第十二話 『セイリアのお勉強』
このゲームの世界に入り込んで五日、アレスティアから脱出して四日が経過した。
オレたちはとうとう風の領地を抜けて隣の水の領地に入ったことをマップで確認したのだ。
つまり、デモリテたちもこれ以上追ってくる可能性は極端に下がるということだ。
だが、ここで一つ大きな問題が浮上してきた。
それは、水の領地に入って、最初の村に到着したときだった。
当面の身の安全が確保されたことで、一度今後の為にオレら三人が戦闘でどのように戦うか作戦を立てておきたい。という、フーリエさんの提案のもとで話し合っていたとき、
「このパーティー構成だと普通はセイリア君が前衛よね?」
木製のカップを持ったグレースが真面目な顔で訊ねてきた。
確かに、剣士職のオレ、アーチャーのグレース、魔法職のフーリエさん、普通に考えてオレが前線で戦わなければいけないのだが・・・
「オレってどう考えても足引っ張っているよなぁ」
メニューからオレのステータスを確認してみると、レベルはずっと1のままだったのだ。
理由は簡単で、追っ手の手が届かない所まで急いで逃げるという最優先事項のお陰でオレのレベリングにまで手が回らなかったのだ。
道中の敵モンスターはそこまで強くは無かったが、時間が無かったので全部フーリエさんとグレースで倒していたのだ。
すると、隣でオレのステータスを覗き込んだグレースが驚きの表情を見せて、いきなり椅子から立ち上がると、
「ちょっ・・・DEF150とAGL50の上昇って、桁違いのスペックじゃないの!?」
と、。グレースはオレがSSRのレア装備『ヴァン・フレリア』を持っていたのはもちろん知っていた。
しかし、具体的なスペックはまだ教えておらず、今になって初めて確認するに至った。ちなみにフーリエさんにはオレと初めて会った時に教えている。
「そうなんだよなぁ・・・オレってこのゲームのステータスについてもなーんにも分かんないんだよ」
両手を広げて開き直るオレにグレースは苦言を呈した。
「いくらなんでも、君が元々使っていたウェア装備と比べてどれだけスゴいものか位は理解してるでしょ?」
「まぁ、初期のウェアの防御力から15倍の値なのは分かるけど・・・」
注文したアイスティーらしきものをグイッと一息に飲み干して、オレは理解している事を呟いた。
すると、正面に座っていたフーリエさんがグレースの代わりにあることを質問した。
「一応聞いておくけど、メダルに込められた装備って素材を使って強化出来るの知ってるよね?」
「??」
何を言ってるのか分からない。という感情がオレの顔にはっきりと浮かんでいたのか、グレースもフーリエさんもただただ絶句していた。
「セイリア君って本当にこのゲームのこと・・・というか、もはやRPGゲームそのものを分かってないわよね?」
呆れた顔のグレースもフーリエさんも、あまりに乏しいオレのゲーム知識に、とうとうこれ以上の追究をすることは無かった。
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「とりあえず、このままレナちゃんと合流しても、役に立たない君を見ちゃったら、レナちゃん確実に幻滅しちゃうから、ここからは君のレベリングをするわよ」
村の近くにある小さな森に来た。オレはここでメダリオンというゲームのいろはを教えてもらえる事になった。
「じゃあ、まずは一番最初の剣技スキル3つ、使ってみて」
グレースの指示を聞いたオレは剣をそれぞれのスタートポジション、上段に構える縦斬り『バーティカル・スラッシュ』、中段の左右側に構える横斬り『ホライゾン・スラッシュ』、そして、剣を肩まで引いた構えの『スラスト』を一通り放ったあとにグレースを見ると、
「ああー、そういう事ね」
何かを察したのか、座っていた岩の上から下りると、
「ちょっと離れてくれるかな?」
と、オレがいた場所に立つと、何やらメニューを操作して装備を変更した。
そして、右手に持った得物は・・・
「かっ・・・片手直剣!?」
オレと同じブロードソードを手にしたのだ。軽く素振りをしていたグレースはこちらを見ると、
「一度私と決闘してみない?」
オレに決闘の申請を送ってきたのだ。レベル差があるとはいえ相手はアーチャー職、簡単に負けてたまるか!
