パーティ編成
勇者の噂はたちまち街中に広まった。
ハヤトは少女の親に家に招かれ、これ以上無いもてなしを受けた。そして、欲しいものを何でもくれるという。
しかしハヤトはそれを断り、後で後悔した。
「あー、カッコつけるんじゃなかったぁ」
ハヤトには欲しいものが山ほどあった。冒険の資金や食料も足りないし、装備も不十分だ。それでもハヤトが断ってしまったのは、勇者として一般の人に迷惑をかけたくないという気持ちがあったからだ。
勿体ないことをしたと思いつつ、次の街へと出発しようとした時。
「勇者様!」
背後から聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くとそこにはハヤトが救った少女がいた。
「どうしたの?」
「わたしも、ついて行きたい!」
「……え?」
「わたしを連れて行って?」
突然のことにハヤトは混乱する。
「えーと、お父さんとお母さんには言ったの?」
「言ったても許してもらえないから言わない」
「ダメだよ! 君がいなくなると心配するし、そもそも危ないよ!」
「いいの。勇者様がいなかったら今わたしはこの世にいなかった。だから、いいの」
「……ダメだよ。君を連れていくことは出来ない」
ハヤトは少女を担いで彼女の家へ向かった。
「行くの! ついて行く!」
暴れる少女をなんとか家へ連れて帰り、両親に引き取ってもらった。
「勇者って、なんだか、いいなぁ」
嬉しさを抑えきれずそう呟いて、ハヤトは街を出た。
ハヤトが次に着いたのは、世界最後の王国だ。クロムは王国を優先的に滅ぼしていったのだが、世界中の強者が集まるこの国は今も滅ぼされずに残っている。
この王国には、今ハヤトが一番欲しいものを手に入れられる場所がある。酒場だ。ここには世界中の旅人が集まっていて、それぞれパーティを作っている。
レベルが1で、魔物1体倒すのに苦労してしまうハヤトにとって仲間は喉から手が出るほど欲しい存在だ。
さっそくハヤトは酒場へ入った。
「……すごい!」
いまやこの世界はどこへ行っても人が少ないというのに、この場所には人が100人近く集まっていた。
ハヤトは受付へ行き、渡された紙にプロフィールを書き込んでいく。
「えっと、ハヤトさんですね。職業は勇者……勇者!?」
ハヤトが勇者だと分かり、受付の女性は店の奥へ飛んでいった。しばらくして出てきたのは
「これはこれは勇者様。私はここのマスターをしている者です。この度は当店をご利用いただきありがとうございます」
店のマスターが直々にもてなしてくれた。
「こちらこそわざわざすみません」
ハヤトも丁寧に返事をする。
「して、今日はどのような者をお探しでしょうか」
「ここで一番強い人をお願いします」
「はい、すぐにお連れします」
マスターは足早に店の奥へと戻って行った。そしてしばらくして、マスターは1人の男を連れてきた。
「こちらが今この店にいる者で最強のシグレという者です。おそらく、現在世界でも最も力のある者だと思います」
その男は細身で、一見すると力があるようには思えないが、オーナーが嘘をついているようにも見えない。
「お前が勇者か。弱そうだが大丈夫か?」
「おい、勇者様になんて口のきき方してるんだ!……すみません、勇者様。こいつをどうか許してやってください」
「あ、はい」
なんだか気難しそうな人で、怒ると怖そうだ。
「お前は俺を仲間にしたいのか?」
「はい!」
「いいだろう。だが、パーティリーダーには俺がなる」
「……え?こういうのって普通勇者がなるものじゃ」
「文句があるのか?」
「……いえ、ありません」
ハヤトは別にリーダーになりたいわけでもないので素直に下につくことにした。
こうしてハヤトは新たな仲間、もといリーダーのシグレと旅を進めることになった。
「あ、そうだ。パーティ名は『シグレパ』な」
「え!?」
案外面白い人かもしれない。
シグレ
職業 戦士攻撃型
レベル76
体力 300
魔力 130
攻撃力 500
守備力 2
素早さ 200
賢さ 80
魔法 フィジック
特性なし