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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第六章 サキュバスとエロ漫画野郎と熟練魔導師
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7-4 サエぼと熟練魔導士と草谷の百合 二人で一人/仲間

 メイプルちゃんとココロさんを左肩に乗せたロボ……じゃなくて、ゴーレム・ティターニアが、青白い魔力のジェットを背中や体の各所から噴き出して、ダンジョン・ゴーレムへと超高速で突っ込んで行った。

 鋭い煌めきが幾つも生まれ、それと同じだけ分厚い鉄板を叩いたような重たい音や、甲高い金属音が耳に届く。


 それを他所に、私とミレニア、それから騎士ロボットみたいな姿をした巨人のロール……さん? は額を突き合わせて(ロールさんは顔を少し近づけただけ)、ダンジョン・ゴーレムを止めるための手段(システム)を作っていく。

 土台はミレニアとロールさんがそれぞれ持ちあわせのものを用意して、それぞれの必要なところを合わせていた。


「ロールさん、今のってダンジョンのコントロール用のもの……ですよね?」

「私もダンジョンマスターだったから」


 大きいのに、うるさくなく、それでいてとても澄んで綺麗な若い女の人の声で、ロールさんは答えてくれた。

 晴樹さんと召喚契約を結んでいたし、もしかしたら、この人も私みたいに、メイプルちゃんたちと戦って、冒険者ギルドに入ったのかな?


「エルフィ、ここからはアンタも一緒に作業してもらうわよ」

「うん」


 余計な事は後にして、今は目の前の作業に集中しよう。

 二人が組み上げた土台を元に、二人が作ってくれた項目リストに沿って、それぞれが担当する記述を足していく。

 その最中に、ミレニアがロールさんに話しかけた。


「それにしても、アンタとこうして仕事をすることになるなんて思わなかったわ」

「私もよ。って言うか、貴女こそ、ここにいるってことはダンジョンマスターやってるの?」

「やってた、よ。ちょっと性質の悪い奴にやれって言われてね」

「あー、貴女も? 私もよくわかんない奴にやれって言われて、突然こっちに飛ばされたわ」

「それは災難だったわねぇ」


 話し合いながらも、どちらも目と意識は構築に向けられていて、相手の事を見ていない。

 それでも、どこか楽しそうだった。


 意外と仲いいのかな。

 大学の知り合いって言ってたし。


 って言うか、大学、あるんだ。意外。

 そして、そのサイズ差でどうやって一緒に通ったり、授業受けてたのかな……。あ、もしかしてロールさん、小さくなれたりするのかな? ウル〇ラマンみたいに。


 私も進路希望あったなぁ。

 一応、大学に行こうかなって思ってるけど、今のままだと志望校に行けるかどうか微妙だったんだよね……彩月ちゃんたちに勉強を見てもらってるけど、自分でも頑張らないとって、思ってたのに。

 ダメダメ、今は目の前に集中、集中!


 それにしても、受験勉強よりも、滅茶苦茶頭使ってるし、もっと難しい事してるんじゃないかな、今。

 そう思いながら、私はミレニアに言われた通り、時々、夢の世界に潜りこんで、それまでに構築されているシステムの動きを試して、それを二人に伝える作業を並行して行う。

 バグとか、エラーみたいな自体は全く起きず、最初にミレニアたちが計画していた通りの動作を行っているシステムは、もう完成間近に迫っていた。

 その時、晴樹さんから声がかかった。


「後、どれくらいで完成しそうだ?」


 多分、メイプルちゃんから催促があったんだろうな。

 でもご安心。

 完成まで、ほんの十五秒ほど。


「三十秒!」

「了解! 後三十秒待ってくれ」


 でも、ミレニアは二倍の時間を晴樹さんに伝えていた。そっか、いざという時のために必要って言われたっけ。


「エルフィ、最終確認して! 私もついでに連れていきなさい!」

「うん!」


 ミレニアと一緒に夢の世界に潜りこみ、起動してみて……うん、バッチリ!

 頷き合い、現実に舞い戻って、ロールさんにも問題がなかった事を告げる。


「ハルキ、完成したわ!」

「わかった! できたぞ!」


 その途端、一際大きな爆音と、そして雷鳴、そして金属音が聞こえてきた。

 地上を見れば、よろけるダンジョン・ゴーレムから高速で離れ、ティターニアが私たちの近くへ戻ってくるところだった。

 でも、ダンジョン・ゴーレムが体勢を戻しながら、魔力光線をティターニアに向けて撃った。


「危ない!」


 けど、魔力光線はティターニアの前に出現したシールド魔法によって、次々とダンジョン・ゴーレムへと跳ね返った。それも、防御魔法を使用して無効化していたけど、見てなさいよ~!

