつて村があった。
今残っているのは、黒い基礎、歪んだ井戸、そして幾つかの石壁だけだった。その壁には乾ききった、ほとんど透明な帯が垂れている。布なのか、皮なのか、それより悪い何かなのか、判然としなかった。広場の上には骨のアーチが立っていた。人の骨ではない。獣の骨でもない。あまりにも種類がばらばらで、あまりにも念入りに選ばれていた。
彼は崩れた塔の上で彼らを待っていた。
背が高く、細身で、灰色の肌をしていた。その肋骨の下では赤い亀裂が燻っている。角は折れ曲がった枝のように後ろへ伸びていた。黒い髪は、客を迎える直前に梳かしたばかりのように、あまりになめらかに肩へ落ちていた。顔は美しかった。そしてそのせいで、なおさらおぞましかった。血がまだ乾いていない刃物が美しいときの、その美しさだった。
カールヴェス。
誰かが口を開くより先に、魔族は微笑んだ。
「なんとも胸を打つ行列だな」と彼は言った。「王女。獣の娘。エルフの射手。竜。堕ちた玩具。神の過ち。脚の生えた盾。殺し屋。そして、なぜかおまえたち全員が腹を空かせた子犬のように骨の周りへ群がる、その男」
ヘラがゆっくり頭を上げた。
「もう一言でも言ってみろ。塔ごと食ってやる」
「おや、竜が喋るのか」カールヴェスは掌を胸に当てた。「長く生きれば、いつまでも驚きがあるものだ」
アイリが一歩前へ出た。
「あなたは土地を穢した」
「飾ったのだ。趣味の違いだな」
「人を殺した」
「人は死ぬ。私はそれに形を与えただけだ」
シリが前へ出た。
そして魔族は、本当に彼女に気づいたのは今だとでもいうように、彼女を見た。
笑みが広がった。
「おまえか」
シリは答えなかった。
「最初は、偵察兵どもが嘘をついているのだと思った」とカールヴェスは柔らかく言った。「その次に思った。いや、これは嘘にしては面白すぎる、と。小さなシリ。まだ生きている。まだ背筋をまっすぐに保とうとしている。言ってみろ、おまえは今でも命令を聞くと身を震わせるのか?」
メイが動きかけたが、シリが手を上げた。
止めた。
「喋りなさい」と彼女は言った。「喋れるうちに」
カールヴェスは笑った。
「いい声だ。誰に教わった? そいつか?」魔族は視線を彼へ移した。「それとも、自由な生き物の真似がうまくなっただけか? 昔から模倣の才能はあった。笑えと言われれば笑った。黙れと命じられれば黙った。這えと命じられれば這った。そうだったな、シリ?」
シリの周りの空気が揺れた。
彼は、彼女が指を握りしめるのを見た。弱さからではない。どれほどの力を使って、まだ飛び出さずにいるのか、そのせいだった。
「よく喋るな」と彼は言った。
カールヴェスは気のない興味を帯びた目で彼を見た。
「おまえが、例の男というわけか。面白い。もっと大層なものを想像していた。人間の匂いがする。頑固で、死すべき、特に印象的でもない人間の匂いだ」
「おまえからは恐怖の匂いがする」と彼は言った。
魔族の笑みは消えなかった。
だが、薄くなった。
「気をつけろ」
「おまえは深淵から出てきて、呪われた土地を起こし、骨で自分の劇場を作り、誰かが注目してくれるのを待っている」と彼は続けた。「これは支配じゃない。癇癪だ。おまえは王国を築いているんじゃない。まだ自分を恐れる者がいると証明しているだけだ」
魔族の肌の下で、赤い亀裂がより明るく燃えた。
シリはゆっくり彼のほうへ顔を向けた。
その視線に、一瞬、驚きのようなものがよぎった。次に、理解が。
彼は亀裂を見つけたのだ。
カールヴェスは塔から飛び降りた。
落ちたのではなかった。重さを得た影のように流れ落ちた。彼の足下で、石は完全に黒くなった。
「死すべき者どもは、自分に理解できぬものを何でも恐怖と呼びたがる」
「違う」と彼は言った。「恐怖を、恐怖と呼んでいる」
魔族は笑うのをやめた。
「おまえは女たちに囲まれて立っている。その女たちは、まるでおまえが世界を与えたかのようにおまえを見ている。だが、それも過ぎ去る。魔族も、竜も、女神も、王女も、記憶は長い。人間の命は短い。彼女たちはおまえより長く生きる。おまえを越えていく。忘れる。忘れなければ、おまえが彼女たちを弱くしたことを憎むようになる」
リニは青ざめた。だが退かなかった。
アイリは表情のない顔で魔族を見ていた。
シリが静かに言った。
「あなたはいつも、痛い場所を打った。そしてそれが、自分を賢くするのだと思っていた」
