8-6 サキュバスと鋼鉄妖精VS神造戦車 真っ白な闇
「こいつらにヴェスタ・フレイムは効果ないわ! アンタは魔力供給と姿勢制御、それから物理防御の方に集中して!」
「無茶言うぜ、了解!」
メイプルがマスケットの射撃方法を連射モードから単発モードに切り替え、そのままティターニアを三百六十度回転させながら、敵へと一発ずつ撃ち込んでいく。
だが、戦車たちはそれぞれ回避行動を行い、当たったのは十数機だけで、そのうち足を破壊できたのは五体だけだった。
「学習されてるか」
メイプルはつぶやきながらマスケットを連射モードに切り替え、南門へと高速で降下していった。
すると、戦車たちは背部の開いた装甲から、どう見てもミサイルの弾頭を見せ始めた。
「させないわよッ!」
絶対魔法の内側ギリギリで急停止し、すぐさま敵戦車たちの背部に砲弾の雨あられを撃ち込み、そのままぐるりと、城壁に沿って、時計回りにティターニアを飛翔させる。
ミサイルが破壊されるが、危うんでいたような爆発は起きず、戦車たちは他の内部機関を破壊されたようで、小爆発を起こして倒れていく。
それでも、装甲ハッチを閉じられて、残った奴らもいた。
そいつらは主砲をティターニアに向けて撃ってきたが、砲弾は絶対魔法に阻まれ、粉微塵になって消えて行った。
「よしっ、残り百体ッ!」
メイプルが言いながらマスケットを構えなおすが、その顔には疲労がありありと浮かんでいた。
途方もない集中力、そして大量の魔力を回復が追い付かない程に使用したせいであることは明白だ。
回復弾を撃ち込みながら、収納魔法から回復ポーションを取り出して、メイプルに振り撒いた。絵面が最悪だが、メイプルからいざと言う時の方法として、俺たちメンバー全員が必要な仲間にやるように言われている。
メイプルは怒らず、回復した魔力を即座に弾生成に回して、近くにいた残りの戦車へと強襲を仕掛ける。
「残り九十九!!」
「はいよっ!」
回復ポーションをまたかけてやる。
疲労感が大分抜けた顔になると、メイプルは戦車たちに弾丸を一発、二発撃ち込み、ミサイルを発射させないようにけん制しながら、あっちこっち飛び回り始めた。
俺も魔力回復ポーションを頭から被りながら、メイプルのしようとしていることを見極めようとして、それで気づいた。
敵戦車たちが、ティターニアを追いかけて、動いていることに。
一か所にとどまろうとしている奴には、装甲の上から弾の雨を降らして挑発し、止めることをさせない。
やろうとしていることがわかったのなら、俺もポーション二つを頭から被りながら、気合を入れる。
「晴樹、気張りなさいよ!」
「お前もなぁ!」
やがて、北門の辺りに戦車たちが集合した。他にばらけている奴は見られなかった。
「チェーンお願い!」
メイプルからのオーダーに、すぐさまチェーンを多重発動させる。
地中や何もない中空から出現した魔力の鎖たちが戦車たちを雁字搦めに絡めとっていくが、奴らのパワーの方が凄いようで、あっという間に引きちぎられていく。
中には、この不意打ちに対応して回避した奴もいた。
だが、その一瞬も、メイプルにとっては絶好のチャンスでしかなかった。
見れば、彼女は頭上に収納魔法を展開して、中から蓋を開けた何本ものポーションの瓶からポーションを滝業のように受けながら、大量の魔力をティターニアと巨大マスケットへと流していた。
「晴樹、ティターニアの制御よろしく!」
大技を使うつもりなのだろう。
メイプルのたったそれだけの言葉で、彼女の意図を察して、メイプルが受け持っていた分のティターニアの制御も俺が担当する。
うげっ、魔力がかなり持っていかれる……が、メイプルと同じようにポーションを駆け湯のように使用することで消耗しすぎることを防いだ。
「……魔力、よし……晴樹、もし私が気絶したら、この魔法、そのまま続けてくれる?!」
「OK!」
この状況で断れるか。それに、そこまでしなくちゃいけない相手なら、やれるだけやるしかねぇ。
大食い、リヴァイアサン、オルバインのダンジョン・ゴーレムと戦った時と同じように!
メイプルが俺の返答に笑った。
そして、巨大マスケット内部で圧縮され、高エネルギーと化したそれを放つべく、銃口を身動きの取れない戦車たちへ向ける。
「星海の邪神クッタクァ! アンタの野望は、私たちが打ち砕くッ!!」
叫んだ誓いが、言霊となって、その必殺の力を定義づけ、威力を底上げしていったのを感じた。
その瞬間、ティターニアの指が引き金を引き、超高速で発射された魔法弾が戦車たちに着弾する。
戦車たちもそれぞれ迎撃しようとしていたが、砲弾はその魔法弾に呑み込まれ、威力を増させるだけだった。
そして、絶対魔法の外側で、真っ白な闇が出現し、戦車たちを残らず呑み込んだ。
まぶしい光は、防護魔法のおかげで問題ない。
闇とも表現できる眩すぎる光の向こうで、戦車たちが、まるで溶けていくように消えていくのが見えた。
数秒後。
光が消えた、真昼間の秋空の下には、巨大な大量の何かに踏み荒らされた形跡のある丘と街道だけが残り、鋼鉄を纏った脅威たちは、どこにも見受けられなかった。
「敵影ゼロ……敵反応なし……はっ……!」
メイプルがその場で崩れ落ちるのを、咄嗟にチェーンで衝撃がないように受け止め、楽な姿勢になるよう、ハンモックのように展開してやった。
「ありがとう……」
「お疲れ様」
収納魔法からポーションを取り、蓋を外して、飲ませてやる。
「もう少しで気ぃ失うとこやった……」
「意識あるようで何よりってところか?」
「辛いけど、起きてた方がいいから」
「今のは?」
「昔使ってた必殺魔法の一つよ」
魔法剣一斉射撃の系列と言う事か。
しかし、これまで使用したところを見たことがない。
こいつにも、色々とあるということはわかっているので、それ以上は追及しないでおいた。
「エルフィたちのところへ行けるか?」
「何言ってんの……行く以外にないでしょ」
もう動けるまでに快復したらしく、起き上がり、しっかりと両足でティターニアの肩の上に立つメイプル。
その目に宿る闘志は、微塵も消えていない。
「タスラム、頼む」
警戒用に回していたタスラムをメイプルに近づけ、心身を回復してもらう。
すると、メイプルの表情も穏やかになって行った。
「さ、行きましょ……地下の様子が見えなくなってる」
「あぁ」
邪神か、その関係がいることは確かだ。
ロールへ改造の伝言をしてティターニアを召還し、待機してくれていたブロードを拾って、第一区画へと降りて行った。
お読みいただき、ありがとうございます。
某リコリコの最終回のネタバレを防ぐためにYouTubeさんに入っていないことで、作業用BGMが限定されている今日この頃ですが、毎日楽しくやっていけてるんじゃないかと思います。




