8.メイプル無双
除霊レース開始と同時にメイプルセイバーは、上手なスタートをきった。
僅か50メートルほどで、2番手との差を身体一つ分。だいたい2.4メートルほど差をつけ、トップをキープすると、更に差を広げにかかった。
「は、はやい!」
「ふん……いきり立ってるだけだろ」
最初のカーブである第1コーナーに入ると、2番手との差は身体2個分の差になり、最後尾との差は10個分の差が開いていた。
メイプルのペースは衰えることなく、第1コーナーの中腹で身体……いや、馬身と呼ぶか。
第1コーナーの中腹で、2番手とは3.5馬身ほどの差になり、直線コースへと踏み込むと5馬身ほどに広がっていた。
その圧倒的な走りに、観客である村人たちは心配そうな顔をしていた。オーバーペースだと感じているのだろう。
ところが、小生はビーストテイマーだからよくわかる。彼女はまだ体力の8割以上を温存している。1600メートルは彼女にとって短すぎるようだ。
「準備運動のようにいくぞ」
「はい」
メイプルセイバーが第2コーナーに入ると、2番手との差は8馬身以上に広がっていた。2番手から最後尾まで12馬身ほど開いているので、とても長い馬群になっている。
メイプルはここで足運びを緩めて呼吸を整えている。体力は8割方残っているが、最後の難関と言える坂道を警戒しているのだろう。
今のうちにクールダウンしておけば間違いない。
2番手との差が6馬身ほどまで縮まっていたが、体力が8割5分ほど残っているのなら、十分なアドバンテージを持っている。
最後の直線200メートルに入ると、小生は鞭を使って、彼女の前脚にブーストをかけた。
「な、なんだ……あのスパートは!?」
「に、逃げているくせに……追い込んでくる!!」
対戦相手の悲鳴には耳も貸さずに、メイプルは鋭いスパートを見せつけた。
2番手以降のシャドーホースたちは、すっかり疲れ切った様子で誰も勝負を挑もうとしない。それどころか悲鳴を響かせていた。
「うわああああああああ!」
「や、やめてくれ……」
「もう、これ以上……実力の差を見せつけないでくれぇ!」
坂道でジリジリと2番手以降のライバルが引き離されていく。
坂道の中腹で10馬身差。
坂の終わりには13馬身差。
ゴールポスト代わりの村の西門を通過したときには、15馬身差。おおよそ36メートル差を2番手と付ける圧勝だった。
因みに2番手は自警団の団長で、3番手のシャドーホースとは3.5馬身差をつけていた。普通のレースなら、これだけの差がついていれば文句なしの快勝だと、詳しそうな村人が言っていた。
「メイプルセイバー!」
「黄金の大逃げウマ!」
「さすがは一角獣だ……牡馬が全く相手になってない!」
「いや、騎手がいいよ! アルフレッドさんって……やっぱりすげー!」
大歓声を受けるというのも気持ちがいいものだ。悪霊たちも残らず浄化できたことだし、一件落着といったところだろう。
メイプルのたてがみをなでて好走をねぎらっていると、神父がやってきた。
「アルフレッドさん」
「どうしました?」
「せっかくなので、教会の主催するレースに参加してみませんか? あそこには、様々な地域から選りすぐりの駿馬が集まります」
視線を落とすとメイプルは困り顔になっていた。彼女はあくまで村人のために走っていたのだから、こういう反応になるのも頷ける。
ただ、いきなりムゲに断るのも神父に悪いので、ここはワンクッション置こうと思った。
「少し考えさせて頂けませんか?」
「わかりました。ぜひご検討ください」
【作者からのお願い】
ここまで読んでいただきありがとうございます。
以降もメイプルセイバーの圧倒的な強さはもちろん、弱いユニコーンを使っても戦えるアルフレッドを書いていければと思います。
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