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王子たちは、まだ玉座を知らない。  作者: 櫻木サヱ
七人の王子

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それぞれの過去

王都アルカディアに集められてから三日。


七人の王子たちは、まだ完全な仲間とは呼べなかった。


共に戦った。


命を預けた。


それでも、心の距離はまだ遠い。


王子という立場。


背負ってきた国。


それぞれが抱えている秘密。


それらが、七人の間に見えない壁を作っていた。


「今日から、本格的な調査を始める」


王宮の大広間。


レオンは地図を広げながら言った。


「王の聖印が砕かれた原因を探す。敵が何者なのかも調べる」


「簡単に言うけど」


カイルが腕を組む。


「手がかりが少なすぎる」


「だから探すんだ」


レオンは迷いなく答える。


カイルは少しだけ目を細めた。


「君は本当に単純だね」


「褒め言葉として受け取っておく」


「褒めてない」


そんなやり取りを見て、ルークが笑う。


「なんだかんだ仲良くなってない?」


「なってない」


二人の声が重なった。


その瞬間。


「……似てる」


ノアが小さく笑った。


「何が?」


「二人とも、自分の気持ちを隠すところ」


レオンとカイルが同時に黙る。


図星だった。


七人はそれぞれ、違う過去を持っている。


レオンは炎王国で生まれた瞬間から、次期国王として扱われた。


「王子は弱さを見せてはいけない」


父王から何度も言われた。


泣くことも。


迷うことも。


誰かに頼ることも。


許されなかった。


だから彼は、いつも強い王子でいようとした。


誰よりも前に立つために。


誰よりも傷つかないために。


「レオン」


ユリウスが声をかける。


「お前さ」


「ん?」


「無理してない?」


一瞬。


レオンの表情が止まった。


「……何を言っている」


「いや」


ユリウスは苦笑する。


「なんとなく」


「王子ってさ、みんな大変なんだなって思っただけ」


その言葉に、レオンは何も返せなかった。


一方。


カイルは窓際で本を読んでいた。


彼は幼い頃から天才と呼ばれた。


どんな魔法も。


どんな戦術も。


誰より早く理解した。


しかし。


それは同時に、誰からも頼られない理由になった。


「お前ならできる」


「お前なら分かる」


そう言われ続けた。


できないと言うことを。


怖いと言うことを。


いつの間にか忘れていた。


「……馬鹿らしい」


カイルは呟く。


「何が?」


アベルが聞く。


「いや」


カイルは本を閉じる。


「何でもない」


彼はまだ知らなかった。


自分が誰かに頼る日が来るなんて。


そして。


闇王国の王子、シオン。


彼だけは、誰も近づこうとしなかった。


王宮の庭。


シオンは一人で立っていた。


「また一人か」


声をかけたのはルークだった。


「……何の用だ」


「いや?」


ルークは木にもたれる。


「七人いるのに、一人でいる奴がいたから」


「放っておけ」


「嫌だね」


シオンは眉をひそめる。


「なぜ」


「なんとなく」


「理解できない」


「よく言われる」


ルークは笑った。


「でもさ」


少しだけ真剣な顔になる。


「一人でいるのが平気な奴なんて、たぶんいないよ」


シオンの指がわずかに動いた。


「……お前には分からない」


「分からないね」


即答だった。


「俺はお前じゃないから」


ルークは空を見る。


「でも、分からないから聞くことはできる」


シオンは黙る。


その言葉は。


今まで誰も言ってくれなかったものだった。


その時。


突然。


王宮全体に鐘が鳴り響いた。


緊急警報。


七人は一斉に顔を上げる。


「また魔物か?」


レオンが走り出す。


しかし、兵士が告げた内容は違った。


「地下保管庫が襲撃されました!」


「地下保管庫?」


カイルの表情が変わる。


「まさか……」


「どうした?」


レオンが聞く。


カイルは低い声で答えた。


「そこには、王の聖印に関する古代記録が保管されている」


空気が変わる。


敵の目的。


七人の王子。


王の聖印。


全てが繋がっている。


「急ぐぞ」


七人は地下へ向かった。


だが。


そこで待っていたのは、ただの襲撃ではなかった。


暗闇の中。


一人の黒いローブの人物が立っていた。


「遅かったな」


七人が武器を構える。


「お前は……誰だ」


レオンが問いかける。


すると、その人物は笑った。


「私は、お前たち七人が生まれる前から」


「王子たちを待っていた者だ」


そして。


七人の前に、一枚の古い絵を投げる。


そこに描かれていたもの。


それは――


七人の王子。


しかし。


今から何百年も前の時代に描かれたはずの絵だった。


「ありえない……」


アベルが震える。


「どうして……」


シオンが絵を見る。


そこには。


現在の七人と全く同じ姿をした王子たちが描かれていた。


「お前たちは初めてじゃない」


謎の人物が告げる。


「七人の王子が集まる時代は」


「過去にも存在した」


「そして毎回――」


闇の中で笑う。


「世界は一度、滅びかけている」


七人の王子たちは知る。


自分たちの運命が。


想像以上に大きなものだったことを。

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