カールヴェスは彼女へ顔を向けた。
「おまえはいつも、痛みを深さと取り違えていた。おまえは解放されたのではない、シリ。ただ別の主人に取られただけだ。温かく、柔らかく、匂いから察するに、ずいぶん頑丈な寝台付きでな」
ヘラが唸った。空気が胸を打つほどの唸りだった。
だが、最初に動いたのはシリだった。
叫びではなかった。取り乱した突進でもなかった。ただ、その場から消えた。
黒い弧を描いた刃が魔族の喉へ走り――掌に受け止められた。
カールヴェスは素手でその一撃を掴んだ。指に、黒く煙る血の線が浮かんだ。
「お前は昔よりよくなった」と彼は言った。「だが、まだ足りない。その短剣は、実にいい」
そして戦いが始まった。
足下の地面が黒い棘となって爆ぜた。
ベラが最初に間に合った。彼女の塔盾がリニの前に立ち、攻撃を受け止めた。衝撃は金属を伝い、腕を伝い、肩へ抜けた。ベラは後ろへ滑ったが、踏みとどまった。リニはすでに杖を上げていた。唇が素早く、無音で動く。集まる力で、瞳はほとんど光っていた。
左から霧が動いた。
その中から魔物どもが這い出してきた。
死者ではない。獣でもない。骨と焦げた肉と呪いを継ぎ合わせられたそれらは、四本、六本、あまりにも多すぎる手足で進んできた。人間の腕を持つものもいた。肋骨があるべき場所に口があるものもいた。
アイリが掌を上げた。
光が波となって打ちつけた。
魔物どもが悲鳴を上げた。近いものは灰となって崩れた。後ろから来るものは、見えない壁にぶつかったかのように遅くなった。アイリは静かに立っていたが、その足下では石が白くなりはじめ、黒い筋が浄められていく。
「テリ」と彼女は言った。
「見えてる」
矢が次々に放たれた。
テリはほとんど間を置かずに速く射った。そして一本一本が目、関節、開いた口、骨の鎧の亀裂を見つけた。アイリの光が流れを押しとどめ、テリがその足止めを虐殺に変えた。二人は、開いた門扉のようだった。その門を、穢れたものには通さない。
地面から家ほどの大きさの影が立ち上がったとき、ヘラが罵った。
「よし。もう加減は終わりだ」
彼女の体が展開した。
瞬時に変身したのではない。むしろ、人の姿があまりに窮屈な衣であり、彼女がそれをついに引き裂いたようだった。翼が空気を叩いた。鱗が黒い金属のように燃えた。巨大な爪が呪われた大地に食い込み、竜の咆哮が死んだ村の上を転がった。骨のアーチが上から下までひび割れるほどだった。
カールヴェスは一瞥すらしなかった。
彼はシリに忙しかった。
そして彼に。
魔族は速すぎた。両腕は爪になり、鞭のように伸び、またほとんど人間の形へ戻った。彼は体だけで打ってくるのではなかった。ひとつひとつの攻撃に呪いが宿っていた。粘り、焼けつくようで、皮膚の下へ、記憶へ、呼吸へ入り込もうとしてくる呪いが。
彼は一撃を弾き、二撃目の下を潜り、魔族の爪の端が肩を裂くのを感じた。痛みは冷たかった。正しくなかった。まるで傷が血を流そうとするのではなく、生きているということを忘れようとしているようだった。
シリが横から打った。
カールヴェスは半歩退いた。それだけで、ほとんど届いた。
ほとんど。
彼は肘でシリの胸を打った。速すぎた。硬すぎた。彼女は壁の残骸へ吹き飛ばされ、背中の衝撃で石が割れた。
メイが怒りに満ちた唸りとともに彼らの間へ飛び込んだ。
彼女の刃は低く閃いた。腿、脇腹、腱、また脇腹。速く。怒りを込めて。正確に。カールヴェスは、彼が予想したより深く肉を裂いた一撃に顔をしかめた。
「蚤が」と魔族は言った。
そして打った。
メイは刃を交差させるのに間に合ったが、それでも力に広場の向こうまで弾き飛ばされた。彼女は空中で身を返し、肩から落ち、灰の上を転がり、それでもすぐに立ち上がろうとした。
「生きてる!」誰かが聞く前に、彼女は吠えた。「腹は立ってるが、生きてる!」
ベラは位置をずらし、新たな棘からリニを守った。盾がまた呻いた。今度はベラが片膝をついた。
「リニ、あとどれくらい?」
「撃てない!」リニの声が裏返った。「近すぎる!」
彼はそれを意識の端で聞いた。
カールヴェスも聞いた。
「これがおまえたちの弱さだ」と魔族は囁き、突然すぐそばにいた。「互いを大事にしすぎる」
腹に一撃が来た。
彼は防御を置くのに間に合ったが、完全ではなかった。肺から空気が叩き出された。世界が揺れた。カールヴェスは彼の喉を掴み、地面から吊り上げた。
