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吸血の勇者〜自分を疎んじていた家族により最凶最悪の迷宮に追放された少年魔術師は、唯一無二の職業と固有魔術の力で最強へと上り詰める〜  作者: シャイ
第一章

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第13話 マンチーニ家攻防戦④ —ディエゴの固有魔術—

数分後に第14話、22時半に第15話を投稿します!

 フェデリコたちを退(しりぞ)けても、すぐに新手が来ることはなかった。

 奇妙なほどの屋敷の静けさに、ソフィはうすら寒いものを覚えた。


 当初の予定通り、イヴレーア家騎士団副団長のエドアルドとタレス領冒険者ギルドの副ギルド長リカルドのいる別働隊と二階で合流する。

 彼らも、マンチーニ家騎士団第一分隊長のシモーネ率いる一団を倒したようだ。


 互いの持つ情報や被害を確認して、上階を目指す。


 四階までたどり着くと、大きな広間があった。

 奥にぼんやりと見える扉は閉ざされている。


「人の気配は……近くにはありませんね」

「あぁ」


 ともに先鋒を務めるエドアルドとうなずき合い、ソフィは広間に足を踏み入れた。


 後続を含めた全員が広間に入ったとき、

 突如として無数の魔力の塊が全方位から飛来した。


「皆!」


 ソフィは、とっさに自分の周辺を【球状結界(バリア)】で覆った。


 しかし、予想された衝撃は来なかった。

 ソフィを、いや、反乱軍全員を囲む【球状結界】が一瞬にして展開され、攻撃をすべて防いだのだ。


「一体誰が……いえ、この発動速度と正確性は一人しかいませんね。助かりました、閃光」


 閃光——サーナがコクリとうなずいた。


 前方から拍手が聞こえる。

 先程まで閉ざされていた扉が、いつの間にか開いている。


「平民の集まりにしては、やるじゃありませんか」


 距離が遠く、その顔はぼんやりとしか見えない。

 人を小馬鹿にした猫撫で声とセリフの内容だけでその正体はわかった。


「今の【操縦弾(ドミネーション)】はあなたですか——マンチーニ家騎士団長、ヴァレリオさん」


【操縦弾】。

 自分の思い通りに弾の軌道を変化させられる、高等魔術だ。

 ずっと弾をコントロールしなければならない分、集中力と魔力は(けず)られるが、メリットも多い。


 敵の守りの弱い部分を意識的に狙えるし、今回のように本人がその場にいなくても攻撃することができる。


「おやおや、【操縦弾】なんて知っているのですか。すごいですねぇ」


 こちらの挑発しつつ、ヴァレリオがゆったりとした足取りで近づいてくる。

 その横でのそのそと歩いている巨漢はディエゴだろう。


 二人の後には、ざっと三十名ほどの騎士がついている。

 ここに来るまでに、ソフィたちも被害がなかったわけではない。


 戦力としては、ほぼ互角と見て良いだろう。


 ただ、一つだけ気がかりなことがあった。


「ベニート様はどうなさいました?」

「お休みされておりますよ。あなた方ごときに全戦力を投入するとでも?」


 ヴァレリオが鼻で笑った。


「ずいぶんと舐められたもんだな」


 エドアルドが不快そうに吐き捨てた。

 しかし、ソフィは安堵していた。


 ベニートの固有魔術【魔眼(まがん)】は、見ただけで魔術の構造や効果がわかるようになる、という優れものだ。

 ハッタリや奇襲はすべて見抜かれてしまう。

 普通の【魔力弾(マジカル・バレット)】と見せて【操縦弾】を放つ、などといったトリックプレーもできなくなるのだ。


 また、彼の多種多様な小技は、集団戦においては特に注意しなければならないものだった。

