死
次の日もハヤトは魔法の練習をすることにした。魔法の威力の調整をするのだ。
「んー。なかなか難しいですね」
「そりゃそーだ。常人なら一つの魔法を完璧に使いこなすのに一年かかんだぜ」
「えっ、そうなんですか!?」
「ま、ハヤトの場合は二、三日で全部習得出来そうだがな」
昨日のハヤトの魔法習得速度を見たシグレはそう評価する。実際、ハヤトは既にセルハームは使いこなせている。
「今日はこのくらいですかね」
日も落ちて、辺りは既に薄暗くなっている。今日は切り上げて、ハヤトはまた次の日に残りの魔法を習得することにした。しかし。
「……おい、なんでだよ」
「どうしたんですか?」
「なんであいつがいるんだよ!」
突如シグレが取り乱し、ハヤトが目を向けるとそこにいたのは剣を持った龍のような魔物で、今にもハヤトに襲いかかりそうな様子で立っている。
「最上級魔物のアルドラムだ」
シグレの言った最上級魔物とは危険度が全体の上位三パーセントの魔物のことだ。中でもアルドラムは上位一パーセントに入っており、高い知能と素早さを誇る。
「くそ、やるしかねぇ」
シグレは逃げるのは不可能と判断し、戦うことを決意。ハヤトはアルドラムの性質を知らないため、シグレの背の後ろで自身の身だけを守っている。
そしてシグレは先制攻撃を仕掛けたが、アルドラムの知能は予想以上のものだった。
アルドラムはシグレと戦闘能力が五分五分だと判断し、シグレの攻撃を回避しつつ先にハヤトへ刃を向けた。
「あ……」
「避けろ! くそっ!」
ハヤトはアルドラムの動きに反応出来ず、ただその刃が向かって来るのを見ている事しか出来ない。そしてハヤトが切り裂かれる直前。
「……ぐっ」
「し、シグレさん!」
ハヤトを庇ったシグレは心臓を一突きにされ、膝から崩れ落ちる。
「しっかりしてください!」
懸命に呼びかけるハヤト。しかしシグレはもう動かない。そしてこうしている間にも敵は待ってはくれない。
「くっそおおおおおお!」
ハヤトは剣を具現化させ、迫っていた剣を打ち払う。続けて来る刃を盾を具現化させ、防ごうとして……
「……あ」
アルドラムの剣は盾を破壊し、そのままハヤトの手首を切り落とした。
「う……あ、あ……うあああああああああああ!」
生まれて初めての激痛に倒れ込み、絶叫する。
「いやだ、いやだ、いやだ」
ハヤトは死んでも生き返ることができる。死んでもいいのだ。むしろ片手を失った今、ハヤトは一度死んで体を戻した方がいい。頭ではそう判断している。でも本能がそれを拒否している。
「死にたくない……」
「死にたくな……あ」
頭と体が二つに別れる形で、ハヤトは死亡した。




