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我が覇道を讃えよ ~尊大不遜な元傭兵、辺境で勝手に建国して成り上がる~  作者: エノキスルメ
第一章 我は王である

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第二十話 戦士たち

 リンダム王家に仕える戦士たちは、普段は王の館やその周辺で生活を送っている。側近たちは館の大部屋で寝起きし、その他の者たちは館の傍の野営地で暮らしている。


 彼ら戦士たちのエドウィンに対する忠誠心は一様ではなく、エドウィンとの付き合いの長さによって差がある。

 側近であるジェラルドやサベルト、レオフリックやオズワルド、その他にもエドウィンが子供の頃からの付き合いである古参の戦士たちは、個人としてエドウィンに忠誠心を抱いており、エドウィンも彼らを信頼している。彼らであれば、自分の就寝中の警護をも安心して任せられると思っている。


 一方でそれ以外の戦士たち、その中でも特に、アロナ島へ渡るにあたってエドウィンの傘下に加わった新参者たちは、あくまで己の利益を見込んでエドウィンに付き従っている。彼らはエドウィンに仕えれば良い思いができると思っているからこそ言うことを聞き、首尾よく一地域の支配者の座に収まったエドウィンの手腕を受けて今のところは忠実な態度を見せているが、もしエドウィンが成り上がりに行き詰まるようであれば、おそらくは落ち目の主君を見放して去っていく。

 エドウィンもそのことは承知の上で、彼らを有用な戦力として従えている。自分が王として躍進を続け、彼らを厚遇し続ければ、いずれ彼らの中にも自分への忠誠心が芽生えていくだろうと期待しながら、今は利害の一致に基づく主従関係を保っている。


 側近や古参戦士たちの忠誠心を繋ぎ止めるためにも、新参の戦士たちの期待を繋ぎ止めるためにも、エドウィンは主君として努力し続けなければならない。彼らを従わせ続けるために、まずは何を置いても腹を満たしてやり、そして財産と、より良い未来を迎えられるという希望を与えてやらなければならない。

 エドウィンは支配下に置いた人里から税として納められる食料を、四十人の戦士たちとその家族に惜しみなく配っている。彼らは十分以上の食料を日々受け取り、その中には新鮮な肉が多く含まれたりと、質の面でも一般的な民より恵まれている。


 また、エドウィンはアロナ島に着いて早々に盗賊団の討伐を成し、盗賊たちの持っていた掠奪品――金属製の装飾品や、衣類や布や毛皮などを己の戦利品として得た。それらの戦利品を、勝利への褒美や即位に伴う祝いの品として戦士たちに分配している。

 指導者が配下に褒美を与えるのは、支持を繋ぎ止める上で最も基本的な手段のひとつ。それはエドウィンと戦士たちの関係が、王とその家臣というかたちに変わっても同じこと。エドウィンは今後も、他の勢力との戦いで得た戦利品や、いずれはお抱えの職人に作らせた装飾品などを、戦士たちへの報酬に充てるつもりでいる。


 加えて、エドウィンは今後、彼らに家も与える。民を労働力として使って王の館の周囲に新たな家屋を建設させ、そこに戦士たちを住まわせるつもりでいる。建設作業は既に始まっており、冬までにはひとまず全員が収まるだけの家屋を完成させたいと考えている。

 これだけの待遇を示しておけば、戦争で大敗して皆を養いきれないほど領土を失ったり、よほど理不尽な扱いをしたりしない限り、戦士たちの支持を失う心配はないだろうとエドウィンは考えている。実際、彼らは王の気前の良さに大変満足しているようで、新参の戦士たちに関しても、エドウィンとの個人的な信頼関係が徐々に育っている。


 また、彼ら戦士たちは、現地住民とも良好な関係を築きつつある。

 アロナ人農民たちもなかなかにしたたかなもので、戦士たちの多くが若い独身者だと知った彼らは、戦士と自分の家に姻戚関係を結ぶことで、自分たちもこの国の支配者層に準ずる立場に収まろうと試み始めた。結果、若いアロナ人女性が戦士に積極的に求愛したり、農家の家長が自分の若い娘を戦士に紹介したりする光景がよく見られるようになっている。若い独身の戦士のみならず、所帯持ちの戦士に互いの子女を婚約させようと持ちかける者もいる。


