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9.メイプルの悩み

 教会の一室で目覚めると、メイプルの姿がなかった。

 先に起きて仕事をしているのだろうか。ゆっくりと小生も部屋を出ると、人の姿のメイプルを見かけた。

「弟の気性難(気性の難しい馬)は筋金入りで……私が活躍すると、今まで以上に調子に乗るのではないかと……」


 メイプルの話を聞いていたのはシスターだった。彼女もまた、悩ましそうに答えた。

「確かにユニコーン殿が悩むのもよくわかりますが、同じ血が流れている全姉だからこそ、本来やるべきことをこなして、弟殿に働きかけるべきでは?」

「弟はわかってくれるでしょうか?」

「参考になるかはわかりませんが……私の身近には、仲の悪い兄妹がいました」

 メイプルは黙って頷いた。

「常にケンカばかりしていたのですが、ある日2人は森で迷子になり……命の危機にひんしてから協力し、今では村で一番仲の良い兄妹となっています。あきらめずに働きかけていけば、いつかはわかってくれるものです」


 その話を聞いていたメイプルは、にっこりと笑った。

「悩みを聞いて下さり、ありがとうございます! アルフレッド様に相談してみたいと思います」

「頑張ってください」

 小生は何も聞かなかったフリをして部屋に戻ると、まさに今起きた様子でベッドの上でボケっとしておいた。


「アルフレッド様。おはようございます」

「ああ、おはよう」

「昨日のレースの話なのですが、やはり辞退しようと思います」

 小生は、その話を聞いて拍子抜けした。さっきの流れなら出走の一択だと思うが……まあ、小生は何も聞いていないはずだ。顔には出さないように努めよう。

「君の気が進まないのならムリに誘ったりしないよ」

「あとひとつ、よろしいでしょうか?」

「なんだい?」

「弟と会って頂けませんか?」


 さっき話にあった弟君のことか。姉が美しい姿をしているように、弟も見事な毛並みのユニコーンなのだろう。ビーストテイマーの血が騒ぐ。

「紹介してくれるのか! ぜひ会いたいっ!!」

「アムアス大森林まで行くことになりますが……よろしいでしょうか?」

 新たな仲間に出会えるのなら、ダンジョンの奥深くだろうが行くのがビーストテイマーだ。

「地の果てだろうとお供するぞ!」


 小生はすぐに神父に挨拶に向かい、事情を話すと神父も理解を示してくれた。

「せっかく誘って頂いたのに済まない」

「いいえ。その場合は、弟殿の力になるべきだと思います」

 メイプルもシスターと話をしていた。

「また、何か悩みがあればいつでも相談してください」

「ありがとうございます。シスター!」

 メイプルは、シスターとハグをしあうと、ユニコーンへと姿を変えた。

 まもなく、小生が跨ると背中には6枚の翼が姿を見せる。

「行って来ます!」


 空へと舞い上がると、手を振る神父やシスター。少しずつ例年の活気を取り戻していくアーダン村の様子が見えた。

 子供たちが手を振りながら叫んでいた。

「また来てよーー。天馬の勇者さまーーー!」


 天馬の勇者か……その言葉は、何とも照れ臭い。

 子供の頃は勇者と言われることに憧れるものだが、冒険者ギルドをクビになってから呼ばれるなんて、世の中何が起こるかわからないものだと思う。

「しっかり掴まっててください」

 そう言うと、メイプルセイバーは東へと進んだ。

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