・・・と思っていたのだが、三分後には、
「・・・負けた」
オレは大地に突っ伏していた。何も出来なかった。正直、初めてレナと決闘したときよりも歯が立たなかった印象だ。
「何となく分かった気がするわよ・・・」
オレに手を差し出したグレースが剣を腰の剣帯に戻してそう呟いた。
手を掴んで起き上がったオレはグレースの言葉について、その意味を問い掛けてみた。
すると、彼女は近くの木にもたれ掛かり、栗色の髪を指に巻き付けてながらオレの疑問に答えた。
「やっぱりマニュアル起動に慣れてないわね、初心者の君が使えるスキルは限られているとはいえ、構えでどの技なのかバレバレなのは良くないわよ、もう少し構えを意識してみて。」
「うっ・・・」
ぐうの音も出ない、そこに関しては今はどうしようも無いのだ。色々と練習して理解していく事のみがそれを解決してくれるのだろう・・・
「まぁ、あとは魔法と併せて使っていけるなら結構強力だけど、これに関してはレベルアップのステータス値の割り振りで上手くSPと他のステータスをバランスとっていかなきゃ」
色々とアドバイスはくれても、そもそもレベルアップについても曖昧な理解しかしていない。オレはその事をグレースに伝えると、
「そうね、君ってゲームすらしたこと無いようだし、実際にレベルアップしたら分かると思うよ」
そう言ったところで、腰に装備していた片手直剣からいつもの弓を背中に携えたグレースが森の中へと入っていくのを見たオレは、あたふたしながら彼女に付いていった。
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「せりゃあっ!!」
オレはグレースの指導のもとで、初心者が練習するためのモンスター『グレーウルフ』を2、3匹ほど倒した。
攻撃方法も飛び掛かって噛みつくのと鋭い爪でのひっかき攻撃だけなので、今までの修羅場と比べたら回避は遥かに楽だった。そして・・・
「うわっ!!」
白い画面に経験値と獲得金額の欄が表示された後に突然ファンファーレが鳴り響いてレベルアップの文字がキラキラと輝いた。
そして画面に現れたのは・・・
「これを振り分けるのか?」
自分のステータスの横にそれぞれ『+10』とその横に『残り+5』という文字が表示された。
どうやらステータスはレベルアップでHPとSPがある程度上昇し、それ以外の全てのステータスは一律10だけ上昇。
そして、毎回のレベルアップのボーナスで更に5だけ好きな能力に振り分けられる仕組みらしい。
「これだけは君が目指す戦い方に合わせた能力に振っていくしかないから、私が出来るアドバイスも少ないわ」
横からオレの様子を見ていたグレースはそう助言した。
もう一つ、オレはまだ分からないステータスの説明と役割をじっくりと聞いておいた。
まずはHP、もちろん体力のことで、ポーションなどで回復するが、無くなってしまうと光の粒になって消えてしまう。
これがダンジョン内なら最後に立ち寄ったセーブポイント、街の外などのフィールドなら街にある『復活の神殿』で生き返る事になるようだ。
それに、死んでしまうと『デスペナルティー』といい、スキルの熟練度などが下がってしまう上にその減少もかなり大きなものになっているようだ。
次はSP、他のステータスなどに直接影響するスキル以外の攻撃系や魔法系などのスキルを使用した時に消費する。
ここからは、自分のアバターの能力についてのステータスだ。
一つ目は、STR。
攻撃力のことであり、剣技スキルなどの物理攻撃の強さを表す。
スキルの階級によっても素の威力はもちろん変わってくるが、そこにSTRの値が入ってくることで相手に与えるダメージを決めている。
更に、ダメージ値の決定は他にも複雑な要素が関わってくるが特に考える必要は無いらしい。
二つ目は、DEF。
防御力のことで、物理攻撃に対する防御ステータスになっている。
これも剣技スキルなどにある防御系の技や装備の効果などの関係性も加味して自分に与えられるダメージを決めている。
三つ目は、INT。
知力のことで、魔法攻撃と防御、そしてレベルアップによるSPの上昇にも関わってくる幅広いステータスだ。
四つ目は、VIT。
生命力を意味しており、レベルアップによるHPの上昇に補正を掛けてくれる。壁役にとってはとても重要なステータスになる。
五つ目は、DEX。
器用さを指していて、武器を取り扱う時、特に鍛冶スキルや薬を作るための薬学スキルといった、いわゆる生産系スキルというやつの成功率に影響する。
加えて、戦いの上でも取り扱いの難しい上級スキルを使うときに攻撃がブレにくくなる為に、高威力の技を外してしまうことで課せられる硬直時間による隙を緩和できる恩恵があるようだ。
