『ポケットの中』
水中にいるように音がぼやけて聞こえる……耳鳴りも酷い……
『目標、横転。28番の安否を確認する』
『了解、超能力に気をつけろ』
追っ手の声が聞こえ、意識を取り戻した。
「う、うぅ……沙夜ちゃん大丈夫か?」
横転して逆さになった状態で沙夜ちゃんに声をかけた。
「……なんとか、でも青島さん、頭から血が……!」
「痛くない。大丈夫。頭ってちょっと切っただけで結構血が出るもんだから」
(それよりこの状況はマズイ!どうしよ!)
冷静を装いながら心はパニック状態。
とりあえずシートベルトを外し車の床(と言うか車の天井)に落ちた。
そこでようやく拳銃をリロード。
臨戦態勢を何とか整える。
割れたバックミラーを確認すると追っ手も車を停め、アサルトライフルを構え慎重に近づいてくる。
(アサルトライフルまで用意してんのか!とにかくここから出なきゃ!)
「沙夜ちゃんシートベルト外せる?」
沙夜ちゃんは言われるがままシートベルトを外して落下する。
バキバキに割れたフロントガラスを蹴る。が、1度では割れず2度……3度目で何とか蹴破り、沙夜ちゃんを引っ張って車から這い出る。
俺は横転した車体を盾に、手だけ出し、拳銃を闇雲に撃って威嚇をするが、直後アサルトライフルの掃射が襲う。
頑丈な車体でよかった。
やべ、予備の弾倉はこれで最後。
弾がない。
「沙夜ちゃん走れる?」
「足を挫いたみたいです……」
「え?!痛む?」
「だ、大丈夫です……」
無理してるな。
作戦をひとつ思い浮かべ、
「ちょっとここで待ってて」
発煙筒を焚いて、相手に投げつける。
一瞬相手が気を取られた瞬間、車の影から飛び出し拳銃を乱射。
うち1発が偶然頭を捉え、倒した。
影からもうひとり現れ、慌てて装甲車の影へ飛び込んだ。
直後、激しいアサルトライフルの銃撃。
装甲が削れるほどの勢いだった。
(あぶねー!)
追っ手は一歩、また一歩と慎重に近づいてくる。
こんな状況でも油断ねぇのかよ!油断しろ!
(弾は?)
荒い息を整えながらカチリとマガジンを抜いて残弾を確認した。
乱射した為数えていなかった。
(残り、1発……?嘘だろ……!刃物も持ってない。武器になりそうな物は……?)
ポケットを探したが、ジッポとタバコとガムしかなかった。
高速の下は河が流れている。
相手は警戒して慎重に近づいて来る。
どうする、どうする?




