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セフレもち男を好きになるということ  作者: 一華花
第一部 23歳のもやもやする初恋
14/56

ごめんね、未来を見てしまった【4】


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平日の昼間、外は灼熱である。


外との温度差が出すぎないように調整されたカフェの空調は最初物足りないけど、しばらくいれば心地よい。


ピコンッ

『せっかくの平日休みだし、今日は出かけようかなぁ』


「…」


紅茶を一口飲みながらのろのろと返事を打つ。

なんでもいいから、今は気を紛らわしたい。


…たとえそれが彼氏を呼び出して待っているカフェ中の、好いている男からのメッセージだとしても。


『玉地も今日休みなんだ。

外は結構暑いよ』


ピコンッ

『おう日曜出勤の分な。

…てかめずらし。

外出てんの、ふゆたろ』


『そりゃ私だって外くらい出るわ』


ピコンッ

『さてはデートやな?』


カップを握りしめる手が一瞬、震える。

メッセージをしばらく眺めて、ぽちぽちと打ち込む。


『おーん、まぁ、そんな感じかも』


ピコンッ

『なんやそれ

まぁ、全然会えてないって言ってたもんな』


カランッとドアベルが鳴り、私は持ち上げかけたカップを置いた。


「―おまたせ」



ピコッ

『良かったな!楽しんでこいよ!』


視界の端にみえるメッセージに震える瞼を一度閉じて、にこりと微笑む。


「…ぜんぜん!

ちょっと久しぶりだね、葵くん」


――――――――


「外暑くなかった?大丈夫?葵くん」


「うん、このくらいなら大丈夫。

長時間日光あたったりしなければ平気だよ。」


海に行ったときに熱中症になったことや、外と室内の気温差で具合が悪くなりやすい葵くんに、私はいつの間にか会ったらまず体調を確認する癖がついていた。


「そっか、よかった。

でも暑かったでしょ、取り敢えず何か飲もう。


ていっても葵くんはいつものかな?」


「んー、そだね、小豆紅茶で」


一応ちらりとメニューを見た葵くんは、そう言ってメニューを閉じた。


濡れたTシャツの首元をぱたぱたとあおいでいる葵くんを前に、明らかに私の顔がこわばっている気がする。

葵くんはあまりこちらを見ていないので、バレていないと思うけど。


…まだだ。

静かに深呼吸をする。


店員さんに注文して、少し飲み進めてからのほうがいい。


「―すいません、注文お願いします。」


「はーい、お伺いいたします〜」


気がはやるのを感じながら注文をして、ぐるぐると回る頭の中を整理する。


このぐるぐるとする感覚は、仕事のときに似ている。

仕事なら解決策を調べたり聞いたりして答えを出せばとまるけど、今回の答えはどこにもないから、相手の一挙一動から目が離せなくて脳が休まらない。


散々別れ話のシミュレーションはしてきたのに、「せっかくお金払って飲むなら美味しく飲みたいだろうから、8割位葵くんが飲んでからのほうがいいかな」とかよく分からないこと考えてる自分が滑稽に思えてくる。


経験がなさすぎて正解がわからない。


傷つけたくないけど、そんな思いはただのエゴだ。


絶対に傷つける。


だからせめて、私は誠実に、葵くんと向き合わなければならない。

そう決めたのだ。


「…最近仕事はどう?うまくやっていけそうな目処はたった?」


「…ん、やっぱまだ難しいかな。

どうしても人間関係がね。」


「やっぱりまだ馴染めない?」


「うん。僕は経験もなくて若いから、その分努力して何か成果出さないと、ずっとうまく回らないと思う。

ふゆちゃんみたいにうまく立ち回れないから、いろいろ勉強しなきゃ」


「そっかぁ…。

まぁ私たちは新人なんだし、あまりうまく立ち回ろうとしすぎるとから回っちゃうかもしれないからさ。


葵くんが一生懸命しようとしていることは周りの人も見てると思うから、あまり思いつめすぎないでね」


「うん、そうだね…」と目を伏せつつ紅茶を口に運ぶ葵くんを見て、聞こえないように小さくため息をついた。


私はどうしても不器用な彼に口を出してしまう。

彼がたくさん考えて頑張っていることを知っているからこそ、報われてほしいと思ってしまう。


でもこの私の言動が、葵くんにとってプレッシャーにしかなっていないことに、最近気づいてしまった。


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