他にも、弓を使うときにも矢が変なところに飛んでいってしまう事を抑えられる効果もある。
このことはグレースいわく、弓矢を使うならDEXを上げていないとダメで、プレイスキルだけではどうにもならないということだ。
最後にLUK。
読み方の通り、幸運の値で、モンスターの攻撃で麻痺や毒などの状態異常になる確率を減少させたり、レアなドロップアイテムが落ちやすくなる。
だが、これはあくまでも隠しステータスで存在の有無は未だオカルト扱いになっているようだ。
それでも、ある素材を使ったアクセサリーを身に付けることでレアアイテムをゲットしたという噂が絶えないらしい。
グレースもこのステータスは全く信用していないと言っていた。
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ここまでがレベルアップで上がるステータスの説明だ。これだけ聞いて一応内容は頭に叩き込んだつもりだが、どのステータスにボーナスを振ろうか中々決まらない。
オレがどんなプレイヤーになりたいのか分からなかったのだ。
一応、魔法職ではなく武器を手にとって戦いたいが、先陣を切って戦う攻撃型か、皆の盾になる防御型、どちらがオレの性に合っているのか・・・
ジーっとレベルアップの画面を睨んだまま悩んでいると、しびれをきらしたのかグレースがいいアドバイスをくれた。
「せっかく、AGLの超強化が出来る『ヴァン・フレリア』を使っているし、アタッカー、要は攻撃型のステータスをベースに考えてみたら?」
『ヴァン・フレリア』のスペックはさっきも言った通り、DEFが150、AGLが50の強化になっている。
DEFに関しては、装備での上昇が主なステータスなのでいいのだが、AGLは通常、レベルアップのみでしか強化できないらしい。
つまり、レベルアップのプラス10とボーナスのプラス5、これを上手く使って色々なステータスを上げていくことでしか強化ができないのだ。
ここで、『ヴァン・フレリア』の恐ろしい所はAGLを50上げる点なのだが、これは実質オレのレベルをAGLだけそのまま5だけ上げているという事になる。
一見、このまま成長してもオレが得られる恩恵は、せいぜいAGLを他の人よりも50だけ少なくボーナスを振ったところで変わらないステータスになるだけだろう。
これでは、たくさんAGLに振ってきたスピード型のプレイヤーはおろか、軽量の武器を使ってスピードで翻弄するタイプのプレイヤー、
例えば、普通の片手直剣よりも軽いレイピアを使っているレナのような比較的AGLにボーナスを振ってきたプレイヤーと戦ってしまうと、完全に優位性が失われてしまうのだ。
しかし、フーリエさんが言っていた『メダルに込められた装備、メダリオンは特定のアイテムを素材に強化することが出来る』という点を考えると、話は大きく変わってくる。
『ヴァン・フレリア』を強化することでAGLの強化値が大きくなったら・・・それだけで、オレは人より多くAGLだけだが、レベルを上げているのと同義になってしまうのだ。
これを言い換えると、他のプレイヤーがAGLに振るはずのボーナスを、『ヴァン・フレリア』を強化して上がった分だけ他のステータスに振り分けられる事になる。
それだけでも他の人よりも格段にステータスを考える幅が広がるということになっているのだ。
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この事実についてはグレースも渋い表情を見せていた。
「そ、そうね、深く考えてみると結構恐ろしい能力と思う。流石にチート能力ってほどでは無いにしても、かなり凶悪なステータス上昇よ・・・」
と、率直な感想を述べてくれた。
このあともオレはどんなプレイヤーになりたいのか考えていたのだが、結局思い当たるのは一つだった。
「フレリアは英雄として、たくさんの敵を倒してたくさんの人達を守ってきたはず・・・それならオレも同じようなプレイヤー像を目標にしたい」
この言葉にグレースは少しの間その言葉の意味を考えてたのだが、何かを察したのか、すぐに答えにたどり着いた。
「なるほどね、つまり君はバランス型のステータスにしていきたいって考えているの?」
その言葉にオレもうなずいた。
「ああ、当面の間は全体のバランスを取りながら魔法も熟練度を上げていく。普通のプレイヤーがそんな事するのか分からないけどやってみたい」
オレの言葉にグレースの返事は、決して良くはないものだった。
「そうね、でも、どっち付かずのステータスだと剣士系にも魔法職にも対応はできても優位には立ちにくい。でも双方の弱点を補える点で、もしもマスターできるなら、もしかしたら・・・」