 それよりも、メイプルちゃんたちが無事で良かった。


 それと……今のは、もしかしなくても、エルナさんのシールド魔法だよね。

 サポートしてくれている。

 自分のやれることを、全力でしてくれている。

 私が、自分の出来ることを全力でしている。


 種族も生まれも違うけど、私たちは同じ目的に向かっているんだ。


 あ、そっか。

 これが、仲間、なんだ……。


「頼むわ!」


 ダンジョン・ゴーレムに体ごと向いているメイプルちゃんから、システム使用の要請があった。

 代表して、ミレニアがダンジョン・ゴーレムへ向けて、完成したばかりの魔法を向ける。


「ハルキ、動きを止めて!」

「おぉ!」


 光の壁がダンジョン・ゴーレムの動きを止めた途端、ミレニアが魔法を撃ちこんだ。


 ダンジョンのコントロール権をやり取りした時のように、距離など関係なく、一瞬で魔法がダンジョン・ゴーレムへと瞬時に組み込まれ……ない!

 ダンジョン・ゴーレムの、ダンジョンの防衛システムが、魔法の組み込みを拒否しているのがわかった。


「くぅぅっ!? ノ、ディ、アー……アンタって奴はぁ……!」


 押し返されないよう、ミレニアが魔力を込めて一歩踏み出す。それでも、突き出した腕が、少しずつ、後ろへと下がっていく。

 このままと、押し返される!

 ミレニアの隣に並び立ち、彼女の手の上に、自分の手を重ねる。

 凄い力で押し返されてる。

 でも、それくらい、メイプルちゃんの地獄の特訓に比べれば、何ともないんだからぁ!

 魔力を込めて、ミレニアと一緒に押し返していく。


「リリアちゃん!」

「あーもう! 仕方ないわね!」


 リリィちゃんが私たちに魔力を分けてくれて、ロールさんが何故か地上に落ちて行って……えええええ?! 何してるのあの人?!

 そんな私の驚きを他所に、ロールさんは鎧の各所から魔力フレアを出して勢いを抑え、小さいけど重たい音を立てて、無事に着地した。

 ロールさんが立ち上がり、ダンジョン・ゴーレムと向き合った瞬間、ダンジョン・ゴーレムの動きが止まり、魔法への抵抗も少し弱くなった。


『あんまり長時間持たないから、早くしてー!』


 ロールさんの必死そうな声が届いた。

 よくわからないけど、ダンジョン・ゴーレムを止めてくれているんだ!


 すると、どこからともなく魔力の光弾と光の剣が幾筋も飛んできて、ダンジョン・ゴーレムに次々と当たっていく様子が見えた。またほんの少しだけ、魔法への抵抗が弱くなる。


「はぁぁぁ!」


 ココロさんが両手を地上へ向けると、ダンジョン・ゴーレムの周囲の空間から稲光が走り、雷鳴が響き渡った。また、またほんの少しだけ、それでも、確実に魔法を押し返す力が弱くなっている。


 もしかして、ココロさんやエルナちゃんだけじゃなくて、セイジュさんたちも援護してくれている?


 この場にいる皆が、ダンジョン・ゴーレムを倒すために……それって、すっごく……!


 心が熱い。

 魔力が、心の奥底から溢れてくる。

 魔力だけじゃない。

 暖かい何か、心地の良い力が、私を支え動かしてくれている!


 ミレニアと目を合わせることはなくても、彼女の息遣いも、手の震えも、鼓動も、全部感じ取れる。


「エルフィ」

「何?」

「一瞬、だけでいいから……私と目を合わせなさい」


 何をするつもりなのかはわからないけど、ミレニアが必要な事だっていうなら。

 私は何も聞き返さず、少しだけ横を向いて、彼女の目を真っ直ぐ見つめる。


 とても綺麗で、力強い、ミレニアの瞳と目が合った、その瞬間。

 私の中に、もう一つの魔力が流れた感覚がした。

 これって、ミレニアの魔力だ。自分の魔力の半分のパスを、私につなげていると、理解できた。


「今だけ……今だけは……アンタは、新米じゃない……わ」

「うん!」


 爆発的に上がった魔力で、自分へ強化魔法を重ね掛けしていく。使用する魔力も、効果も、これまで使ってきた比じゃない。

 今、私とミレニアは、ある意味で、二人で一人の魔法使いになっているんだから!


「「ああああああああああ!!」」


 魔力を乗せた互いの声が、互いの力を強化する。

 皆の願いと力を乗せて、今、私は、私たちは、ノディアー、アンタの野望を、止めるッ!


「「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」


 これが最後だ、最後の一押しだッ!

