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第4話

数日後。第二騎士団が遠征している野営地にて。



僕はいま、第二騎士団の任務として魔物の討伐任務についている。


第二騎士団では小隊ごとのローテーションで討伐と休憩を繰り返し、しっかり体力を確保して討伐ができるように騎士団長が配慮してくれている。



朝。


今日は僕の所属する小隊が討伐の番だ。


朝食を食べに行こうとテントから出ると、不意に大きなあくびが出た。


「ふぁ〜あ」


すると近くから声が聞こえてきた。


「フフフ、大きな口ね。ホワイト君」


「やあ、おはよう。ホワイト。元気そうで何よりだよ」


この声は、まさか!?


「やっぱりラベンダーにクラレット!!どうしてここに?や、久しぶりだね」


僕の言葉に


「会いたくて。来ちゃった」


てへと笑うラベンダー。


隣のクラレットも同じく笑顔だった。


2人とも僕の幼なじみだ。


いつも僕を懐かしんで会いに来てくれる。


もう平騎士の僕なんかを相手にしなくてもいいのに、未だにこうして時間を作って会いに来てくれるのだ。


それがとても嬉しい。


どちらも自慢の幼なじみだ。


そして、どちらも実力ある騎士なのだ。


そのうえ、クラレットもラベンダーも人目を惹くに十分な容姿を持っている。


クラレットは赤い瞳に赤い髪。ラベンダーは黒い瞳に黒い髪だ。


こんなすごい人と幼なじみでいれるだなんて僕は本当に幸せだと思う。


話を聞くと、クラレットは遠征から帰ったので休暇が取れたんだそうだ。


だから僕に会いに第二騎士団の任務地まではるばる来てくれたらしい。


それに便乗してラベンダーも休暇をもぎ取ってついて来たという。


だけど・・・・・


「僕はいまから魔物討伐にむかうんだ。だからゆっくり話はできないよ」


残念だけど仕方ない。


僕の勝手な私情で小隊のローテーションを乱すわけにいかない。


僕が残念そう言うと2人はにっこり笑いながら


「じゃあ手伝うよ。邪魔にならないようにするから」


というばかりだった。


――その時だった。


少し離れた場所で、どよめきが起きた。


「おい!そっち!足をやられてる!」


討伐前の準備の最中、森の外縁に残っていた魔物が飛び出してきたらしい。


油断していた団員の一人が、脛を深く裂かれて地面に座り込んでいた。


血が、土に滲む。


「大丈夫か!?」


駆け寄った同僚たちの顔が、一気に青ざめる。


第二騎士団には、第一騎士団のような専属の治癒士がいない。


回復薬だって潤沢じゃない。


こういうとき、僕たちはまず布で縛り、止血して、あとは祈るしかない。


・・・・・・・間に合えばいい。悪化しなければいい。感染しなければいい。


それが、第二騎士団の日常だ。


挿絵(By みてみん)


「下がって」


ラベンダーが静かに言った。


いつもの柔らかい声なのに、不思議と逆らえない。


ラベンダーは負傷した団員の前に膝をつき、手をかざす。


「・・・・回復」


淡い光が、彼の傷口を包んだ。


裂けた肉が、みるみる塞がっていく。


血が止まり、顔色が戻っていく。


「す、すげぇ・・・・」


周囲の団員が、呆然と息を呑んだ。


そういえば、第一騎士団の連中が酒の席で自慢していた。

「治癒士」だの「聖属性」だの――僕たちには縁のない言葉を。


・・・・・この世界には魔法というものが存在する。


魔法を扱うには魔力が必要で、それだけではなく、魔力制御の技術や魔力量も魔法に影響する。


そして魔法の中には、ケガを治療する回復魔法というものがある。


水属性魔法や土属性魔法でも多少は扱えるが、回復に最も適しているのは聖属性だと言われている。


――だから、聖教国の上層部や第一騎士団は聖属性をもつラベンダーを重宝する。


それほどではなくとも回復魔法のエキスパートが、治癒士と呼ばれる魔法使いだ。


僕たち第二騎士団には、それがいない。


だから、今みたいな光景は本来なら、ありえない。


「よかった・・・」


僕は、胸の奥から息を吐いた。


もしラベンダーがここにいなかったら。


もし傷が深くて、動けなくなって、討伐に出られなくなって、引退になって。


・・・・それでも国は何も補償しない。


日ごろから団長が言っていたことが、頭の中で重く響いた。


ラベンダーは立ち上がり、少し困ったように笑った。


「大丈夫よ。これくらいなら」


クラレットも当然のように周囲へ指示を飛ばし、場を整えていく。


その動きは、第二騎士団の誰よりも早く、正確だった。


結局、討伐は予定通りに進んだ。


そしてほぼ片付いた。


そう。


第二騎士団が任務とする瘴気の森をねぐらとする魔物はほぼ一掃され、第二騎士団の任務は終わったのだ。


ラベンダーとクラレットの活躍で。


第二騎士団団長ヘリオトロープはホクホク顔だ。


なにより被害が少なく済んだことが嬉しいらしい。


クラレットたちは空いた時間で僕と話す時間が欲しいと団長に要望を出した。


団長からは、あの2人とどういう関係なんだ??と真顔で詰問された。


そしてほかの同僚からはさらに怪訝な顔をされた。


これはあとで質問攻めを覚悟しないとダメだなと観念した。


2人が帰ったあと1番多かった声は、


「ラベンダー副団長がなぜあんな表情でお前のことを見つめるんだ。許せん!!!」


というものだった。


それというのも、ウィスタリア聖教国の騎士団のなかにはラベンダーのファンクラブがあるらしいのだ。


しかも、我が第二騎士団の中にも多くの団員がそのファンクラブに入っているとか。


そのことを初めて知った僕は、


「初耳だ」


というとすかさず団員が、


「だってお前いつも俺たちの会話に入ろうとしなかったじゃん」


だってラベンダーとこんなに仲が良いと知られたら嫉妬の念を向けられると思ったから。


だから、僕は賑やかなグループの輪に入ることはなく、いつも遠巻きにして過ごしていた。


まさか、幼なじみのことでこんな話をしていたとは露にも思わなかった。


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