その先をグレースが語ることは無かった。それでも言わんとしたことは分かる気がした。
「まぁ、通常の剣士職ならタンクと呼ばれる壁役とアタッカー、どちらにするかで振り分けるステータスはかなり変わってくるから本来ならそれに準じたステータスにしていくものよ」
遠回しにオレの考えを否定するグレースにオレは食って掛かった。
「それならオレは皆の前に立ちたい、誰よりも前で戦いたいし、後ろが安心してサポートしてもらえるように誰よりも攻撃を引き受けたい」
それを聞いたグレースは呆れたのかため息をついた。
「やっぱり初心者の考える事ね・・・って言っても仕方ないけど、君がレナちゃんと決闘した時のあの反応力が実戦で活かせるならアタッカー寄りでステータスを上げていく方がいいかも」
「えっ!?」
思わぬアドバイスだった。そして、かなり的確に思えた。真剣な表情は初心者の戯れ言に対して、先輩として出来るだけの知識を振り絞った考えだったのだから・・・
「・・・そうしてみるよ」
オレは自分の我が儘に付き合ってくれたグレースの優しさに感謝していた。
これでオレが今後の目標とするステータスを決めることができた。
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「これはまた、このゲームには難しいステータス構成にしたんだね・・・」
昼ご飯の時間になり、グレースからオレがどういうステータス構成にするのか聞いて、苦笑したフーリエさんの様子。
そこからは、やはり普通じゃない構成をめざしているのだとオレは理解した。
「でも、セイリア君がやりたいなら別に良いんじゃないですか?」
「・・・そうだね、まだレベルには余裕はあるからね」
一応オレの考えに理解を示してくれたグレースに対して、フーリエさんは少々心配な様子だった。
このあと、オレは夕方までモンスターと戦って、剣技スキルの扱い方を徹底的に自分の体に覚え込ませるまでやりこんだ。
グレースいわく、『モンスターとの戦いもまともにできないで対人戦などできない』ということらしい。
その結果、オレのレベルは5まで上がり、ステータスも目標に沿うように振り分けた。やはりレベルが上がる度に強くなっている感覚があった。
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「それじゃあ、今日は僕が魔法について基本的なレクチャーをするとしよう」
昨日グレースにしごかれた村近くの小さな林でフーリエさんが先生をしてくれる事になった。
「まずは、魔法に欠かせない隠しステータス『マナ』と『オド』についてからね」
何やら難しそうな話になる予感・・・そして、それは予想通りであった。
「どちらも魔法を使うために消費される物質みたいな物なんだけど、マナはこの大気に存在して、オドは自身の精神力、ここではHPを元にして創られるんだ・・・」
ここまでの理解を最後に、教えてもらった一時間の間、結果としてフーリエさんが教えてくれた内容の半分も分かったかどうかだった。
魔法の練習にすっかりくたびれて草地に倒れ込んだオレの様子を見たフーリエさんは、
「まぁ、無理をすることは無いよ、このゲームの魔法は単にコマンドを選択して使えるものじゃないから・・・」
それでもヒョイヒョイと見本の魔法を放っていく様子は正直、オレに魔法のセンスが無いと暗示しているかのようだった。
「こんなに魔法の詠唱に神経を遣うなんて思ってもいなかったですよ・・・」
ため息をつくオレにフーリエさんは杖を空に構えると、
「やっ!」
石ころを三個、真上に投げて何かを呟くと、
「ルネ!おいで!」
その言葉の後に石ころの周りに水が集まると、30センチ位の獣の形を模してフーリエさんの足下にゆっくりと着地した。
「これって、アレスティアで呼び出した・・・」
グレースが空に放った三本の矢を中心にして同じ水の獣を召喚していたのだ。しかし、あの時は全長2メートルくらいだったので、今は随分と小さくなっている。
すると、フーリエさんが犬のような見た目の水の獣を抱えて説明し出した。
「この子は『ルネ』、精霊獣って言う種族なんだけど、この子を召喚するのも魔法の一つだ」
フーリエさんの説明によると、精霊獣は特定の魔法スキルを取得した上で、一定レベルの熟練度まで上げると設定できるようになるスキルらしい。
「君が使えるスキルじゃないけど、魔法職のプレイヤーは他にも色々ある複合魔法スキルをいくつか使いこなせて、初めて一人前というのがこのゲームなんだよ」
なるほど・・・魔法とは奥深いものだな、オレはそう認識して頷いた。すると、フーリエさんはさらに付け加えて説明した。
「剣士職にも魔法を使っているプレイヤーはいたりするけどね・・・」
「そうなんですか!?」
