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第2話 前世の記憶と、絶望的な現実
丹田、いや、アルドリア王国宰相・バルドルとして転生した男は、記憶の洪水に襲われた。
36年間の社畜人生と、この世界の宰相としての記憶が混ざり合う。
「閣下、本日のスケジュールです」
若い書記官が分厚い羊皮紙を差し出す。
午前5時:朝食兼政策会議
午前7時:税制改革委員会
午前9時:軍事会議
午後1時:貴族との午餐会
午後3時:地方巡察
午後7時:外国使節との晚餐会
午後10時:書類審査
午前0時:翌日の準備
「……これ、労働基準法違反では?」
前世の知識が自動的に反応する。
「法?宰相閣下、何をおっしゃいますか」
一方、王の間では。
「陛下、宰相が目覚めました」
「ふん、また働き始めるのか。あの男もつまらん」
バルドル(丹田)は気づいた。
この王国、いや、この世界全体が「働き方改革」などという概念とは無縁だった。
王は働かず、臣下は過労死寸前。
これではいずれ国が滅びる。




