勇者だけが
自分の文章力がかなしい……
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「お目覚めですか?」
意識が戻り、ハヤトはゆっくりと起き上がる。
「……どこですか、ここ」
「ここはサリオンの教会です」
ハヤトは死んだことを理解した。そして気づく。
「シグレさんは……? シグレさんはどこですか!?」
辺りを見回すが、シグレの姿はない。ハヤトは嫌な予感がし、最悪の状況を思い浮かべた。そんなはずはないと。それだけは、絶対に有り得ないと願い……
「私たち神官が生き返らせることが出来るのは、勇者だけです」
一番聞きたくない、最悪の言葉が返され、その言葉はハヤトの心を打ち砕いた。
ハヤトは教会を飛び出す。
「ちょっと!?」
「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁぁあ!」
ハヤトだけが生き返って、シグレだけが死んだ。勇者という職業のメリットでありデメリットだ。
確かに身体は保証される。だがそれ以上に心が破壊されるものだ。
「嫌だ。こんな能力いらない!」
その言葉を口にした瞬間、勇者の証が光り出す。そしてハヤトの言葉が反映された事が感じ取れた。ハヤトは不死身ではなくなった。
「はは……やった、これで死ねる。シグレさんは僕のせいで死んだんだ。当然僕も死ぬべきなんだよね」
ハヤトはサリオンを出ようとし、正面から来た少女を見て固まった。それは以前ハヤトが救ったあの少女だ。
「勇者様!」
「……え? 何でここにいるの?」
ハヤトを見て少女の顔が途端に明るくなる。
「君、どうしてここにいるの?」
当然の疑問。それに対し、少女は
「勇者様のところへきたの」
「な、んで……」
「わたしの命は勇者様に助けられたから、私の命は勇者様のために使うって決めたの」
ハヤトを追ってサリオンにまで来てしまった少女に驚愕し、そして申し訳ない気持ちに支配された。
「ごめんね。僕はもう君とは会えない。もう行かなくちゃ」
「どこへ行くの?」
「僕のせいで仲間が死んじゃったんだ。だから、責任をもって僕も死ななくちゃならない」
「……勇者様?」
「僕は弱いから僕の仲間になるとすぐに死んじゃう。だから僕には関わらない方がいいよ」
そう言い残し、ハヤトは今度こそサリオンを出ようとする。
「勇者様……この世界を見捨てるの?」
思わずハヤトの足に止まる。クロムを倒せるのは勇者しかいない。ハヤトの死は人類の敗北を意味するのだ。どうして今までその自覚が無かったのだろう。死ぬことこそ無責任なのだと、ハヤトは思い知る。
「勇者様が死んじゃったら、たくさんの人が死ぬのよ! この世界を守れるのは勇者様だけなの」
「……」
「勇者様は、勇者様は弱くなんてない。私を、街を守ってくれたじゃない!」
「あ……」
「勇者様なら、絶対できるから」
「ああ、うっ……」
ハヤトにしか出来ないこと。仲間を失ってでも成し遂げないとならないこと。ハヤトはあまりに考えが足りなかった。
「そうだった。僕じゃないとだめなんだ。僕が強くならないと。僕が世界を救わないといけないんだ」
初めてそれに気づき、羞恥心に襲われる。ハヤトは自分より五歳ほど幼い少女にそれを気付かされた。
「ありがとう、もう大丈夫だよ。だから、君は家に帰った方がいいよ」
「私は勇者様と一緒に行くために来たの。だからこのままついていくよ」
「ダメだよ! 危ないんだよ」
「勝手についていくから」
「うぅ……」
食い下がる少女にハヤトは何も言えなくなる。気の弱いハヤトは言い返すことが出来ず、一時的に少女と行動することにした。
「まずは酒場のマスターに報告しないと」
ハヤトは再び酒場へと向かった。