薄曇り
昼食を食べ終わって、園田さんを主任に押し付けた私は「煙草いってきます~」と早々に離脱しようとする玉地を追いかけた。
私がついてくるのを黙って横目に見つつスルーしていた玉地は、一本目を吸い終わりやっと口を開いた。
「珍しいね。
いつも匂いつくからってついてこないのに」
「ん~?な~んか面白そうなネタの匂いがしたからさ」
東京湾が一望できる喫煙スペースの階段に腰かけると、ふっと鼻で笑った玉地は無言で2本目を出した。
「なんやネタって。
別になんもないよ」
「なんもなかったら」
ちらりと玉地を見上げる。
「園田さんの下の名前を聞いて美知留さんとの家族関係にピンと来るはずないんだよなぁ~
我が社には何故か園田という苗字の社員が集っているという奇跡があるからねぇ。」
「…」
目を細めて遠い目をする玉地をみてちょっとした確信を得る。
「…まさかあの難攻不落の女帝を、七瀬さんの前に攻略している男がいるとはねぇ。
君よく七瀬さんの下でしれっとしてたな。俳優なれるよ」
本当に関心しながら言うと、
「いやいや」
ふうぅと煙を吐き切った玉地は首をゆっくりと振った。
「俺はあの城は落としてないよ。
女帝の気まぐれで施しを受けただけ。
王様は最初から七瀬さんだけだよ」
「その”施し”すら倍率はエベレスト級だったと思うけどね」
「どうかねぇ」
ひょいと肩をすくめる玉地を見つつ…実は少し驚いていた。
セフちゃんズがいるくらいだからたいして女性には困っていないのは知っていたけど、まさか私以外にも社内の女性と繋がっているとは思わなかった。
それに、ちょっとしたカマのつもりが、本当にそういう関係があったようなことを認める玉地に衝撃を受けていた。
いつもなら軽く流しそうな玉地が素直に認めたのは私を信用しているのか、昔の女の旦那と弟が同じチームにいる事実に少なからず動揺しているのか、、それか他の理由か。
いずれにせよ、私にとっては都合の悪いことだ。
私が玉地に信頼されていることも、玉地が女帝に気を許されるほどの男であることも。




