表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/33

ルフィーナを仲間に

 樹は戦利品を見ているルフィーナを、改めて見つめていた。

 金色の髪を腰まで伸ばし、ツーサイドアップにしている。

 瞳は美しいエメラルドのようで、今は可愛らしいツリ目を好奇心に輝かせていた。


 戦利品を見るルフィーナの背中は美しく、腰からお尻のラインは多くの男性を魅了するだろう。樹も腕を組んで鑑賞中だ。

 ミニスカートから伸びる脚は、細すぎて貧相にならず、太すぎて醜くならない、絶妙な太さで、男性なら目がいくのは仕方がない。樹もデレデレと夢中だ。


『樹は思った。これで胸が普通サイズでもあれば完璧だったのに』


 ナレーションの余計な言葉に、楽しげに揺れていたルフィーナの背中が、ピクリと震えた。

 その震えはどんどん大きくなり、ルフィーナはゆっくりと振り返った。ホラー映画の間のようなゆっくりとした動作だった。


「あ、いや……おいナレーション。余計なことは言うんじゃない!」


 不穏な空気を察知した樹は、ナレーションに文句を言いながら、部屋から撤退しようとした。


「……イツキ。ナレーションが言ったことは本心かしら?」


 体から魔力のオーラを発したルフィーナが、樹の前に素早く回り込んだ。


『樹は逃げ出した。しかし、ルフィーナに回り込まれた。逃げられない』


「うっさいわ! 誰のせいだよ!」


「イツキ……正直に答えてね? あたしのおっぱいは小さいかな?」


 可愛らしくニコニコしているが、目は笑っていない。先ほどまではキラキラしていたが、今は妙に(くら)い。


「あ~っと……オレは正直者なので言うが、小さくて可愛い」


 正直に言ったが日和った。


「これが可愛いの? 自分でも、え? これっておっぱい? ってくらい無乳なんだけど?」


 可愛いではダメだったようだ。彼女のコンプレックスは根深い。

 樹も小さいだろうと思っていたが、まさかそこまでだとは思っておらず、返答に困って妙なことを言ってしまう。


「女の子は女の子ってだけで素晴らしいのだ」


 胸のことにはまったく関係ない。

 本人は女の子の体というだけで、胸がなくても美しいと言いたかったのだが、ルフィーナの怒気に焦ってしまった。


「お尻だって女の魅力よ! 胸だけじゃないもん!」


「そ、そうだな。ルフィーナのお尻は素晴らしい。オレも夢中だ」


「そうよね! 胸がなくても結婚できるわ!」


 少しでもあるほうが有利だろうが、彼女の美貌なら問題ないだろう。

 親が用意したお見合い自体は多いのだ。しかし彼女が乗り気ではない。自分より弱い男は嫌だった。

 立場的にも実力的にも、夫に恐れられながら暮らすのが嫌だからだ。


「あたしって結婚相手として魅力的?」


 ちょっと困る質問だ。今のところ美貌と戦闘能力しか知らないのだ。樹に答えられるはずもない。


「美貌しか判断材料はないけど、それだけでも結婚相手として魅力的だと思うぞ」


 胸がないらしいのが引っ掛かっている。樹は少しでも欲しかった。せめて膨らみが分かるくらい。


「そっか、よかった。イツキも遠慮なく口説いてね」


「あ、ああ」


 樹は最高のお嫁さんを欲しがっているので、結婚に関しては慎重だ。

 ルフィーナを口説けば結婚まで一直線になりそうで、樹は返事を濁らせた。


『彼女に決めたんですか?』


「いや、まだ中身を知らんし」


 ちょっと胸がない件で恐怖を味わったが、樹は悪い印象は持っていない。コンプレックスを迂闊に刺激した自分のせいだと思っていたし、海賊を退治にくる正義感もある。

 かなり強いので努力家だろうし、笑顔も多くて親しみやすい。悪い印象を持ちようがなかった。


「イツキのことを観察してもいい? あたしの強さを見ても怖がらないし」


 冒険者の中には怖がらない男もいるだろうが、彼女はゴツい男は好みではなかった。