 その時、誰かが背中を押してくれた気がした。

 ふと、視界の端っこに、銀色の髪が揺らめいて、楽しそうな、幼い女の子の声が聞こえてきた。


 それと同時に、私たちが組み上げた魔法が、ダンジョン・ゴーレムへのコアへと組み込まれた。


「「メイプルゥーッ!」」

「魔法剣一斉射撃ィッ!!!」


 ミレニアと私のカラカラの叫び声が響き渡ると、メイプルちゃんの操るティターニアが構える赤い刀と、周囲の収納魔法から、眩い魔力光線が放たれた。

 威力が、さっきよりも上がってる!


「星海の邪神ノディアー! アンタの野望は、私たちが打ち砕くッ!」


 それは、防御魔法を上手く発動できずに、光の壁と攻撃魔法たちに動きを止められたダンジョン・ゴーレムを飲み込み、一呼吸もおかずに、跡形もなく消し飛ばした。


『あー! 破壊されてるじゃなーい!!』


 上から、突然声が降ってきた。

 確か、クッタクァとか言ってた、あの靄!


『ノディアー、ちょっとどこ行って――あ?』


 靄が下を向いたのと同時に、私も気が付いた。


 晴樹さんが右肩に乗ったティターニアが、その両手に巨大な炎を携えて、目と鼻の先の距離まで近づいていた。


「ヴェスタ・フレェェェェェェェムッ!!!」

『同じ手なんて喰らわないわよ!』


 靄が何かしようとした時、炎の中からティターニアサイズのココロさんの刀が飛び出て来た。

 刀身に炎が纏わり、靄目がけて一直線に突き出された!


「破ァァッ!」

『えちょ、やぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!』


 当たる寸前で靄が消えた直後、まだ揺らめきが残っていたその空間に、ティターニアの炎の切っ先が触れる。

 その途端、光のしぶきがあがり、地上へと降り注いだ。


 光は、戦いで荒れ果てた草原を、逆再生映像のように、あっという間に元に戻した。


 そんな、夢のような光景の中、青白い魔力フレアが羽のように見えるティターニアの後ろ姿は、何故だか、妖精のように見えた。


「逃がしちまったな」

「上出来よ」

「えぇ、私たちの勝利です」


 晴樹さんとメイプルちゃん、ココロさんの会話が聞こえてくる。

 そっか……勝ったんだ。


 私たち……勝ったんだね。

 ふらついたミレニアを支え、リリィちゃんと介抱しながら、私は、まだ実感が持てずにいた。


 ふと、振り返ると、シールドの端っこに、銀色の髪を持った、小さな女の子が立っていた。

 洋風の顔立ちは、私がこれまで見てきた中でも、トップクラスで、小学生くらいの見た目なのに、神々しささえ感じられた。そのせいか、麦わら帽子を被って、現代日本で見るようなワンピースドレスの上に、クリーム色のジャケットを羽織っている姿は、どこか現実離れしている。


 誰だろう、何で体が半透明なんだろうって思ったけど、どうしてか怖いとは思わず、私は、女の子と目が合って、小さく頭を下げていた。

 すると、女の子は陽だまりのような笑顔を浮かべて、手を振ってきた。


『上手く行ってよかったです!』


 しゃべった……見た目通り、元気な声だなー。

 疲れすぎてるのと、驚きすぎた状態が相まって、そんな落ち着いた感想が出てきた。

 あれ? 周りの空気の流れというか、魔力の流れが……止まってる?

 私の意識とこの子以外は、時間が止まってるの?


『それじゃあ、エルは時間切れみたいなので帰りますねー!』

「え、ちょ、待」

『サエさんに、エルが来たと伝えてください! それでは、よろしくお願いします! さよーならー』


 一方的にそう言って、エルと名乗った女の子は、忽然と姿を消した。同時に、世界の流れが元に戻った。

 いや……サエって、誰やねん……。


「どうかした?」

「え、いや、ちょっと疲れて幻覚と幻聴を……」


 ミレニアに苦笑いして見せると、仕方ないわと笑みを返された挙げ句、リリィちゃんに二人していい子、いい子と頭を撫でられた。


 そんな不思議な出来事があったけれど。

 メイプルちゃんたちと合流して、ようやく、この戦いが終わったと、実感して、両手を天に突き上げてから、シールドの上に背中から倒れ込んだ。


 まだ少しだけ空から降る光が、祝福してくれているみたいだった。





お読みいただき、ありがとうございます。


ティターニア、一番最初のプロットでは魔導バスターキャノン装備してて、それでダンジョンを一撃で吹き飛ばす予定でした。

7-1のメイプルのヒイ〇ネタは、その時の名残です。(ォイ


閑話休題。


最近、毎日投稿ができています。

いつも皆様が読んで応援してくだるおかげです。本当にありがとうございます。

今後も、サエぼをよろしくお願いいたします。

次回、第六章エピローグです。


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