幕間8 慈光の姉弟とエル・ブロッサム城の秘密
三人は、エル・ブロッサムに案内され、応接間へ案内された。
その道中に見た城内は、姉弟の知るものと違う部分が多かったが、庭や一部の場所は、知っている様相とほぼ変わり無かった。
姉弟は今更ながら、自分は八百年前に来たのだと、少しずつ受け入れていた。
応接間へ着くと、エル・ブロッサムが魔法を使ってお茶を用意してくれた。
ソファに座るよう促され、姉弟はクッタクァと並んで座り、お茶を頂いた。
よく知っている味と香りで、知らないうちに緊張していた肩が、ため息と一緒に緩んだ。
対面のソファに座ったエル・ブロッサムは、二人の様子を見つめながら、やんわりと微笑んでいたが、やがて視線をクッタクァへと向けた。
その星空のような瞳に浮かんでいるのは、疑念だった。
視線を受けたクッタクァは、気づいていないのか、優雅にカップを傾けている。
エル・ブロッサムはすぐに疑念の視線を引っ込め、柔らかな視線を姉弟たちにも向けた。
「落ち着いた?」
「うん、い、いえ、はい!」
普段通りに答えそうになり、エイルは慌てて取り繕った。
目の前にいるのは、両親や両祖父母も尊敬する、偉大な始まりの女王だ。
自分たちも絵本などで知っている、偉大な冒険者でもある。
隣のルクスも同じようにまた緊張しているらしく、身を強張らせていることがつたわってきた。
今更ながら、二人はエル・ブロッサムと言う伝説と出会ったのだと、実感していた。
こんなことなら、もう少しマナーの授業を真剣に聞いておくんだったと、エイルが内心で震えていると、エル・ブロッサムが微笑みかけてきた。
「普通に話してくれたらいいよ」
砕けた口調でエル・ブロッサムはそう言ってくれたが、姉弟は顔を見合わせて、
(どうする?)
(無理だよぉ)
アイコンタクトを取り合った。
そんな二人の緊張を吹き飛ばしたのは、クッタクァだった。
「じゃあ遠慮なく」
「「え」」
「女王様が許してくれたんだから、普通に話せばよくない?」
それは、社交辞令だったり、場を和ませるための言葉だったりするんじゃあ、と姉弟は震えていたが、エル・ブロッサムは笑顔で頷いていた。
「クッタクァさんの言う通りよ。二人とも、普通に接してくれたら嬉しいな」
「そう言われても、じゃなくて仰っしゃられても」
「難しい言葉遣いを知っているんだね。でも、そうかしこまられてもなぁ。私、普通の人だよ?」
「「そんなことありません」」
姉弟は身を乗り出しながら声を上げた。
「仲間と一緒にたくさんの冒険をして、ダンジョンで魔王と戦った凄い人だわ!」
「それにエル・ブロッサム王国を作り上げた、すっごく素敵な人だよ!」
言い終わってから、かなり失礼な事をしてしまったと二人は青ざめたが、目を丸くしたエル・ブロッサムは頬を染めて、照れるだけだった。
「ううん、何か照れちゃうなぁ。でも、私は本当に普通の人だよ? 女王って言ったって、まだ修行中みたいなものだし、皆に支えてもらって何とかなってるんだよ」
エル・ブロッサムは気負った様子もなく、そう言った。
その姿は、偉大なる初代女王というよりも、母親や姉たちのような雰囲気があった。
その身近さを感じる気配に、姉弟は目を丸くするのだった。
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