「オレとしても嫁さんは欲しい。ルフィーナは笑顔が可愛いし、このままお別れは嫌だな。オレでよければ傍にいて欲しい」


 まるでプロポーズの台詞だが、樹は言葉のままの意味で言っている。


「な、なんか恥ずかしいわ……イツキなら好きになれそうだし、お互いのことが分かるように一緒にいましょう!」


『ルフィーナが仲間になった。おっぱいがあればなぁと樹は思った』


「もうそれやめろ! 最初にちょっと思っただけだろう!」


「や、やっぱり……あたしのおっぱいってダメなのかしら……」


「ほら見ろ! ルフィーナが落ち込んだぞ」


 樹は必死にルフィーナを慰めて、何とか気を取り直した。


「とりあえず戦利品をどうするか」


「それなら大丈夫。実家から持ってきた魔法の袋があるから、これくらい持っていけるわよ」


「それは助かる。ルフィーナの実家はやっぱり金持ちなんだな」


 これだけ入る魔法の袋は、当然値段も高い。


「まあね。でもあたしは家を継げない6女だから、玉の輿にはならないけどね」


「嫁さんくらい自分で養うさ。オレは金は稼げるが、美少女にはなれないからな。ルフィーナのほうが大事だ」


「そんなに美少女って言われると照れる」


 頬に両手を当てて、真っ赤になった顔を冷まそうとしている。

 樹は本当に残念に思った。これで少しでも胸が膨らんでいれば完璧なのにと。

 樹は別に胸が大きくないと嫌だとか思わないが、女性の胸は好きなので、少しは欲しいだけだ。


 ルフィーナの持っていた魔法の袋に戦利品を詰め込み、人質になっていた女性の所に戻る。

 まだ海賊は縛られたまま気絶していたので、樹が叩き起こして連れていく。


「ルフィーナは彼女を馬に乗せて、先に帰って兵士を呼んできてくれ。オレはこいつらを連れてのんびり帰る」


 途中で海賊を回収しにきた兵士と合流するだろうから、街まで一緒ということはない。


「いいの? 一緒のほうが安全だと思うけど」


「心配するな。オレがこんな奴らに負けることはありえんから」


「わ。凄い自信だね~。それなら、なるべく早く迎えにくるから、気を付けなさいよ?」


 ルフィーナが女性を連れて馬の所に向かう。

 樹は海賊たちのロープを繋ぎ、1人で全員を連れて行けるようにした。


「おいっ! 俺たちは怪我人だぞ」


「そうだ! 足を斬られて歩けねえよ!」


 自分たちを倒したルフィーナがいなくなった途端、海賊たちが騒ぎ出す。


「嘘つけ。そんなに深い傷じゃないだろ。応急手当をしたから知ってるぞ。痛いだろうが歩けないほどじゃない。撃ち殺されんように黙って歩け」


 にべもなくあしらわれ、樹を睨む。

 樹は海賊などに甘くするつもりはない。逃げようとしたり、攻撃しようとしたら撃つつもりだ。

 女性を奴隷として売り飛ばしてきた海賊に、樹は激怒していた。

 人質になっていた女性は、年齢のこともあり、売れ残ったそうだ。

 売られずにすんで運がいいのか、海賊に捕まって運が悪いのか微妙なところだ。


「どうせ死刑になるか強制労働だろう? なら死ぬ気で歩けよ。いま死んでも、あとで死んでもオレには変わらんぜ?」


 樹の容赦のなさに、海賊たちは黙り込んだ。

 さすがに樹が恐ろしくなったのか、文句を言わずに歩き続けた。

 2~3時間ほど歩いただろうか? 前方から砂煙が上がった。

 兵士たちが武装した騎馬に乗って、猛スピードで駆けてきた。


「お~い! イツキ~! お待たせっ!」


 先頭で馬を走らせていたのは、ルフィーナだった。ニコニコ笑って手を振っている。

 樹は海賊たちを兵士に渡し、ルフィーナと再会を喜んだ。


「ほら、後ろに乗って? これから忙しいんだから、急いで帰ろ?」


 パーティーを組むにはギルドに申請したりする必要がある。そのことだろうと樹は納得した。

 樹が後ろに乗ったら、馬を発進させた。樹はルフィーナの腰を掴み、2人は街に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