 ディエゴも固有魔術持ちであり、ヴァレリオも固有魔術こそ持っていないが、優秀な魔術師だ。


 正直なところ、ベニートがいないというのはありがたい話だった。


 レオについて色々聞きたいところではあるが、目の前の敵を倒してからベニートを捕らえれば良いだけのこと。


「なんだ。低脳の匂いに加えて妙に陰気臭いと思ったら、イヴレーア家の騎士までいるではないか」


 エドアルドに目を向け、ディエゴが頬を吊り上げた。


「君たちの主は腰抜けだと思っていたが、ついには平民にまで屈したようだな」

「騎士を数人派遣しただけで屈したと勘違いするお花畑の脳では、マッテオ様のお考えなど理解できないだろうな」


 イヴレーア家騎士団副団長のエドアルドがディエゴと同様の、人を小馬鹿にするような笑みを浮かべた。

 彼は、基本的には品行方正なイヴレーア家騎士団の中では異色で、すこぶる口が悪い。


「っ貴様!」


 余裕を見せていたディエゴの顔が、瞬時に真っ赤に染まる。

 次の瞬間、エドアルドの体が後方に吹っ飛んだ。


「ちっ」


 ソフィは【身体強化(アクセラレート)】を発動させ、エドアルドとディエゴの間に飛び込んだ。


 ディエゴの固有魔術は【高速移動】だが、単に移動速度が速くなるというだけの代物ではなかった。


「話には聞いていましたが、動きだけでなく腕の張りまで速くなるとは……厄介ですね」




◇ ◇ ◇




 各所で戦闘が開始される中、サーナはヴァレリオと向かい合っていた。


 後ろにはロレンツォとビアンカが控えている。

 どちらもタレス領の冒険者だ。


 対するヴァレリオの背後に控えているのは、第二分隊長のマッティーアと第三分隊長のダニエーレだ。


「私の【操縦弾】を防いだのは貴女ですね」


 ヴァレリオがサーナを見る。

 口調こそ穏やかだが、その眼光は鋭い。


「冒険者にあなたほどの腕の持ち主がいらしたとは知りませんでした。フードを取り、名乗ると良いでしょう」


 上から目線の物言いに、サーナは微動だにしなかった。

 冒険者ではないし、実際の身分は目の前の男よりも上なのだ。


「……まぁ、いいでしょう——」


 ヴァレリオが口元を歪ませた。


「——名乗りたくないのなら、無理やり名乗らせるまでです」




 三対三で戦っていたのは最初だけで、気がつけばサーナ対ヴァレリオ、ロレンツォとビアンカ対マッティーアとダニエーレという構図ができあがっていた。

 おそらくヴァレリオがそうなるように立ち回っていたのだろう。


 偉そうな態度を取るだけのことはあり、ヴァレリオは強かった。

 技の速度、威力ともにレベルが高い。

 最初は打ち合っていたが、サーナは徐々に守勢に回るようになっていた。


「なるほど。防御力はたしかなようですが、攻撃力が足りませんねぇ。守るだけでは勝てませんよ?」


 ヴァレリオが余裕の笑みを浮かべ、それまでの倍以上の弾を生成した。

 防御は不要と判断し、リソースの多くを攻撃に傾けたのだ。


 ——それこそが、サーナの望んでいた展開だった。

【球状結界】を解除し、【角状結界(シールド)】をいくつも展開する。


「なるほど。強度を高めましたか」


 ヴァレリオの見立ては間違っていない。

【角状結界】は四角い結界だ。

【球状結界】のように全方位をカバーすることはできない分、一枚一枚の強度は高い。


 しかし、サーナの狙いはそこではなかった。


「防げるものなら防いでみなさい!」


 無数の弾が飛来する。

 それらが触れると【角状結界】はわずかに沈み込んだ。

 ——次の瞬間には方向転換し、ヴァレリオに襲いかかっていた。


「まさか……弾力性のある【角状結界】⁉︎」


 ——正解っす。

 サーナは心の中で答えた。


 結界の性質は術者が自由に変えられる。