これはかなり参考になる情報だ。フーリエさんもオレが期待しているのを察知してか、丁寧に説明してくれた。
「例えば妨害系魔法なんだけど、敵を土属性の植物魔法で縛ったり、風属性でも突風で思うように動けなくすることで自分よりも速い相手にも同じ土俵に持ち込める」
「へぇ、そんな使い方が・・・」
使いこなせればかなり強いのはグレースも言っていた通りだった。しかし、フーリエさんはこんな事も付け加えた。
「それでも、大して魔法スキルの熟練度を上げる人はいないから強力な妨害にはならないし、そもそもSPが魔法職よりもそれなりに低くくなる。だから簡単な魔法だけにして欲しいのが僕の意見だ」
本職としての意見は結構厳しいものだった。そして、今回は魔法の基本を教わっただけで一日を終えた。
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そして、水の領地に入って三日後、大きな川が増えてきて進行ペースが落ちてきたがその間もオレは剣技スキルの特訓を進めていき、ついに熟練度が100に達した。すると・・・
「やった、新技が使えるようになった!」
『新たな片手直剣技』というタイトル、その下には二つのスキル名、『クロス・スラッシュ』と、『ダッシュ・スラスト』があった。
スタートポジションやどのような技なのか分かりやすいように簡単な文章での説明もあり、メニューから確認も出来るようだ。
ここで、スキルの熟練度の説明をしておくと、熟練度は最大1000まで上昇するのだが、
100毎の到達で新技が使えるようになり、さらに高い威力の技や、回数の多い連続技といった、より多彩な戦闘を可能にしている。
そして50、150、250・・・毎の到達で『消費SPの軽減』、『スキルの威力上昇』の二つから選択することでスキルの強化が出来るようになる。
ここで注意しなければいけない点は、その熟練度で選んだ選択を取り消せないという事だ。
消費SPを減らしても技自体の強化が無いと、高い防御力の敵と戦う際に強力なスキルを使わなければならずに多くのSPを消費したり、
威力を上げるだけでも、上級スキルの消費SPがかなり高いままで必要な時に大技が使えない、なんて事に繋がってしまうのだ。
これはレベルアップの時のボーナスでのステータスの割り振りも同様らしい。だからこそ、高いレベルになってからステータスの割り振りに後悔しても後の祭になってしまうのだ。
この為にオレが、どっち付かずになってしまうバランス型のステータス構成にする事を、経験者のグレースとフーリエさんが反対したのだ。
しかし、オレにはオレなりの考えがあった。これが正解かは分からなかったが、他のプレイヤーとは違う戦いかたをイメージしていた。
しかし、実現できるかどうか、それはレベルが高くなってからしか分からない事だった。
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そして、水の領地に入ってから五日後の昼、オレらが歩く草原の先に大きな川に囲まれた街が見えてきた。フーリエさんはマップを確認してからそこを指を指した。
「あそこがヒューマン族、水の領地のホームタウンになっている水の里、『ウォルリーネ』だよ」
マップによると水の領地の中心に位置しており、オレらが通ってきた南西側の湿地地帯、北東側の大河地帯の中継地点になっている。
遥か昔に『レニア』という盗賊の長がここに街をつくり、貧しい人々を住まわせたのが起源になっているようだ。
大河に繋がっている事もあって、食料の魚介類は新鮮かつ絶品らしく、上流域からは円環山脈のレアなドロップ品にも恵まれている事からヒューマン族の中では比較的裕福な方らしい。
「じゃあ、ここにも現実世界のプレイヤーが・・・」
「居るはずだよ。僕達プレイヤーがこの世界に来て十日目、恐らくホームタウンを挙げて他のプレイヤーの領地に入ってはいないはず、僕達が初めてこうして他の人がいる街に行くんだろう・・・」
グレースの神妙な面持ちでの問いかけにフーリエさんも真剣に答えた。
実際はフーリエさんが最初なのだろうが、きちんと訪問するのはこれが初めてになるので、他のプレイヤーがどんな状態になっているのか気になる・・・
「とりあえず行ってみよう、どんな状況か気になるよ・・・」
オレの言葉に二人とも賛成してくれた。
「そうだね、プレイヤー同士で上手くやっているのか、今後どんな方向性で脱出の手段を考えているのか、色々と気になるからね」
「レナちゃんも色々と情報集めているようだから私も頑張らなくっちゃ!」
太陽が真上から熱を浴びせるなか、オレたちは水の里『ウォルリーネ』に繋がる大きな木製の吊り橋を歩き始めた。




