1-6 サエぼと流浪の聖女 討論タイムだ
その後、呼びに来た執事さんに案内されて全員で食堂へ移動し、漫画やアニメでしかお目にかかったことのない、あの超長い机にそれぞれ就いた。
上座はもちろんプレストルさんで、次にリアさん、ココロ、セイジュさん、ジャンヌさんと続いて、あとは執事さんに案内されるままに座った。
運ばれてた料理とグラスに注がれた葡萄酒(メイプルとブロードは葡萄ジュース)に舌鼓を打ち、腹を満たしていく。
セイジュさんの訓練のおかげで、俺とブロード、エルフィはセイジュさんたちとそんなに変わらない動きが自然とできていたと思う。何かプレストルさんが少し感心したような空気を一瞬纏っていたし、まずまず成功と言ったところだろう。
後、メイプルはセイジュさんたちと遜色ない動きができていた。本当に何でもできるな、こいつ。
『私、お酒飲んでええんかな……』
『いいんじゃないかしら? エルナも飲んでるし』
ワインの入ったグラスを片手に戸惑っていたエルフィに、メイプルが無邪気(笑)な笑顔を浮かべたまま、エルナの目線で示す。
エルナはもちろん、ココロも普通にワインを飲んでいる。二人とも、十代半ばから後半なのだが、まぁ、あれだ……。
『異世界だしな』
『うぅ、お母さん、お父さん、ごめんなさい……! 私、不良にはならんから……ふわぁ、なにこれぇ』
罪悪感を抱きながらも、ワインを口にした途端に目を輝かせるエルフィだった。
ちなみに、この会話はメイプル特性のテレパシーネットワークで行っていたので、神であるリアさん以外の誰にも聞かれていない。
傍から見たら、年若いエルフの少女が初めて見るワインを大変気に入ったようにしか見えないし、実際その通りなので何も問題はない。
それをジャンヌさんが盗み見て、微笑んでいた。
そんな静かだが微笑ましい食事が終わり、一息入れたところで、プレストルさんが口を開いた。
「お気に召していただけましたかな?」
「えぇ、とても」
ココロが代表して答えると、プレストルさんは満足そうに頷いた。
さて、和やかな雰囲気だが、本番はこれからだな。
ナターシャさんが俺たちとヴォーバン側、双方に明確な神託を授けてくれたからには、ここで何か為さなければならない事がある。
メイプルも何かみつけたみたいだし、何が来るやら。
「それで……セバスティアンさん、光の運命神様から神託を受けた、と仰られていましたが、我々と会う、以外に、何かお聞きになりましたか?」
「ええ。ジャンヌ」
「はい」
ナターシャさんから神託を受けたのはジャンヌさんの方か。
ジャンヌさんは一度俺たちを見渡し、視線を集めてから口を開いた。
「私が光の運命神より受けた神託は二つあります。
一つは、皆様と我々ヴォーバンの者がお会いすること。
もう一つは、このエリスを狙う者から、皆様と協力して守ることです」
エリスを狙う者……まさか。
「二つ目の神託は、つい先ほど、皆様をこの屋敷へお招きした後に受けました」
「何と」
ココロだけでなく、リアさんを除いたパーティー全員の顔が驚きへと変わる。
つい先ほど、と言うことは、ナターシャさんにとっても予想外かつ急ぎの出来事。
つまり、
「光の運命神様が仰られるには……この世界を狙う、邪悪なる者だそうです」
確定、星海の邪神である。
俺たちは顔を見合わせる。
よし、討論タイムだ。
俺とメイプルで、リアさんを除くパーティー全員に催眠魔法をかけて邯鄲の夢システムで、冒険者ギルドの応接間をイメージした空間に招待する。
「メイプル、ヴォーバンたちは星海の邪神の事を知ってるのか?」
「ジャンヌの方は知らないみたいね。セバスティアンの方は、エリスから聞いてるみたい」
「エリス?」
あ、もしかして女神エリスか? ギリシャ神話の。
「エリスって誰?」
エルフィは一人だけ首を傾げていたが、セイジュさんが解説を入れてくれた。
「戦いの女神の一柱で、この城壁都市の名前の由来となっているのと同時に、守り神にもなってくださっているお方だ」
「えぇっ、そうなんですか?! あれ? でもそれだったら、エリスって神様が護ってくれるんじゃないんですか?」
「それがそうもいかないのよ」
メイプルが、星海の邪神たちによって、この世界の神々がほとんどこの世界へ構う余裕がないほど忙しい状況になっている事を説明する。
「だから、もしもクッタクァたちがこの前みたいにこっちへ端末だけでも顔を出したら、私たちが叩く事になっているってのよ」
「じゃあ、ヴァーヴァリアスさんは? あの戦いの後はずっと一緒にいるけど」
「あの子は介入する必要があれば行くって感じみたいね。よく知らないけど」
「そうなんだ。じゃあエリスって神様は、今、この街に来ようとしてる邪神たちと戦ってるのかな」
「そういうことね」
どうやら、今回は初っ端からクライマックスのようだ。
ナターシャさんから要請があったということは、近いうちにこっちへ顔を出してくる奴がいる。
しかも、ヴォーバン一族と協力して、と言うことは、リヴァイアサンやミレニアの時と同じような激戦を繰り広げることになる。
下手すれば、この城壁都市に大きな被害をもたらすことになるかもしれない。
「神ヴァーヴァリアスが我々と共に席に着いていたのであれば、まだ猶予はあるか。どの道、我々がやることに変わりはない」
セイジュさんの言葉に頷き、俺たちは現実世界へ帰還した。
時間にして一秒ほど。
リアさんは腕を組み、悠然とした態度でプレストルさんたちと一緒に、俺たちを見ていた。
どうやら、セイジュさんの予想通り、まだ猶予はあるらしい。
それが果たしてどれくらいかはわからないが、やれる準備は全てしておこう。
「わかりました。話を詰めていきましょう」
ココロがそう言って、この話は一時、終了となった。
っていうか、食事、してる時間あったのか……とメイプルを見たら、まぁいいんじゃない、みたいな感じで首を傾げられた。
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