 弾力性を高めておくことで、弾を防ぐのではなく弾き返したのだ。


 斬撃や触れた瞬間に爆発する類の攻撃だったら、弾力性は効果を発揮しない。

 ヴァレリオが油断していたからこそ有効な作戦だった。


「くっ……!」


 完全に予想外のカウンターだったはずだが、ヴァレリオは弾が届く前に【球状結界】を生成することに成功したようだ。

 術の発動速度はさすがと言える。


 しかし、【球状結界】は全方位をカバーできる分、強度は落ちる。

 サーナはあらかじめ用意していた魔力の弾を一斉に放った。

 ヴァレリオの心臓に向かって。


「ふっ、浅はかですね。【球状結界】なら一点集中で崩せると思ったのでしょうが、考えが甘いと言わざるを得ません」


 ヴァレリオの胸の前に【角状結界】が生成される。

 その発動速度はこれまでの比ではなかった。

 あらかじめ準備していたのだろう。


 奇襲で【球状結界】を生成させ、局所攻撃で一気に勝負を決める。

 サーナの作戦をヴァレリオは読んでいたのだ。


 ——そしてサーナは、作戦が読まれていることまで読んでいた。


「まさか跳ね返されるとは思っていませんでしたが、その後の詰めが甘すぎる——なっ⁉︎」


 ヴァレリオの余裕の表情が崩れた。

【球状結界】に触れる直前、弾の軌道が変化したからだ。


「【操縦弾】……⁉︎」


 ヴァレリオが正解にたどり着くが、今更遅い。

 その右足に次々と弾が被弾する。

 もう使い物にならないだろう。


 サーナは最初から、この一撃で勝負を決めようとはしていなかった。

 ヴァレリオが強敵だと知っていたから。

 急所を狙っても防がれるなら、機動力を削いでおいたほうが今後につながると判断したのだ。


 相手の実力を正しく評価できていたかどうか。

 それが一連の攻防の勝敗を分けた。


「なるほど……あなたは相当な手練(てだ)れのようだ。少々みくびっていました」


 片足を引きずりつつも、ヴァレリオは不敵に笑った。


「ならば私もマンチーニ家の騎士団長として、本気でお相手いたしましょう」




◇ ◇ ◇




「口ほどにもないわ! フハハハハ……はっ?」


 大笑いをしていたディエゴが、一転して間抜けな表情を浮かべた。

 彼に蹴り飛ばされたエドアルドが、軽快な動作で立ち上がっていた。


 ソフィはホッと息を吐いた。

 服は汚れているが、怪我はしていないようだ。


「おめでたいヤツだな。まさか、今ので手ごたえを感じていたのか?」


 エドアルドが笑った。

 先程にも増して相手を馬鹿にしているその表情は、とても貴族の騎士団副団長が浮かべて良いものではなかった。


 あれでは、どちらが悪者かもわからない。


「大方、指の先にも脂肪がたまって感覚がにぶっているんだろう。もっと痩せたほうがいいぞ」

「なんだと……⁉︎」


 ディエゴの顔が再び真っ赤に染まり、その蹴りによってエドアルドが吹っ飛ぶ。


 ソフィは攻撃直後の隙を狙い、ディエゴに【魔力弾(マジカル・バレット)】を放った。

 しかし、巨体に似合わぬ俊敏(しゅんびん)な動きでかわされた。


 一瞬で距離を詰められ、逆に蹴りをくらう。

 背中から壁に激突するが、魔力を身にまとって衝撃を和らげたため、大したダメージは入らない。


「なるほど」


 ソフィはほこりを払いつつ、立ち上がった。


 エドアルドも同様の仕草をしている。

 二度も吹っ飛ばされているわけだが、ピンピンしていた。


「馬鹿な……!」


 ディエゴが絶句している。


「たしかにブタにしては速いほうですが——」


 ソフィは片頬を吊り上げた。


「——攻撃に重みが足りませんね」

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