シリが叫んだ。
恐怖ではない。怒りで。
彼女は背後から魔族へ激突し、刃を肋骨の下へ突き入れた。カールヴェスは身を震わせたが、彼を放さなかった。顔を彼女へ向け、本当に悪意に満ちた笑みを浮かべた。
「そうだ。自分の場所を思い出せ。背中を刺せ。這い回れ。懇願しろ。それがお前には似合う」
魔族の握力に吊られながら、彼はどうにか片手を上げ、短い術をカールヴェスの顔に直接叩き込んだ。
強い術ではない。
目潰しだった。
魔族が咆哮し、一瞬だけ指の力を緩めた。
一瞬。
それで足りた。彼は魔族の胸を蹴り、抜け出し、落ち、転がって立ち上がった。遅すぎた。
カールヴェスはすでに彼の上にいた。
近すぎる。
速すぎる。
その瞬間、世界が白くなった。
リニが、抑えるのをやめた。
おそらく完全にではない。そうでなければ村も、魔族も、大地も、おそらく仲間の半分も、硝子の大穴だけを残して消えていただろう。だが彼女が解き放ったものは、もはや整えられた魔法には見えなかった。射撃ではない。光線ではない。構築された術でもない。
それは、魔力を長く内に抑え込むことを教え込まれすぎた王女の怒りだった。そしてその王女が、一瞬だけ制御など要らないと決めたものだった。
一撃は魔族の背中に入った。
カールヴェスが仰け反った。
彼の体を覆う黒い甲殻が裂けた。赤い亀裂が白く燃えた。背後の塔は炎の中に消えた。周囲の地面が溶け、熱が空気を殴りつけた。ベラは考えるより早くリニへ飛びつき、今度は魔族からではなく、彼女自身の暴発から彼女を守るために盾で覆った。
アイリが鋭く掌を返し、閃光とテリの間に結界を張った。
ヘラは翼でメイを覆った。
シリは横へ跳ぶのに間に合ったが、それでも力の波で地面を引きずられた。
彼は跳ぶことも、最後まで守ることもできなかった。だが、間に合った。
彼の体は前へ投げ出され、カールヴェスの足下へ転がった。
魔族は立っていた。
信じがたいことに、立っていた。
背中は抉られていた。それまで影の中に隠れていた片翼は、焦げたぼろ布のように垂れていた。肋骨の半分が、リニの白い炎で内側から光っている。彼はもう笑っていなかった。もはや立っているだけでやっとだった。
だが、生きていた。
そしてリニへ振り向いた。
その目にあったのは痛みではない。
憎悪だった。
「貴様……」彼は掠れた声で言った。
彼は、今何が起こるかを見た。
考える暇はなかった。恐れる暇もなかった。ただ、体が勝手に動いた。
シリも動いた。
メイは立っているのもやっとの状態で、魔族の顔へ短剣を投げた。
カールヴェスが頭を振った。
それで足りた。
彼は横に入った。武器は下から上へ走り、そこから鋭く返った。美しくはなかった。清らかでもなかった。歌になるような一撃でもなかった。ただ、残ったすべての力を込めた、短く恐ろしい一撃だった。
刃が首を通った。
カールヴェスの頭が胴から離れた。
体はまだ一瞬立っていた。
それから崩れ落ちた。
頭は黒い塵の中に仰向けに落ちた。
そして喋った。
唇はもう命によって動いていたのではない。世界に食い下がる最後の悪意によって動いていた。
「おまえへの彼女たちの愛を呪う」とカールヴェスは囁いた。「その愛のない場所へ、堕ちろ」
シリが彼へ飛び出した。
リニが叫んだ。
アイリが手を上げた。だが光は、空虚にぶつかったかのように途切れた。ベラが踏み出し、メイが地面から跳ね起き、ノエルが影の縁を滑り、ヘラが広がる円へ爪を叩き込んだ。
遅かった。
彼の足下で、黒い印が開いた。
火ではない。闇でもない。
穴だった。
彼は顔を見た。
シリ。恐怖で真っ白になり、手を伸ばしていた。
リニ。あまりにも強い力とあまりにも深い恐れを宿した目で、彼女の周りの世界はふたたびひび割れはじめていた。
メイ。血に濡れ、怒り、必死だった。
テリ。撃つことのできない場所へ、すでに矢を引いていた。
ベラ。盾で移送そのものすら遮れるとでもいうように、前へ飛び込んでいた。
ヘラ。巨大な竜の姿で、灰を柱のように舞い上げる咆哮を上げていた。
ノエル。理解できない、信じられないという思いで目をいっぱいにしていた。
アイリ。冷たい光を放ち、そして初めて、本当に怯えていた。
彼は彼女たちへ手を伸ばした。
そして間に合わなかった。
印が彼の頭上で閉じた。