 そのようにして戦士に接近するアロナ人農民の多くは、クレアから農地を与えられて自作農となった者たち。彼らは命の危機を救われたこともあって元より戦士たちに好意的で、戦士たちと日々の生活を共にすることで距離を縮めている。

 一方で、他の人里からわざわざ来訪して戦士たちに声をかける者もいる。そこまで気合いの入ったことをするのは農場の経営者をはじめ裕福な自作農が多いようで、自家が広い農地や多くの家畜を所有していることを好条件として提示し、戦士との姻戚関係をとりつけようとしている。


 早い者はリンダム王国の成立より前からそのような努力を重ね、その結果、王国成立から数週間が経過した現時点で、既にアロナ人女性と結婚した戦士も何人かいる。

 この調子であれば、アロナ島で血縁や地縁を得た戦士たちは、迅速にこの地の社会に同化していくだろう。そして、新たな故郷となったリンダム王国を守るためにも、より一層王家に忠実になるだろう。エドウィンはそう見込み、現状を好意的に受け止めている。


 現状での戦士たちの日々の仕事は、大きく三つ。

 まずは、王であるエドウィンと軍事行動を共にすること。王となったエドウィンは、アイヴァー川下流域の東側まで領土を拡大している最中で、エドウィンと共に川を渡って東の人里を巡り、武力を誇示して服従を強いることは、戦士たちの最重要の任務となっている。

 次に、王の館を警備し、そこで暮らすエドウィンとクレア、蓄えられた王の財産を守ること。さらには、各人里から税を集め、王の館へ運ぶこと。こうした仕事はリンダム王家の権勢を維持する上で欠かせないものであり、側近たちや古参戦士たちが中心となって担っている。

 そして最後に、練度を維持し、さらに高めるための訓練。各々で模擬戦などを行って武芸の腕を磨くことはもちろん、陣形を組みながら集団戦闘を行う訓練も定期的に行われる。

 その訓練には、王であるエドウィン自身も参加する。皆の指揮官として。同時に、自ら武器を振るう一人の戦士として。


「盾の壁!」


 王の館の裏手。エドウィンは鋭く命令を発しながら、己の意匠が描かれた円盾を構える。エドウィンの左右に並ぶ総勢十数人の戦士たちも同じように円盾を構え、並んだ盾が壁を築く。その見た目通り「盾の壁」と呼ばれる、キラケス人戦士にとっては最も基本的な陣形。

 エドウィンたちの正面からは、レオフリックに率いられた十数人の戦士たちが迫る。


「戦士諸君! 根性を見せろ!」

「遠慮なく攻めるのが陛下への敬意だ! 押し崩せ!」


 エドウィンとレオフリックがそれぞれ声を張り、直後に両者の率いる戦士たちは激突する。レオフリックたちのくり出す体当たりや、訓練用の木製武器による攻撃が、エドウィンたちの盾の壁を襲う。その衝撃が大きな音となって辺りに響く。

 レオフリックたちの突撃を受け、しかしエドウィンたちは持ちこたえ、盾の壁を維持する。エドウィン自身も、体格で勝るレオフリックの木斧による打撃や盾を構えての体当たり、さらには鋭い蹴りを円盾に受けながら、僅かに下がったのみで耐える。


「そこまで! 攻撃を止めろ!」


 レオフリックの命令で、彼の率いる戦士たちは攻撃の手を止め、数歩下がる。実に数十秒に及ぶ猛攻を受けながら、エドウィンたちはそれでも耐え抜いた。


「諸君、よく持ちこたえた! 小休憩をとった後、攻守を交代しよう……レオフリックたちと同じかそれ以上の勢いで襲い返すのが礼儀だ。容赦せずにいこう」

「皆聞いたか? 楽しみだな」


 不敵に笑うエドウィンの言葉を聞き、レオフリックが苦笑交じりに言うと、両陣営の戦士たちから笑いが起こる。

 休憩の後、今度はエドウィン率いる戦士たちが攻め手に転じ、レオフリック率いる戦士たちが陣形維持の訓練に臨む。エドウィンの言葉通りに容赦のない攻勢がくり広げられ、しかしレオフリックたちは陣形を維持してみせる。

 さらにその後は、全員でより複雑な陣形を構築する訓練が行われる。盾を亀の甲羅のように重ねてより強固な防御陣形を築いたり、素早く移動して盾の壁を作り直したりと、エドウィンが命令を下す度に戦士たちが巧みに連携し、まるでひとつの生き物のように自在に動いていく。

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